第二話自由闊達とは行かない旅路⑨
全身くまなく放電されて、そしてその強い刺激で人格が裏返る。
暗獄寺終音が返り咲いた。
「ふむ、悪くない攻撃だが、小鴨と言われるだけで電圧も電力も弱いな」
それに、小鴨亜生はその程度は予測していた。
首輪も貞操帯も全身の切り裂くような闇の波動でずたずたに切り落とされた。
「おっと、これは、どうした物か、ふむ、闇削刑無が来るには時間がかかるが、それよりも前に日枷護子が来るかもな」
その前にその別室に現れたのが白原薫龍だ。
彼女と彼の因縁は底が知れている、たった一つ、性別云々ではなく、清瀬光己は自分の運命を大前提として行動する、しかし、白原薫龍は他の皆の運命を前提としている、それは、破壊と救済の平行進行の外道か、自他共栄の天道の差異だ。
暗獄寺終音は世界とは常々破壊する物とも思い常々救済するとも思う。
そのためによりよい未来のために現在と過去を犠牲にしだす狂気に駆られる事もある、しかし、彼はそれを悔いたりはしない、彼は彼の望む未来のためならば、彼個人の脳内のブラックボックスの中身ではどこまでも悪意極まる思考回路を作る。
それは、彼が自己中心的と言えば話は終わるが、彼はそれでも人付き合いを求めている、でなければ、いつものように無言のうちに計略や策略を巡らせる事をやめたりなんてしない、それはあくまで、白原薫龍という女性に依存している。
「遅かったな、この言葉を言うのは二度目か?」
白原薫龍はそれに対して、笑みの一切を捨て去って怒気を放つ。
「僕の所属するあらゆる組織体系をお前の一存と一念で狂わされては困る、事前にそういう破壊衝動があるならば、僕に言え、かまってやる、死ぬまでな」
白原薫龍の構えは自衛隊式の軍隊格闘術であった。
それに暗獄寺終音は肘打ちを鈍器のような肘を槍のようにして突き出して来た。
それが、顎をかすめて、ノックダウンしようとした。
「なんだ、この程度か?」
白原薫龍の焦り、この男はあらゆる格闘技の完成形というのを簡単に予想できる頭脳を持っている、この男の武器、それは、他者を理解するところで見える、他人の心の闇、汚い精神の奥地、それを覗く、カウンセラーのようだが、カウンセラーというのが深淵を覗き深淵から覗き返されるというのならば、患者もまた、そのカウンセラー、精神学者の深淵を覗き深淵から覗き返す、とどのつまり、試している節もある、そういうコミュニケーションは実際、問題が多いが、彼はそれをやめる事はしない。
白原薫龍は彼に嫌な顔をして、こう吐き捨てた。
「まだ、僕の全ては見せてないぜ?」
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