第148話・二日目の夜
「皇宮の鍵の解析が終了しました。特定の波長のエネルギーを放つことで、魔法障壁を通過できる模様。同様のエネルギーを再現することで、こちらの虫型偵察機が入れるか試すのに数日が必要です」
「了解。無理しないでいいからって伝えて」
襲撃者を衛兵に付き出した後も、この日は夕方まで帝都の観光をして終わった。
股間を痛がる襲撃者に衛兵の人達に微妙な顔をされたけど、大商会の跡取りのマルク君が説明したことで問題なく済んでよかったよ。
今夜は流石に宿屋にしようかと少し話したけど、マルク君が帝都にいる間は泊まって下さいと言ってくれて、ジョニーさんが世話になると決めちゃったんだよね。
まあ帝都を後にする時にでも、お礼にマルク君の家の商売に役立つお酒でも贈ろうかと思ってる。
「あと少し風向きが変わりつつあります。幼いミレーユ様を亡き者にしようとする、第一皇子への支持が急速に揺らいでいます」
「覇王スキルも、そんなに危険に思えないしなぁ」
「いえ、ミレーユ様とロマさんに確認したところ。覇王スキルは皇族でも一部の者しか知らぬようです。現皇帝と帝位継承順位一位の第一皇子に、母親と侍女のロマさんを含めて数人です。どうやら覇王スキルの保持者は、成人するまで秘匿しなくてはならない決まりがあるのだとか」
「それじゃあ、他の人は何も知らないまま、殺そうとしてるのか」
「はい。知っていたら流石に、殺そうとはしないかと。初代皇帝が持っていた、伝説のスキルのようですから」
皇宮への潜入も早ければ、一週間以内に可能になる目処が付いたけど、帝国側の状況が変わりつつあるのか。
そりゃあんな子供相手に軍を動員して殺そうとしたら、周りが喜ぶわけないよな。
「具体的に第一皇子を、止めようとしてる人は居ないの?」
「それが他の皇族には、皇帝になりたいと意欲を見せてる人が居ないようでして。御輿が居ないので誰も動かぬようです」
「本当めんどくさいね。皇族や貴族って」
「ロマさんの話だと皇帝陛下に関しては、最近では第一皇子に実権を奪われてるようです。ただ第一皇子を止めぬ皇帝も、現状を黙認しているのではと見られていて、貴族からの支持が揺らいでいますから」
「誰が敵かはっきりさせたいね」
皇女様と侍女のロマさんは皇帝を信じてるようだけど、今一つ信じていいか疑問なんだよな。
実は何か訳があって、皇女様を犠牲にして帝国を守る気だったとか言われても驚かない自信がある。
ゲームと違ってリアルだと、敵味方の判別がこれほど難しいとは思わなかった。
「今しばらくお待ちください。図書館の調査と平行して、敵味方の洗い出しをさせてますから」
「そう言えば魔王の件はなんか分かった?」
「そちらはまだ。ただ覇王スキルは魔王が現れた時に、皇族に授かる可能性はあります。具体的な方法は不明ですが、帝国の皇帝は神との契約をして、皇帝として即位するそうですから」
「それってよくある神様への誓いとは違うの?」
「ロマさんの話だと本当の契約だそうです。具体的な内容は皇帝と一部の者しか知らないようですが」
「つまり神様は実在するってこと」
「はい。生命体のような意志があるのか、それとも機械的に世界を管理してるのかは不明ですが。この惑星の人が神と呼ぶ、何かは実在する可能性が高まりました。コンピュータの予測では、覇王スキルは神が授けている可能性も指摘してます」
なんか一気にファンタジーっぽくなって来たな。
魔王と神様の存在がリアルにある可能性が高まるなんて。
うーん。このままなし崩し的に捲き込まれそうな気がするのは、気のせいだと思いたい。
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