第181話・帝国争乱?・その四
決戦まではあっという間だった。
オレ達は帝国軍の最低限の艦隊行動について聞き、こちらの手札として別途空中艦が複数あることも、具体的な数は言わなかったが教えた。
全ては勇者の戦力としてだけどね。本当勇者って便利。
「本当に八隻か。このまま普通に負けたら笑えるけどね」
「それはそれで構いませんよ」
オレ達の小型の戦闘艦は、サミラス皇子の艦隊やバルバドス皇子の艦隊の更に上空で、光学迷彩のバリアをしながら待機してる。
何も番狂わせが起きないなら、このまま待機で終了なんだけどね。
「両艦隊とも発光信号により降伏を促してます」
「冷静だな。気味が悪いよ」
「司令。バルバドス殿下の艦隊の魔法エネルギー値が、急速に上昇中。すでに帝国軍の予測を五倍は越えています。このままでは危険です。攻撃までの予測時間は残り十五秒。十四、十三……」
「無人艦のバリアでサミラス殿下の艦隊を守ろう」
「了解しました。防御陣形にて無人艦前に出ます」
「攻撃を確認次第、反撃。航行不能程度にね」
どうやら本当に奥の手があったか。魔法エネルギーってのはこの惑星の空中艦の動力らしい。ジョニーさんの実験じゃなかった活躍で、うちの艦には魔法エネルギーの測定器まで付いてるみたい。
ジョニーさんの嫌な予感を信じて、エルはサミラス艦隊の邪魔にならないように、戦闘機サイズの宇宙空間と大気圏の併用艦を、複数降下させてサミラス艦隊の背後に配置していた。
本当最悪の場合は防御陣形で互いのバリアを合わせてサミラス艦隊を守る予定だったけど、本当に使うことになるとは。
サミラス皇子からは、好きに動いていいと確約をもらってる。多分ジョニーさんの性格から、束縛なんかを避けたんだろうけど。
「バルバドス艦隊攻撃まで残り三……二…… これは……、直接攻撃じゃないようです!」
「作戦変更。敵旗艦以外に攻撃開始」
「了解しました。無人艦の主砲発射します」
僅か十数秒が長く感じた。
よく考えたらリアルな艦隊戦闘なんて初めてだったな。
しかもこの世界の情報不足が、やはりオレ達の弱点になった。
バルバドス艦隊は高めた魔法エネルギーで直接攻撃ではなく、何かしらの別の行動をするらしい。
これ以上待つのは危険だ。出来れば先に手を出させたかったけど、そうも言ってられないね。
「レーザー砲。敵艦に命中。バルバドス艦隊は陣形を崩して二番艦から八番艦まで後退」
「間に合ったか?」
「空間に乱れが発生。ワープ反応に似てます。恐らく召還魔法と推測。生体エネルギー値マイナス。恐らく竜種だと思われます」
バルバドス艦隊はレーザー砲であっさり戦闘不能になり、後退していった。でも旗艦の魔法エネルギー値は下がることなく、何か呼び出したみたい。
あかん。フラグになったかも。
「なんだ。また竜か」
バルバドス艦隊が呼び出したのは、黒い禍々しいオーラに包まれている竜だった。
一瞬魔王でも呼び出したのかと冷や汗を流したけど、竜ならなんとかなるはず。
「違うのじゃ! あれは邪神竜じゃ!」
「邪神竜?」
「わらわにも名前しか見えんのじゃ!」
ただ、ここで不吉なことを言ったのは、異世界のムツ〇ロウさん……じゃなかった幼い覇王さまだ。
でもこの覇王さま、微妙に役に立たないな。
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