第180話・帝国争乱?・その三
サミラス皇子の空中船は結構大きい。この世界の空中船の区分けは分からないが、恐らく帝国自慢の船なんだろう。
形は飛行船のような形の上部を平らにした形であり、甲板には飛竜が居る。
オレ達のシャトルはそこに着陸した。
「どうぞ。こちらです」
シャトルから降りると若い士官の男性が案内してくれるが、ボディチェックも無しに中に入れるとは不用心と取るべきか、信頼されてると取るべきか。
こちらのメンバーは、オレとエルにルビーとサファイアの二人の四人になる。
服装は防護服とヘルメットだけど、宇宙空間で目立たぬようにと色が黒なので。見た目は本当どっかのSF映画の悪役みたい。
迷彩柄とかタイプはいろいろあるんだけどね。光学迷彩の技術があるから黒が一番無難なんだよ。
「えーと。凄い格好だね」
「失礼しました。臆病者なもので」
通されたのは船内の作戦室みたいな部屋だ。部屋には軍の高官や武装した兵士が数人居て、サミラス皇子の周りばかりかオレ達の背後にも居る。
さすがにフルフェイスのヘルメットは威圧感があるようで、一見すると顔に緊張感が見えないサミラス皇子以外は、かなり緊張してるらしい。
仕方ないからヘルメットを脱ぐか。
「どうやら本物の依頼書みたいだね。悪いね。気分を悪くさせて。バルバドス兄さんの刺客かとの声があってね」
オレ達はヘルメットを脱いでジョニーさんから預かった皇帝と宰相の依頼書を見せると、サミラス皇子は武装した兵士を部屋から出した。
警告はするがこちらの武装に手を付けない辺りが、帝国軍の妥協なんだろうね。
「いえ。それより先にも知らせましたが、バルバドス殿下の艦隊がこちらに向かってます」
「来るとは思ってたけど、こちらの予測より早いんだよね。勇者殿のお仲間の意見が聞きたい」
「私達は帝国軍の内情をよく知りません。何故これほど早く動いたか、こちらが聞きたいくらいですよ」
「情報が漏れてるのは理解してる。元々兄さんは軍や貴族に支持されてたんだ。今でも信じてる人は居るだろうからね」
「戦力的に殿下の三分の一です。バルバドス殿下の艦隊はそれほどお強いので?」
「向こうが新型なのは確かだよ。ただ三倍の数に勝てるほどでもないけど」
そのまま軍の高官を背後に立たせたサミラス皇子と話をしていくけど、意見なんて聞かれても困るなぁ。帝国軍の内情なんて殆ど知らんし。
「単純に考えて罠では? 向こうは殿下が逃げられないのを理解してるはずです。まさか三分の一の戦力を相手に引いたとなれば、バルバドス殿下の思う壺でしょう」
「うーん。そうなんだよね。兄さんの子飼いの部隊はいろいろ優遇されてたからね。切り札の一つや二つあるのは、想定済みなんだけどね」
流石に大国の皇子と軍だけに無能ではないが、ここで慎重になりすぎると相手の思う壺だろう。
バルバドス皇子が優勢だとなれば、軍は割れて向こうに付く人達も増えるだろうしね。
「皇宮と帝都は宰相閣下とジョニーさんが制圧します。本来の予定と違いますが」
「仕方ないね。皇宮に籠城でもされたら面倒だし。問題はこっちか。ここで僕が負けたら形勢は兄さんに流れる。勇者殿本人が居ないので迷ったけど、できる範囲で助けて欲しい。別に命を掛けろとまでは言わないからさ」
「指揮権はどうするんです? 私達は帝国軍の艦隊行動なんて知りませんよ」
「そこなんだよね。悩みどころは。少し無責任かもしれないけど、君達は君達で自由にやってくれていい」
「殿下。それではこちらの艦隊の作戦に支障が」
「どのみち最初は僕達がやるんだ。駄目そうなら助けてもらえばいいだろう。無理難題なのは承知してるけど、帝国軍なら上手く合わせられるだろう」
何となく予想していたが、この皇子助けて欲しいってそのまま言っちゃうし。もっと言い方あるだろうに。
ジョニーさんを意識して下手な言い回しを避けたのかね?
まあ見捨てる訳にもいかないし、助けない訳にはいかないだろう。
「では私達が介入する際のことを決めましょうか」
結局時間が来るまでに可能な範囲で互いに情報を交換して、バルバドス皇子の艦隊への対処を話し合うしかないね。
いや、本当参ったよ。
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