第25話・戦闘機パイロット人助けをする
「旦那様。ボルトンが出港したようです」
あの忌々しいボルトンめ!
一々ワシのやることに楯突きおって!
この町を手中に収めれば、国の首根っこを掴むことが出来るのに!
だがそれも今日までだ。
船にはワシの息のかかった者を乗り込ませた。
後は中から舵を破壊させて、あの役立たずの海賊どもに襲わせるだけだ。
あいつさえ居なくなれば、この町でワシに逆らえる者など居なくなる。
いかに海賊どもが役立たずでも、コントロール出来ぬ船くらいは破壊出来よう。
問題は海賊どもが欲を出さずにボルトンを船ごと沈めるかだが、成功報酬にしたのだ。
そこまで馬鹿ではあるまい。
それに海賊どものアジトには、わざわざ冒険者ギルドでも腕利きの傭兵を送った。
あの馬鹿のことだ。海賊どもに万が一勝てば必ずアジトに行くだろうがそこで確実に終わりだ。
だが念には念を入れる必要があるか。
「おい! ボルトンの妻と娘を捕まえてこい!」
「しかし旦那様。あそこは手練れも多く」
「金はいくら掛かっても構わん。冒険者ギルドのギルド長も代官も抱き込んであるんだ!」
「分かりました。すぐに」
ボルトンの泣き所は妻と幼い娘だ。
あの凶悪な人相に似合わず妻は美しいし娘も可愛い。
万が一ボルトンが戻って来ても、人質にして始末したら高く売りさばいてやる。
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「あんちゃん着いたよ」
「おう、乗っけてもらって助かったぜ」
「そいつはお互い様だ。これ少ないが礼だ」
ゴルバニアを出たオレは、一人で海があるという南に向かって旅に出た。
パイロットスーツは目立つので、上から全身を隠せる安物のローブとリュックを買った。
そのまま食料を買って旅に出たんだけど、これがまあ最悪だった。
街道を南に行けばいいと言われたが、街道というよりは馬車の轍が辛うじてあるだけの獣道なんだ。
魔物どころか盗賊に襲われること二回に、親切そうに近付いてきた冒険者にも寝込みを一回襲われた。
よく考えてみれば一人で旅なんてしてる奴なんて居ないし、いいカモだと思われたらしい。
そしてオレは半月ほどかけて、港町だというヴェネーゼって町に着いた。
「おい、てめえら。その荷物はなんだ?」
到着したのは夜でその辺の宿屋でもと町を歩いていたんだが、到着早々に厄介事を見ちまった。
覆面をした5人組の怪しげな奴らが、明らかに人が入ってるだろう袋を抱えて目の前を通り過ぎようとしてやがる。
しかも相手はプロの工作員かなんかだ。
オレが声をかけると無言で攻撃してきやがる。
まだよく分からん魔法を使われると厄介なんで、オレは最初に臭え盗賊から奪った得物の剣を抜き、攻撃して来たやつを無視して人らしき荷物を抱えた奴から斬り捨てていく。
一人の奴が呪文を唱え出したが、そんなもん唱えたら殺してくれって言ってるようなもんだろうが。
「チッ。一人逃がしたか。おいアンタ大丈夫か?」
奴らの荷物は若い女とガキだった。
どうやら誘拐されかけたらしい。
「米ですか? 若い頃あちこち旅した頭なら何か知ってると思いますが」
若い女はガキの母親で商会のトップの人妻だった。
オレは二人が誘拐されたのを察知して追いかけてきた商会の連中と話をして、若い女の旦那が帰ってくるまで用心棒をすることにした。
何処にでもあるような話だが、ここの商会の連中と他の商会が揉めてるらしい。
どっちがいいか悪いか知らんが、小さなガキまで誘拐する奴は許せん。
どのみち米の情報を待つのにしばらくここに居なきゃいけねえし、商会の用心棒をして待ってるしかねえか。
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