第166話・SFとファンタジー

「お嬢様の言う通りかもな」


「どうしたの?」


「オレはもう少し自分で動くことをした方が、いいのかもしれない」


 ファンタジーというか、治安の悪い場所の定番とも言える輩に絡まれたことで、少し学んだ気がする。


 優秀なアンドロイド達に頼りすぎていたと言われれば、その通りなのだろう。


 アンドロイドとはいえ女性に守られるだけなのは、幾らオレでも少し恥ずかしい気もする。


「アレックスはステータスが高いからの。苦労はせんと思うぞ」


 ジョニーさんのようにとは思わないけど、最低限自分の力くらいは使えるようになりたい。


 そんなことを考えていたら、ミリーお嬢様にステータスと言われてハッとした。


 そういえば他人のステータスが見えるんだったっけ。最近は異世界のムツ〇ロウさんみたいなことしか、してなかったから忘れていたよ。


「ステータスっていうのは、やはりあるんですね」


「あるの。一番ステータスが高いのはジュリア殿じゃな。勇者殿よりも高い。次はエル殿でその次が勇者殿で、ケティ殿がそれに続くの。アレックス殿はその下じゃが、わらわが見た中では、みんな強すぎて他とは桁が違うぞ」


 異世界のムツ〇ロウさんは人間の観察も上手いのか。教えられたステータス別の順番の驚きはあまりない。ジョニーさんがケティを超えた事以外は。


 医療型は元々戦闘能力がアンドロイドの中では低いけど、それでもプレイヤーよりは強いはず。ジョニーさん何でケティより強いの?


「レベルは勇者殿が一番じゃな。流石に修羅場を潜っておるのであろう」


「つまりジョニーさんはレベルを上げて強くなったと?」


「普通に考えればそうであろう」


 ちょっと待って生体強化されたプレイヤーが、レベルを上げて強くなるなんてあり得るのか? ギャラクシー・オブ・プラネットだと、プレイヤーの基本能力は変わらなかったはず。


「どちらかと言えば様々な経験を積み、自身の限界を超えたことを、数値化したのがレベルではないでしょうか」


「彼のプラス因子エネルギーは、数値が上がってるのは確か」


 レベルが上がるから強くなるのか、強くなったからレベルが上がったと測定されたのか疑問だ。でも結果は変わらないだろう。


 以前に聞いたことだが、この惑星の生命体は魔物の持つマイナス因子のエネルギーを取り込むことで、己の力とするようだとの調査報告がある。


 生物学的な肉体の限界なんて、生体強化しない限りはたかが知れてる。でもこの世界にある未知のエネルギーは、良くも悪くも世界に大きな影響を与えてるからね。


 つまりジョニーさんは多くの敵と戦い、相手のマイナス因子のエネルギーを己の力として限界を超えたと?


 ただし魔物を倒すだけではダメで、己自身の努力で限界まで経験を積み鍛えねばだめなんだとか。


 ジョニーさん。本当にファンタジーの勇者になっちゃったのね。





 正直守られるだけってのも気になるけど、鍛えるより強い兵器を開発した方が早いって考えるのはダメなのかね?


 やっぱりオレにはファンタジーは向かない気がする。


 魔王なんて現れたら、城ごと吹き飛ばせばいいって思うし。


 ただレベルはともかく、最低限身を守れるくらいには訓練しないと恥ずかしいね。


「三日坊主?」


「流石にそこまで飽きっぽくないよ。性格的に向かないのは確かだけど」


 少しオレも訓練しようと決心する。だけどケティさんや、それを察知して水を差すようなこと言わないでおくれ。


 自分でも薄々そんな気はしてるし、あえて決心を言わないんだから。


 ちょっとずつマイペースで訓練するつもりなんだよ。


「大丈夫。敵は艦隊で消し去ればいい」


 ケティもあんまりファンタジーに向かないみたいだね。


 正直同感だ。


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