第102話・島での生活
「ロボ! ブランカ! おいで!」
伯爵様が島に来てもう一週間か。
ロボとブランカはすっかり目が開いていて、最近じゃちょこちょこと動き回るようになっている。
引っ越しや建物の内装なんかも一段落したので、畑作りにみんなで精を出しているけど、クリスティーナ様は暇を見つけては二匹を連れて島を走り回っていた。
「ぐる!」
「わふ!」
まだ赤子と言える二匹だけどオレ達や島の人達を、群れの家族か仲間のように認識してるようで、円らな瞳で見ては構ってと尻尾を振り近寄ってくる。
畑にはこの惑星のジャガイモとさつまいもを品種改良した物をすでに植えていて、他にも野菜と果物類なんかを植えた。
主食には米と麦の二毛作をするつもりで、重機なども使いながら田んぼ作りを進めてる。
また島の町には、元々この惑星とは縁がないオレ達が作ったせいで、教会がないので住民となった人達の要望から建てられていた。
あとは地下を深く掘ると温泉がでることも判明したので、温泉施設も建設され始めていた。
「平和だな」
「そうですね。王国とは偉い違いです」
楽しげなクリスティーナ様とロボとブランカの姿に思わず和んでしまう。
そうそう。伯爵様の祖国のワイマール王国は未だに混乱と緊張が続いてる。
国王は必死に頑張っているけど、王妃と王太子が魔法により長いこと操られていたのが発覚して長期治療に入ったため、王太子は正式に王位継承権から離脱した。
他にも一部の貴族が王太子を王に即位させる為として、オルボアから賄賂を貰っていた事を自供して騒ぎにもなってる。
国王は今ならば罪に問わないから素直に話してくれと貴族達に問い掛けると、伯爵様が牽引ビームで消えていく姿を見ていた者から自供が飛び出したらしい。
加えてオルボアとの戦いの折りには自ら汚名を晴らす為に先陣をと嘆願する貴族もいて、伯爵様は貴族達の目を覚ますことに成功していた。
「意外と言えば意外だったのは、ヴェネーゼの件か」
「結局私達も最初から彼らの計画を邪魔していました。ジョニーさんのこと言えませんね」
そしてこの数日で判明した事実として、ヴェネーゼで町を掌握しようとしていたノーマン商会のマーチスは、オルボアと繋がっていたのがオルボア公国での情報収集から明らかとなった。
王城や重要拠点には未だに偵察機が入り込めてないが、オルボア公国の町で酒を飲んでいた男が、マーチスの失敗をチラリと馬鹿にしていたのを偵察機が捉えている。
恐らくヴェネーゼを密かに掌握しつつ、王太子を傀儡にして属国化する計画だったのだろう。
結果論だが彼らの計画を最初に狂わせたのが、オレ達かもしれないって言うんだから、本当ジョニーさんのこと言えないね。
「本当。神の導きなのかもね」
「信じるのですか?」
「エルやみんなと一緒に居られるようにしてくれた、借りは返したいって思う」
伯爵様はオルボアを不気味だと言ってる。
隣にはワイマール王国より強大な帝国があり、オルボアの国力では出来ることは限られてるはずなんだ。
ただの野心剥き出しの馬鹿ならば構わないんだけど。
「ジョニーさんの活躍で、一部にはレーザーが効きにくい敵が居るのが判明してます。調査研究部では魔法技術を含む、新しい武器及び兵器の開発許可を求めてます。如何しますか?」
「許可しといて。オレ達は使わなくても、ジョニーさんなら使いそうだし」
「了解しました」
武器や兵器は使ってこそデータが取れて技術が進む。
ジョニーさんの戦闘記録はそういう意味では本当に役に立っていて、補給も別に対価は要らないんだけどね。
ただジョニーさんはそれとこれとは別だからと対価を払うと言ってるみたいで、データで新しい兵器が出来たら回してくれればいいと言ってるらしい。
対価と言えば伯爵様からも対価を貰った。
旅の途中からの助っ人やら最後の工作まで含めた対価を金銭で貰ってる。
長年蓄財してきたらしくそれなりに資産は持ってきたが、流石に今回の対価は安くはなく、正直お金には困ってないからと遠慮したがけじめを付けたいからと渡された。
そこでオレとエルは伯爵様に参謀として働いて欲しいと頼み、二つ返事で了解してもらった。
他の移住者のみんなにも少し教育をして、今後雇うことを考えており伯爵様からも賛同を得てる。
今は食料は配給しているが、ゆくゆくは自立出来るようにしなくてはならない。
それにオレ達が溜め込んだお金を、少しでも回していかないとダメだと思うんだ。
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