第208話・ゴキブリ退治・その三

「貴様ら!!」


 ダンジョンから出ると入り口を見張っていた兵士に、何故かオレ達が槍を向けられ怒鳴られちゃったよ。


 少年少女パーティや助けた人達はダンジョンを出て助かったと安堵していた表情から、一気に不安げな表情に変わる。


 見張りの兵士は有無を言わさずすぐに応援を呼び、オレ達はたくさんの兵士に囲まれてしまった。


「そいつらは初心者狩りだ!」


「待ってください! この人達は助けてくれた人達です! 初心者狩りはそこの近衛兵の鎧を着た人達です!」


「ええい。黙れ! 貴様も初心者狩りの仲間だな!」


 わらわらと集まった兵士達は無言だが一番偉そうな騎士はオレ達を賊だと言い切り、その瞬間捕まえた賊達はニヤリと笑みを浮かべたのが見える。


 助けた人達は慌てて本当のことを訴えるが、聞く耳を持つ気がないらしい。


 帝国の近衛兵が賊なはずがない。彼らは賊の捜索の為にダンジョンに入った正規の近衛兵だと偉そうな騎士は口にした。


「捕らえろ! 抵抗するなら殺しても構わん!」


「ジュリア。殺すなよ」


「ふふふ。懲らしめてやるよ」


 こちらの説明も言い分も聞く気がない騎士には当然呆れるが、それに疑いも持たず従う兵士にも呆れて物が言えない。


 何人グルなのか知らないが、長いものに巻かれてるのかな?


 それならそれで構わない。ただ、遠慮してやることもしないけど。


 一斉に槍を構え突いて来る最前列の兵士に、捕らえるという考えがあるようには見えない。


 少年少女達と初心者狩りの被害者をオレやエルで守る最中、ジュリアはそんな迫り来る槍を奪うと乱暴に他の槍をへし折る勢いで振り抜き、前衛の兵士達を吹き飛ばした。


「殺せ! 仲間もろとも殺せ!」


 吹き飛んだ兵士に騎士は顔を真っ赤にして怒鳴り散らし始めるも、ジュリアを止められるはずがない。


 ただ兵士も馬鹿じゃない。ジュリアではなく子供達を庇うオレ達の方にも迫ってくる。


「グアッ!」


「こいつら! 妙なマジックアイテムを!!」


 残念だけどそれは悪手だ。


 こっちのメンバーでエルとケティはまだ相手を殺さないように反撃出来るが、オレやクリスにはそこまでの技量はない。


 一応手足を狙ってレーザーガンで反撃してるけどね。


「ええい! 魔法隊を呼べ! 本部にも援軍を要請しろ!」


 相手にも弓や魔法を使う兵士も居る。


 でもこっちには簡易バリアフィールド発生装置があるんだよね。ギャラクシー・オブ・プラネットではお手軽な使い捨てアイテムだったやつだ。


 生半可な攻撃は効かないよ?


 それにしても援軍なんて呼んでまで、どうしてもオレ達を賊にしたいのか。


「ヒギャアアア!!」


 ヤバッ。少しイラッとしたんで指揮する馬鹿騎士の足を狙ったら、馬鹿騎士が盾で防ごうとして構えちゃった。


 下手に動くもんだから、レーザーが下腹か股間の辺りに当たっちゃったじゃないか。


 おかげで気色の悪い悲鳴をあげながら泡を吹いて倒れた馬鹿騎士に、兵士達の動きが一斉に止まった。


「援軍だ!」


 そのまま士気が一気に落ちるかと思われた兵士達だが、上空に現れた十名ほどの竜騎士達の姿に歓声が沸き起こる。


 編隊を組んだままダンジョンの上空で旋回して、状況を確認しているらしい。




 どうでもいいけど、宰相さん遅いよ。竜騎士も落とせばいいの?


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