第77話・ワイバーン!
「ギャアアアオ!」
あの冒険者が不吉なこと言うから生きてるじゃないか!
ただ無傷ではない。
胸の辺りは焼け焦げているしあちこちから血を流しているがまだ飛べるようで突っ込んでくる。
中途半端に傷つけたせいかかなりお怒りのご様子だ。
「エル!」
「対艦レーザー発射!」
エルはこうなることを予期していたかのように馬車の兵装の中で最も強力な対艦レーザーを準備していたのだろう。
いつの間にか馬車の幌の上部には対艦レーザーの砲が出ていて、すでにロックオンしていたワイバーンに一瞬の閃光として吸い込まれるように炸裂した。
「なっ……」
「何が……」
対艦レーザーはワイバーンの首から上を消し去るように撃ち抜くと、ワイバーンは馬車の後方の道の上に落下してしまいそのまま動かなくなった。
冒険者も兵士達も魔法で仕止められなかった瞬間は、死も覚悟したかのようにワイバーンが来るのを覚悟したんだろう。
だが終わってみれば見知らぬ何かでワイバーンは首から上を吹き飛ばされて終わった事実に、しばらく言葉が出ないようだ。
「思ったより威力があったのう」
「伯爵様?」
「すまん。ワシの奥の手じゃ。そう何度も使えんから黙っておったのじゃが。さあワイバーンを解体して早く行くぞ」
「はっ、はい!」
一体何がと誰もが辺りを見渡すその姿にオレはどう誤魔化そうかと頭を悩ませたが、先に動いたのはなんと伯爵様だった。
楽観的にも聞こえる軽い声で笑いながら満足げな一言を口にしていた。
何をしたのかと冒険者達は気になる様子にも見えるが英雄と称えられる伯爵様が笑う姿に、彼ならと思ったのか流石は伯爵様だと称える声が聞こえると人々には安堵の表情が見える。
「すまぬ。助かったわい」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
兵士達と冒険者達は伯爵様の指示に従い、道に落ちたワイバーンの解体を始めていてその表情には笑顔が見える。
「それにしても運が悪いのかいいのか。この辺りはワイバーンのテリトリーが近くての。年に何人かは確実に襲われるが助かる確率は五分もない。食われるか崖から落ちるか」
伯爵様は人がワイバーンに集まった隙にオレ達のところに来て、ワイバーンの解体を眺めながら少し話をしたけどどうやら誤魔化すのを手伝ってくれたみたいだ。
「それにしてもお見事なタイミングでした」
「腹芸の一つも出来ねば軍など率いられぬからの。アレの素材は売っても構わんか? 売値は前の報酬と合わせて後払いになるが」
「ええ。構いませんよ。なんなら皆さんで分けて頂いても」
オレもギャラクシー・オブ・プラネットでは一応司令にはなっていたけど、実際たいしたこと出来ないんだよね。
突然の事態に当たり前のように振る舞う伯爵様は本当の司令官として様々な苦労を経験したのだろう。
「でかい魔石だ!」
「皮もかなり取れたぜ」
「バカ。伯爵様が倒したんだ。全部伯爵様のモノだぞ」
「そなた達にはそれを売った金額の半分やろう。魔法のおかげで動きが鈍って助かったしの」
「やったぜ!」
「流石伯爵様!」
伯爵様はそのまま解体されたワイバーンの魔石と皮と骨を荷物用の馬車に乗せると、冒険者達にワイバーンの素材の売却額の半分を約束して冒険者達を喜ばせる。
彼らは命懸けでも最後まで戦おうと馬車を守ろうとしてたしね。
当然の報酬だろう。
「メアリーさん。ありがとうございました。貴女のおかげで対処出来ましたわ」
「いえ、お役に立てたなら何よりです」
一方エルは今回の隠れた功労者のメアリーさんにお礼を言ってる。
彼女の情報が無ければここまで素早く倒せたかは怪しい。
下手にバリアを展開したりして長引かせるより、よほどマシな結果だからね。
そういえばクリスティーナ様は?
ああ、ワイバーンが解体されるのを興味深げに見てる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます