僕の『義妹』が暴走している

「決めました。これからユキナはお兄ちゃんの赤ちゃんを産みます」


長かったGWも最終日となった今日、ユキナが突然とんでもないことを言い出した。

僕の可愛い『義妹』はとても真剣な表情でアホな発言をしている。


「大丈夫。今から頑張れば一〇人は産めます」

「ちょっと一回落ち着こうか」


とんでも発言が加速したところで止めにはいる。


「一体全体なんでそんなことを突然言い出したのかお兄ちゃんにも分かるようにしっかり説明してくれるかな?」


尋問するまでもなく白状した。


僕が吐露した家族コンプレックス。それをユキナは重く受け止めていたのだ。

ユキナは考えた。

どうすればお兄ちゃんを幸せにできるか。

そうだ家族をたくさん作ろう。

今はまだ『義妹』は自分一人だ。これから増えるだろうが今のところ自分だけ。

ならば子供を産めば家族も増えてお兄ちゃんもニッコリだ。

そうだ、たくさん産んで家族に囲まれた幸せライフをお兄ちゃんにプレゼントしよう。


そんなことを考えての発言らしい。

途中『今はまだ』とか『これから増えるだろう』とかおかしな発言もあったが、気持ちは嬉しい。

確かにあの日以降今まで以上にべったりくっ付いてきていた。

僕を誘惑するような発言も多くなった気がする。

様子がおかしかったのに気づいてやれなかったのは申し訳ない。


「それに……」


目に涙を溜めてこちらを見るユキナ。


「もう何日も一緒に暮らしてるのにお風呂一緒に入ってくれないし、同じベッドで寝てるのに胸すら触ってくれないんだもん!ユキナはそんなに魅力ない?お兄ちゃんの好きにしていいんだよ?お兄ちゃんはユキナと愛し合いたくないの?」


女のプライドが傷ついた、と。

尋ねればこくんと頷く。


「まあ赤ちゃん産むってのは冗談にしても」

「冗談じゃないもんっ」

「冗談にしときなさい。ユキナにはまだ早いです」

「むぅ」


正直な話をすると僕は性欲が薄い。

正確には性行為に対して意欲や関心が薄いのだ。

幼少の頃から淫乱な母親の放蕩を見て育ったために、同年代の男たちのように女体やセックスに幻想を抱けないでいる。


もちろん僕は不能ではないし、生理現象としてムラムラすることもある。

嗜む程度に成人指定のゲームや創作物にも触れるし、なんならユキナに反応もしている。

ほんの少し前まで片思いしてた女の子に体を好きにしていいとかご奉仕するとか言われて興奮しないはずがないのだ。


だが、性行為がしたいとは思わない。

嫌悪している訳ではないがなんとなく忌避してしまう。

多分僕は恐れているのだ。

この身に流れる淫乱な母の血が覚醒でもして自分もアレと同じレベルに堕ちてしまうのではないかと。

そんなことありはしないと解っているのだが。


「お兄ちゃんはそうはならないよ」

「でも、怖い」

「もしそうなったらユキナも一緒に淫乱になってあげる。二人でエッチなことしか考えないおバカになっちゃおう。いつでもどこでも二人で愛し合って赤ちゃんたくさん産んであげる。きっと子沢山の楽しい家庭になるよ」


臆面も無く言い放つユキナの愛が重い。

でも、それもありだなと思ってしまう。むしろいいなと思ってしまった。

じわりと欲望が湧き上がってくる。


「ねえお兄ちゃん、今日は連休最終日だよ。だから最後に一緒に、思い出作ろ?」


この天使のような『義妹』は実は悪魔なんじゃないかと、とろけそうになる頭で考えてしまった。

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