第76話・山越え道中
「この音はなんでしょう?」
クリスティーナ様の話から少し重苦しい空気がしばらく続いたけど、突然馬車の中に魔物の接近を知らせる警報音が響いた。
「魔物が近付いてます。これは……何の魔物でしょう? まさか竜!?」
実は伯爵様とクリスティーナ様達に異邦人であることを明かしたんで、馬車のレーダーなんかを今日からまた使ってるんだよね。
「違います! ワイバーンです!」
レーダーには未確認の魔物を示す表示があり、エルは今朝からレーダーと同じく使うことにして飛ばしていた偵察機の映像に切り替えるとそこには竜のような恐竜のような飛翔体が映った。
クリスティーナ様とメアリーさんは未知のモニターに目を白黒させていたが、その映る魔物を知っていたメアリーさんが慌てた様子で正体を明かしてくれた。
「大変です! ワイバーンはこの辺りで最も危険な魔物なんです!」
「任せな! おい! 空からなんか来るぞ!」
メアリーさんの様子にオレ達も緊張が走るものの、馬車の御者をしていたジュリアが兵士や冒険者に大声で知らせる。
「空からだと!」
「チッ! ワイバーンだ!」
「魔法で叩き落としてやる!」
馬車の中とは違いずっと緊張感があった外の兵士や冒険者達はジュリアの声に騒然として空を見上げると、遠くから接近してくるワイバーンが見えて来た。
現在居るのは崖の中腹であり、右手には上に続く崖で左手には下に続く崖と逃げ場はない。
狭い崖の道で出来るのは山側に馬車を寄せて守るだけのようで、兵士達が馬車を守り冒険者達はワイバーンと戦うべく陣形を組む。
冒険者は前衛が三人に後衛の魔法使いが二人のチームらしく、空飛ぶワイバーンを相手にする場合は魔法で叩き落としてからでないと戦えないようだ。
伯爵様も馬車から降りて雷神の槍を持ってはいるが、流石に崖の道では分が悪く受け身になるしかない。
「メアリー! こっちの人間は飛べるかい?」
「上級魔法ならば飛翔は可能ですが、同時に魔法で攻撃出来るのは宮廷魔術師でも一握りと言われてます」
「ジュリア待って! 司令。対艦レーザーの使用許可を」
「許可する。ただし冒険者の人達の攻撃後で頼む」
「了解しました」
明らかに分が悪い状況にジュリアは反重力アイテムで空中戦をしようと考えたのか、メアリーさんにこの世界の人間が飛べるか聞いていたけど、エルが止めて馬車の対艦レーザーの使用を求めてきたので許可をする。
誤魔化すのが少し面倒そうだけど犠牲者は出したくない。
ジュリアとケティは外に出て、それぞれにバスターソードと弓で馬車を守るように待ち構えた。
「ギャアアアオ!!」
「対艦レーザー起動。目標ワイバーン」
流石に怖いのかクリスティーナ様はメアリーさんに抱き抱えられたまま馬車の中でモニターを見ているが、エルは馬車のシステムを起動して対艦レーザーの準備をする。
外からはワイバーンらしき鳴き声が響いてくると、ワイバーンはオレ達を獲物と判断したのか一気に接近して急降下して来た。
「食らいやがれ!」
逃げ場はなく魔法で叩き落とすか食われるかの二者択一だと感じた冒険者や兵士達や伯爵様は、覚悟を決めてワイバーンを待ち受ける。
そしてその瞬間二人の冒険者の魔法がワイバーンに向けて放たれた。
一人の魔法は炎で人の身体より大きな灼熱の火の玉のようで、もう一人の魔法は風の魔法らしく炎より僅かに早く幾重もの真空の刃がワイバーンに迫る。
「やったか!」
その瞬間魔法は見事に直撃するものの、冒険者の一人が魔法が直撃したワイバーンの姿に喜び言ってはいけない一言を口にした。
それは……まさか不吉なフラグじゃないよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます