第154話・宰相閣下の胃痛・その二
side・帝国宰相
「報告します。勇者殿が海竜を討伐したらしく、運搬の為に空中船を帝都内に入れたいと要請がありました」
「ブファ!? かっ、海竜!? 何故そんなものを帝都に持ってくるのだ!」
「イースター商会で解体するらしいです」
仕事の傍らでミレーユ様の件を密かに調べていたら、またとんでもない報告が。
勇者は昨日の午後は帝都に居たはずだろう。
いつの間に海竜が居るような海に行ったのだ?
「今朝、勇者殿の空中船で、勇者殿と一緒に観光していた人達が帝都を出発したのですが、お昼前には海竜を討伐して戻ってきました」
「馬鹿な。海竜を数時間で討伐したのか!?」
「いえ移動時間を考えると、恐らく数分で倒したのかと」
観光は終わって帝都を出たのではないのか?
そんなルーキーの兵士がゴブリンでも倒すように、海竜を倒すなど何を考えているのだ。
「許可しろ。ただし下手な被害を出したら弁済させるからな」
「はっ。わかりました」
しかも狩って来てから運びたいと言われると、ダメだと言えないではないか!
それにしても勇者は何故海竜を……
「勇者と一行は帝都で買い物をしております。帝都でも有名な高級店なため、もしかすると稼ぐ為に海竜を……」
勇者が一体何故海竜を倒したのか気になり、部下に調べさせたらとんでもない事実が判明した。
まさか金策で海竜を?
そんなことあるはずがないと思うが、勇者ならやりかねない。
もしかしてしばらく帝都に滞在する気か?
別に法に触れてはないし問題ではないが、空の勇者が帝都に居ると私の気が休まらないのだが。
「宰相。勇者が海竜を倒したらしいな」
「はっ」
「牙と皮を国で買えぬか? 海竜の牙と皮ともなれば二度と手に入らぬかもしれぬぞ」
「ですが、まだ売るかどうかすら定かではありませぬ」
「別に安く買い叩くつもりはない。評価額に色をつけて買い取れぬか交渉せよ」
勇者が海竜を倒したと聞いて、きっとこうなる気がした。
第一皇子殿下は、やはり海竜の牙と皮を欲したか。
どの程度傷があるか分からぬが、皮ならば大きいようだからローブかマントくらいなら何着か作れよう。
牙は普通は狩った者が武器に加工するので、市場に出ないのだが。
海竜の皮の方は火竜ほどではないが、加工すれば鋼などより遥かに丈夫な上に魔法に耐性が高いために、市場に出ればいくらになるか分からぬほどだ。
何より海竜は狩るのが難しく、滅多に市場に出ないので希少価値があり人気なのだ。
殿下の気持ちも分かるが、予算は有限であり急にいわれてもそうすんなりと大金を出せる物ではない。
まずイースター商会に、売る予定があるのか聞く方が先か。
まったくミレーユ様のことで国が揺れてると言うのに。
自分以上に皇帝に相応しい者は居ないと考える、あの過剰な自信は何とかならぬものか。
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