第175話・その頃、アレックスは……
「おーし。あんまり遠くにいくなよ?」
帝国の流れは最早決定的だ。あとは作戦決行を待つばかりだけど、正直オレ達にはやることがない。
この日はエル達とロボとブランカと、クリスお嬢様とミリーお嬢様とで、お弁当を持って帝都郊外の草原に来ている。
やっぱりロボもブランカも自然が好きなんだろうね。首輪を外してやると、嬉しそうに走り回ってる。
「ロボ! ブランカ! 行くよ!」
「待つのじゃ! わらわも行くのじゃ!」
あーあ。本当は貴族のお嬢様と皇女様なのに、クリスもミリーもロボとブランカと一緒に走り回ってるし。
何かだんだんどっかの村娘と変わらぬ様子になって来たけど、オレのせいじゃないよ?
「これは薬草。こっちのは毒草だから。両方集めて」
ケティは二人の侍女さん達と一緒に、薬草や毒消し草に毒草とか香草の類いを採取してる。ゆっくりしていいって言ったんだけどね。
「このまま無事に解決するといいけどね」
「オルボアが魔族と繋がってる可能性が浮上したので、一筋縄ではいかないかもしれません」
「魔族って何処に住んでるの?」
「不明です。一般的には魔界と言われてますが」
「敵の姿が見えないって、やりにくいね。こっちから攻撃出来ないしさ」
草原を走り回ってる子供達を見ながら、帝国の御家騒動の話をするけど。姿が見えなく敵の本拠地どころか、勢力の規模すら分からないのは不気味だね。
そもそも魔族とか魔王なんてのが存在する、または過去に存在したことは確かみたいだけど。
魔族や魔王がどんな存在で何なのかははっきりしてない。
まあそれを考えるなら、人やこの世界の生命体が信じる神と、逆に魔王や魔族に繋がると言われる邪神の関係を、存在の有無を含めて一から考えないといけないのかもしれない。
まさにこの世界の始まりから、科学的に検証する必要があるけど。それをやるには長く地道な調査が必要だろう。
魔王が現れるかも知れないって時に、考古学調査始めても間に合わないよね。
「私達が知る魔族に近い存在は、ワイマール王国の第二王子だけですから。あのレベルならば驚異にはならないのですが」
「この惑星を個人で征服する力のある存在を、相手にするとなると苦労するだろうな」
バルバドスって皇子がオルボアと繋がってる確証はない。
とはいえジョニーさんが警戒してるし、エル達もこのまま終わらないと見てる。
「どうしたんだ? ロボ。ブランカ」
「獲物を逃がしちゃったのよ」
分からないことだらけの現状に、エルとジュリアと悩んでいると、尻尾と耳が元気なく垂れ下がっているロボとブランカがとぼとぼと戻ってきた。
「狩りを教えて欲しいそうじゃ」
クリスとミリーに話を聞くと、兎を見つけて狩ろうとしたけど逃げられちゃったみたい。
まともな狩りなんて、前回森に行った時にゴブリン狩っただけだしね。あとは陸に上がった魚とか、亡くなってる海竜とじゃれてただけだし当然か。
「そんじゃあ、みんなでロボとブランカに狩りを教えてやるか」
悲しそうに瞳をウルウルとさせてるようにも見えるのは、気のせいなんだろうか?
オルボアとかバルバドスの問題は考えても解決しないし、今はロボとブランカに狩りを教えてやらないと。
優しい子達だから、きっと狩りをして獲物を獲ってオレ達を喜ばせたかったのかもしれない。
妙に張り切るオレ達は、そのまま一緒になって草原を走り回ってロボとブランカに狩りを教えてやることになる。
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