第156話・狩ったら食べましょう

 夕食は昨夜に続きマルク君の両親と一緒の夕食だった。


「おー! すげえな!」


「海竜の肉ですが肉のようでありながら、魚の身のようでもある不思議な物だったので、肉料理と魚料理の両方を作ってみました」


 マルク君の家の広いダイニングテーブルには十種類近い料理が並ぶが、エル達が作った和食もあるみたい。


 海竜のステーキ・海竜のハンバーグ・海竜のカルパッチョ・海竜のしゃぶしゃぶ・海竜の寄せ鍋・海竜のひつまぶしなどがあるみたい。


 もちろん炊きたてのご飯もあって、ジョニーさんはどんぶりにご飯を山盛りにして、イキイキとした表情で料理を食べようとしてる。


「ロボとブランカはミンチ肉か?」


「ええ。まだ固形物を食べ始めたばかりですからね」


 ロボとブランカは行儀よくお座りをして自分達のご飯を待ってるけど、美味しそうな匂いを感じるのかご飯まだと言いたげに瞳をウルウルさせてるし。


 そんな二匹のご飯は粗みじんに切った海竜の肉だ。


 エルとケティが山盛りに肉が入った皿を持っていくと、視線は釘付けになってる。


「いっぱい食べて」


 何故かジョニーさんとロボとブランカが、同類に見えるのは気のせいだろうか?


 一人と二匹は待ってましたと言わんばかりに、頬張りバクバクと食べてる。





「本当だ。肉みたいな食感なのに、魚みたいな味というか」


「部位によっても違うので、それぞれ合わせて調理しました」


 二匹が食べ始めたのを見届けてオレも食べ始めたけど、海竜のステーキは見た目や食感が肉なのに、味は魚の身をステーキにした感じかな。


 ただ濃厚な旨味がありながら、決してしつこくない後味の良さもあって本当に美味い。


 うーん。異世界の神秘だね。


 寄せ鍋は海竜の出汁がスープや野菜に染みててバカ美味。


 もっと個性強いのかと思ったけど、癖とかないから何の料理でも美味しいかも。


 しゃぶしゃぶが個人的には好きだな。


 脂が少し落ちて程よく火が通ったお肉を、ポン酢で食べるとご飯によく合う。


 あっ、でも蒲焼きの濃厚なタレと合わさるとまた美味しい。


 肉自体は意外に柔らかいんだよね。


 流石に海竜の皮はないから、蒲焼きがちょっと物足りないのが残念だ。


 海竜の皮は食べられないのかな? 骨は出汁が取れたりして。


 皮や骨は食べるから売れませんとか言ったら、ここの人達はどんな反応をするんだろうか。


「美味。養殖して定期的に食べたい」


「面白そうね」


「海竜を養殖なんて出来るんですか?」


「チャレンジあるのみ」


 味を変えるとまた新鮮に感じてどんどん食が進む。


 後味すっきりなのと意外に脂っこくないのがいいね。


 でもケティさんや。海竜の養殖なんてやらないから。やる気を出してチャレンジしようとしないで。


 マルク君が本気にしそうだよ。


 まあ海竜のDNAが判明したら、DNAから作れる気もするけどさ。


 生態や繁殖方法を調べたりしなきゃいけないし大変だよ。


「皆さんなら普通に狩って来られるのでは?」


「狩り過ぎは良くない。絶滅したら大変」


 ごめんよ。マルク君。


 海竜を食べたいからと狩るのではなく、養殖って考える時点で、この惑星の人には理解できない価値観なんだろうね。


 地球的というか日本人的な価値観だと、美味しいなら養殖しなきゃとなるんだよ。


 マルク君のお父さんとお母さんも驚いてる。


 ああ、海竜の寄せ鍋のスープはおじやがいいな。


 うどんも捨てがたいけど、きっとジョニーさんがそこだけは譲ってくれないから。


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