第196話・神託

「よう、ロボ。ブランカ。少し見ねえうちに大きくなったな」


 そのままジョニーさんからワイマール王国での話を聞いていると、クリスとミリーとロボとブランカが帰って来た。


 ロボとブランカはジョニーさんになついていたからね。二匹とも久々の再会に嬉しそうだ。



「ふむ。わらわはミレーユ・シルフ・ド・オストローダ。みんなからはミリーと呼ばれておる」


「私はエリーサ。アデン教国の巫女をしております。殿下」


「噂に聞いた神託の巫女殿じゃな? 殿下は不要じゃ。ここではわらわはただのミリー故にな」


「畏まりました」


「うむ。固いのう。もっと気楽にしてたもれ」


 ジョニーさんの新しい仲間にクリスとミリーも挨拶するけど、流石にミリーが本名を名乗ると聖女さん達の表情が驚愕に変わる。


 帝国の現皇帝の末の娘で、先の御家騒動では殺害されそうになったところを逃げ出して、サミラス皇子に匿われていたというのが公式な発表だからね。今もミレーユ皇女は皇宮に居ることになってる。表向きはね。


 ジョニーさんも言わない方がいいことは、口が固いんだよね。本当。




「そう言えば神託で思い出したんですけど、ジョニーさんと旅をする神託を受けたのですか?」


「はい。正確には『闇が強くなる。光の集うところに行きなさい』という神託です。教国には歴代の神託が記録されていて、その歴代の神託と結果から、内容を推測して行動します」


「闇が強くなるですか」


「過去に魔王がこの世界に侵略して来た時に、同様の神託がありました。光とは勇者様や神の使徒の方々のこと。ジョニー様が帝国で魔族の野望を阻止したと聞き、教国ではジョニー様が神託の勇者だと認定しました」


「オレは違う気がするんだけどな。魔法も使えねえし聖剣もねえのによ」


「神託では光の集うところとあります。つまり厳密には勇者でなくとも構わぬのです」


 ミリーが神託という言葉を使ったことから、オレはふと噂の神託について尋ねていたけど。意外にちゃんとしたモノにビックリだ。


 これはいよいよ、本当に神様が存在する事が確定か。


 まあ神様という名称で呼ぶとファンタジーだけど、世界というか宇宙を管理してる存在が居ると考えると、あり得なくもないんだよね。


 それが人のような生命体なのか、それともコンピュータのような非生命体なのかとか、いろいろあるんだろうけど。


 問題はその神様(仮)が、本当に何処まで信用出来るかだ。悪戯に疑うのは良くないが、無条件で信じるのも抵抗がある。


「間違ってはないと思うがの。母上がジョニー殿とアレックスを、強き光を持つ者と言うていたしの」


「つまり、神様はオレにも戦えと?」


「別に剣や魔法で戦えとは言うてまい。ジョニー殿を支援して、あの空からの光で戦えばよかろう」


 多分ジョニーさんも神様を無条件で信じてない故に、神託の勇者にされるのは抵抗があるんだろう。


 ただここでミリーが神託の意味を独自解釈というか、彼女の母親のマリオンさんの言葉と繋げて考えると、確かに筋が通るんだよね。


「空からの光?」


「ああ。惑星の外からの攻撃ですよ。ジョニーさん達の船より大きな船で宇宙から攻撃するんです」


 ミリーお嬢様ってば、すっかりオレ達の価値観に染まってないかい?


 闇と戦うと言われて宇宙からの攻撃でいいなんて、ファンタジーの世界の人が考えることじゃない。


「まさか、ジョニー様の船より強力な船が?」


「あれ個人用ですからね。小さい割りに強力ですよ。ただ火力だけで言えば、他にも強力な船はあります」


「そんな船が……」


 あかん。聖女さん達がジョニーさんの戦闘機以上の戦力があることに驚き、固まっちゃった。


 大気圏内だと小回りも出来るし、性能はトップクラスなのは確かなんだよ。


 ただ火力で考えると、そりゃ大気圏外から艦隊使った方が圧倒的だよね。


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