第37話・新たなる旅立ちの前に
「シューティングスター号の修理及び改修が終了しました。この小型端末でコントロール出来ます」
葬儀や慰霊祭から数日が過ぎていた。
ジョニーさんの小型戦闘機の修理は完了しているが、ジョニーさんとエルの話し合いでこの惑星内でシューティングスター号を使う為の改修をついでにしたらしい。
元々シューティングスター号はプレイヤーやアンドロイドが操縦する有人機の中では最高クラスの性能があり単独で宇宙空間も大気圏内も使える機体だったが、この銀河では宇宙空間での戦闘などまずないので大気圏内での戦闘に特化させるべく兵装やシステムを見直していて自ら操縦する拘りから自動操縦なども搭載されてなかったが今回は搭載している。
「ここから南西にある無人島諸島に私達の拠点がありますのでそこを基地として使って下さい」
この惑星には飛行船のような空中船はあるが飛行機はないのでシューティングスター号は修理したところで実際に使うとなると目立つし町や村に着陸させる訳にもいかない。
反重力エンジンなので滑走路は不要だが騒ぎになるのは目に見えている。
そこでシューティングスター号には自動操縦を搭載して無人島諸島を基地に必要な時にジョニーさんが呼び出しと送還出来るようにしたようだ。
「何から何まで悪いな」
「いえ、レーダーはこの惑星に合わせて敵性生命体を識別出来る物を試験的に導入しましたがまだ不具合があるかもしれません」
「おう、そのくらいなら構わねえぜ」
この数日ジョニーさんは町の酒場に飲みに行ったりして朝帰りの時もあったりと早くもこの惑星に順応していた。
これからのことはどうするのかオレ達とジョニーさんで話しているが、ジョニーさんはシューティングスター号で少しばかりこの惑星を見て歩きたいと言っている。
一緒に旅をしないかとも誘ってみたのだがまずは一人で旅をしたいらしい。
まあ自動操縦の端末は通信機にもなっているのでシューティングスター号を使えばいつでも合流出来るし、困ったらいつでも呼んでくれと男前な台詞を言ってくれた。
「こいつはいいな。お前さん達の故郷のもんか?」
「そうですね。細々と作っていたものです。レシピは記しておきましたしセレスは定期的にこちらに来るので分からなければその時に聞いて頂ければ」
「しかしいいのか?そっちで作って売ればいいじゃねえか」
「労力の問題でそこまで手が回りませんから。その代わり今後は取り引きをして頂けたら」
「ああ。いいぜ。魚は獲れるが内陸に運ぶのは一部の貴族様用に空中船で月一に運ぶ以外は塩漬けか干したものを細々と売る程度で余ってるしな。お前さん達なら海の魔物でも狩った方が効率はいいだろ」
そしてボルトンさんには魚醤のサンプルとレシピを渡して反応を見たけど、流石に魚に慣れてるだけに少し残る癖も気にならないらしく商売になると踏んだようだ。
元々漁獲量と比べて輸送の問題から魚は余りがちだったようで、それで調味料が作れるならばヴェネーゼとしては助かるのだろう。
それとここ数日町をぶらぶらしてみて分かったのは普通の魚を獲る漁師は居ても、海の敵性生命体と言える魔物を獲る人間は少ないという事実だった。
商人や漁師も襲われれば戦うし狩れれば持ち帰るが、基本的には小型の弱い物が基本で前にジュリアが釣ったマグロモドキなんかはかなり高値で取り引きをされてるようなのだ。
食料の問題から海賊のアジトから出発する前にマグロモドキを分けたら驚かれたほどで、セレスには当面の間は島とヴェネーゼを往復しながら手頃な敵性生命体を狩りボルトンさんに卸してもらうことにしている。
まあ当然冒険者ギルドなんかでも買い取りはしてるが余計な中間手数料が取られるので普通に考えるとボルトンさんに卸した方が双方利益になる。
ゆくゆくは島の果物や作物を加工したお酒など売りたいのだが、島はまだ工事中な為に当面の資金稼ぎにはそれが一番効率が良かった。
「そういやお前さん達。米を作ってるのか?」
「ええ、自分達で食べる分くらいですけどね」
「この辺りじゃ珍しいな。遥か東で昔見たことあるが」
「私達も詳しくは知らないんですよ。親が作っていただけなので」
「まあ、そんなもんだよな。ところで米の酒作ってるか? あれうめえんだよな」
「売るほどは有りませんが少しなら分けますよ」
「ほんとか!? 悪いが頼むよ。前はあっちから来た商人も居たんだがしばらく姿を見せなくてな」
ボルトンさんにはオレ達がここから少し離れた島から来たことをすでに教えていて、ジョニーさんが米を食べてるのも何度か見ていてボルトンさん達にも分けてあげたら知ってる米と味が全く違うと驚かれている。
米自体はギャラクシー・オブ・プラネットで品種改良した物なのでこの惑星なんかの在来種と違うのは無理もないが、流石に売ると騒ぎになりそうなので売るほどはないと言っていたんだ。
ただボルトンさんは米自体よりも米の酒が欲しいようなのでこの惑星の米の酒を少し調べて同様の製法の酒を分けてあげることにする。
それとオレ達は一連の海賊騒ぎでの報酬として金貨三百枚ほどを貰っていた。
内訳は海賊退治や捕縛の褒賞金に先日のギルド長とマーチス捕縛の褒美やらボルトンさんからの礼金など含めた金額だ。
町も大変だろうと半額を辞退しようとしたが貰ってくれと強く言われ最終的に受け取っている。
魚醤はその返礼の意味も少しありヴェネーゼが栄えてくれることを願ってでもあるんだ。
貨幣価値は金貨・銀貨・銅貨の三種類の貨幣がありそれぞれ百枚で上位の貨幣一枚となる。
地域や国により使う貨幣や価値は微妙に違うがオレ達の居るワイマール王国貨幣はヴェネーゼでは銅貨一枚が十円くらいの価値らしい。
報酬はだいたいで計算しても日本円だと三千万ほどと凄いが海賊退治や海賊のアジトの急襲にマーチスの問題などを考えると妥当な金額なのかもしれない。
ジョニーさんとオレ達がヴェネーゼの町を離れるのはそれから二日後のことだった。
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