第163話・ちょっとしたお仕事
「じゃあ、行きますか」
皇帝の件が調査待ちになったので、まだしばらく帝都に滞在することになったオレ達だけど。働かざる者食うべからずということで、マルク君の家の荷物を運ぶ仕事を手伝うことにした。
帝都郊外にある空中船の発着場に輸送機で乗り付けて、荷物を積んだら目的地まで飛ぶだけだ。
本来なら秘匿したいギャラクシー・オブ・プラネットの輸送機だけど、ジョニーさんのせいで有名になっちゃったしね。
毎度お馴染み核融合炉と反重力エンジンの輸送機だから燃費もいいし、ちょっとしたドライブ感覚だけど。
「すいません。わざわざ船を呼んで頂いて」
「泊めてもらってるしね。このくらいなら、いつでも手伝うよ」
今日の荷物は軍に納入する軍需物資らしい。
オルボアがキナ臭いので、軍を国境近くに張り付けているらしく、その軍に頼まれた物資みたい。
マルク君の家のイースター商会は、空中船の輸送業務もしてるらしいけど、運悪く故障して困っていたので手伝うことにしたんだ。
表向きは空の勇者が手伝うってことにしておけば、騒がれてもなんとかなるだろうしね。
「さあ、冒険よ!」
「冒険楽しみじゃの!」
一部不吉なことを言ってる人も居るけど、今日は冒険じゃなくお仕事なんだよ?
ミリーお嬢様の方は完全な箱入り娘だから、街から出るのが楽しみで仕方ないみたいだけど。
「のんびり行こうか。あんまり早く行くと、厄介なことになりそうだし」
「ねえ、トランプしましょう!」
輸送機は荷物を積んで帝都を出発するが、出発日時と到着日時を納入先の軍に報告しなくてはならないので、輸送機はこの惑星の空中船のスピードを超えないようにして飛んでいく。
前回の海竜騒ぎやジョニーさんの旅路で、ある程度こちらの飛行機のスピードは知られているだろうが、わざわざ具体的な情報を与えてやる必要もない。
操縦は自動操縦でいいから、みんなでのんびりと空のドライブを楽しむことになる。
「あの、マルク様。よろしいのでしょうか?」
「楽にしていいですよ。ジョニーさんの船ですから」
今回は仕事なのでイースター商会の従業員も乗っているけど、彼らはコックピットを空にして見張りもしないオレ達に、ビックリしてるみたい。
どうも一般的な空中船だと、空の魔物に襲われたりしないように見張りをするんだってさ。
マルク君はこの輸送機がオレの船だと知ってるけど、従業員にはジョニーさんの船だと言ってる。それだけ勇者の名前って重いんだよね。
「またジョーカーが来たのじゃ!」
「甘いわよ。ババ抜きは奥が深いのよ」
どうでもいいが死神さん。幼いミリーお嬢様相手に本気にならなくても。
ただ一つ明らかになったのは、覇王スキルはババ抜きには役に立たないと。
本当に凄いスキルなんだろうか?
案外たいしたことなかったりして。
「うむ。ババ抜きの特訓をせねばならぬのう」
うん。この子を皇帝にするのは二十年は早い。
正直第一皇子をさっさと皇帝にして苦労でもさせたら、案外まともになるんじゃないかって思わなくもない。
それにスキル一つで国が救われたり滅んだりってのは、今一つ理解に苦しむ。
その辺りを次に皇帝に会いに行った時に聞いてもらわないと。
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