第36話 薙原家(一)

 おゆらの自決騒動の後、奏は隣の部屋に移った。

 血塗れの部屋で寝る度胸はない。

 おゆらは着替えの為、別の部屋に移動している。彼女が身を清めて、新しい装束に着替えた後、改めて話を聞く事になった。

 おゆらが着替えを終えるまでの間、奏は一人で黙考していた。

 怖かった。

 身の毛が弥立よだつほど怖かった。

 血溜まりに倒れ伏したおゆらの姿が、眼に焼きついて離れない。家族を失う恐ろしさに背筋が震えた。


 とにかくおゆらさんが無事で良かった……


 奏は壁を眺めながら、大きく息を吐いた。

 これ以上、死人を増やしたいわけではない。

 己の意志で決断する為に、真実が知りたいだけだ。


「お待たせしました。巫女装束のおゆらです」


 主君の苦悩を気にも留めず、おゆらは木戸を開けた。

 蛇孕神社の巫女から白衣と朱袴を借りてきたのだろう。巫女装束に着替えたおゆらが廊下で端座し、優雅な仕草で入室する。

 おゆらは足のない折敷を持ち、奏の前に腰を下ろした。

 折敷の上には、黒漆塗りの湯桶ゆとうと年代物の湯呑。湯桶とは、注ぎ口と柄がついた飲料容器である。


「どうですか? 似合いますか?」

「普段着の次に似合うよ」

「……それは『似合わない』という意味ですか?」

「おゆらさんの所為で、御世辞を言う気分になれないんだよ」

「うふふっ。肯綮こうけいあた剴切がいせつな御意見です」


 おゆらは微笑を零しながら、湯桶を白湯を注ぐ。


「白湯をお持ちしました。暖かい物で喉を潤せば、御心も落ち着くかと」

「ありがとう」


 奏は湯呑を受け取り、素直に礼を言った。

 散々に泣きはらしたばかりなので、酷く喉が渇いていた。ぬるめの白湯さゆを一気に飲み干すと、ようやく気持ちが落ち着いた。


「もう一杯如何ですか?」

「いや。それよりおゆらさんの話を聞きたい」

「質問を質問で返す無礼をお許しください。奏様は、帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマス様や符条様から何を吹き込まれたのですか?」

「吹き込む? 二人が僕を騙したというの?」

「滅相もない事。然れど帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマス様と符条様が、奏様に何を伝えたのか……本当に私にも分からないのです」

「ヒトデ婆から聞いてないの?」

「私が尋ねても、仔細を打ち明けてくれないのです。おそらく薙原家の現状を楽しんでいるのでしょう。元より世捨て人の如き御仁。信を置く事はできません」

「マリア姉は?」

「私如きが无巫女アンラみこ様にお伺いを立てるなど畏れ多い事です。ゆえに奏様より聞く他ないと心得ておりました」

「僕が聞いたのは……薙原家の女性は、人を喰う妖怪で妖術を使う。僕と母上が帰郷してから、年寄衆と中老衆の対立が激化。二つの派閥争いの間で若い娘達が暗躍。薙原家の内訌が収束できなくなり、年寄衆と若い娘達が謀叛を起こした。結果は、年寄衆と若い娘達の勝利。先代当主や中老衆や女中衆は粛清され、二年前の火災も謀叛が原因。その後の権力争いの末に、若年のおゆらさんが下克上を成し遂げた。薙原家は、師府シフの王を手放す気はない。僕とマリア姉を結びつけ、アンラの予言を成就させようとしている。その為におゆらさんは、僕や常盤の記憶を書き換えていた。他には……僕が秀吉公の御落胤とか。義元左文字が本物とか。酷い話ばかりさ」


 帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマスや符条から聞いた話を思い返し、奏は眉を顰めて言う。


「なんと申しますか……断片的な情報ばかりですね」


「朧さんが生きるか死ぬかの瀬戸際で、僕も混乱していたんだ。正直、今でも狐に化かされたような気分だよ」


 何も知らない奏が混乱するのも当然だろう。

 十日前の夜。

 朧が毒に侵された時、マリアは朧の血を舐めて、身体の中で解毒剤を精製。傷口に人差し指を突き立て、朧の身体に解毒剤を注入した。

 朧の痙攣が治まると、マリアは虚空に向かい、「ヒトデ婆、渡辺朧の負傷を癒やしなさい」と命令。

 奏が不思議そうに周囲を見回すと、脈絡もなく「ぞえぞえ~」という奇声が響き、一瞬で朧の怪我が完治した。

 異常事態の連続で、奏も理解が追いつかない。

 マリアに説明を求めても、「おゆらから聞いてないの?」と問い返され、奏が返答に窮する始末。それでも執拗に問い詰めたが――


『奏ふうに説明すると、人類教導機関じんるいきょうどうきかん――『大地球共栄圏グローバリズム』が定めた運命に翻弄され、因果律から外れた奏を救うべく、人類教導機関――『大地球共栄圏グローバリズム』に叛逆を決意。人類教導機関――『大地球共栄圏グローバリズム』から放たれた刺客を退けた私は、常世とこよ現世うつしよを繋ぐ異次元――『幽玄界オサレかい』を制圧。『解脱者エニウェアズ』を粛清し、因果律の調整に成功。こうして二人は、末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」


 奏は全く理解できなかった。


「マリア姉の説明は、漢文の故実書より難しい。先生に話を訊くわけにもいかない。結局、おゆらさんに訊くしかないんだよね」

「主君を欺いてきた仇は、恩にて報じなければなりません。奏様の質問には、誠意を以てお答えします」


 早速主君に嘘をつくと、おゆらは唇に指を当てた。


「……そうですね。先ずは現状の確認から済ませましょう。奏様の御下知に従い、朧様を侍に取り立てました」

「粗略な扱いはしてないよね?」

「勿論です。朧様は二度も奏様を助けた御仁。主君の恩人に相応しい待遇を用意したつもりです」

「そうか……良かった」


 奏は頬を緩めた。

 嘘である。

 本当は借銭で雁字搦めにしているのだが、奏に教える必要はなかろう。


「ヒトデ婆の眷属に関しては、我慢して頂くしかありません。ヒトデ婆の眷属は、一瞬で奏様の怪我を癒やします。加えてヒトデ婆の眷属は、他の者に気取られないように隠れております。奏様が気にする必要はありません」

「気にするなと言われても……着物に蚤をつけて歩きたくないよ」

「日々の暮らしに障りはありません。全ては奏様の身を守る為です」

「僕の身を守る為? 僕を監視する為だろ?」

「奏様の安全こそ第一義。奏様の監視役は、ヒトデ婆の他にもおります」

「……」


 おゆらの答えを聞いて、奏は沈思黙考する。

 奏の想像通りだ。

 ヒトデ婆の他にも、複数の監視役を揃えている。おそらく奏の護衛を任された家人であろう。それ以外にも、多くの女中衆が奏の言動を監視している筈だ。

 過保護を超える用心深さに、奏は心の中で舌を巻いた。


「猿頭山の隧道は、我々の手で塞ぐ予定です。帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマス様の裏切りにより、隠し通路の存在が露見してしまいました。手立てを講じるのであれば、早い方が良いかと」

「それもおゆらさんに任せるよ」


 疑念を悟られないように、奏は落ち着いた様子で答えた。


「やっぱりもう一杯貰えるかな?」

「どうぞ」


 おゆらが湯桶を傾けて、湯呑に白湯を注ぐ。

 今度は喉を湿らせるように、少しずつ口に含んだ。


「それでは御話を続けます」


 奏の様子を確認し、おゆらは穏やかに話を進める。


「おそらく奏様は、御自身の心の在り方に不安を抱いているのではありませんか? 今も私が奏様の精神を操り、思い通りに誘導していると」

「違うの?」

「奏様の精神に打ち込んだ楔は二つ。一つは、二年前の火災に疑念を抱かない事。もう一つは帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマス様の言動で御心が乱された時、特定の記憶を思い出す事。どちらも解除しております」

「……」


 特定の記憶を思い出すとは、帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマスの話を聞いていた時、『帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマスが出てくる夢を見た』という記憶を思い出す事だ。


「嘘ではありません。事実、奏様は二年前の出来事に関心を示しております」

「……まあ、そうだね」


 一応、おゆらの言動に納得する。

 確かに傀儡の如く操られていたら、現状に疑念を抱く事もなく、おゆらを問い詰めようとも思わなかった。


帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマス様から聞いていると思いますが……私の妖術を使えば、奏様を傀儡の如く操る事もできます(真実)。然し奏様の精神を支配するなど、私には耐えられませんでした(大嘘)。ゆえに『毒蛾繚乱どくがりょうらん』の強制力を弱めたのです(真実)」


 おゆらは虚実を交えて、ぺらぺらと語る。


「だから帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマスさんの話を聞いた時、僕が動揺したと言いたいの?」

「左様です。加えて『毒蛾繚乱どくがりょうらん』に強制力を持たせてしまうと、奏様の脳に予期せぬ負担が掛かります」

「例えば?」

「そうですね……例えば、奏様が桃を柿だと思い込むように、『毒蛾繚乱どくがりょうらん』を発動させたとします。奏様は桃を手に取りながら、熟れた柿だと思い込む。偖も偖も此の時、私が柿を持ち込むと、奏様は柿を何と思い込むでしょう?」

「桃じゃないの?」

「ぶぶー。不正解です。正解は、私にも分かりません」


 豊かな胸の前で両手を交差させ、おゆらは嬉しそうに答えた。


「人間の認識や思考は、記憶や状況に応じて如何様にも変わります。相手の思考を読み取る妖術でも使わない限り、術者にも認識の変化を想定できません。極端な例えになりますが、桃を焙烙玉と思い込むと、大変な事になります。庭の木に焙烙玉が生えるなんて……奏様は心の病と疑うでしょう」

「それは怖いね」

「とても恐ろしい事です。それゆえ、認識に齟齬が生じた場合……他人から『桃は桃』と指摘された場合、精神操作から解放されるように設定しております」


 つまり……奏が口を挟む。


「僕が二年前の火災に関心を抱かないように、みんなで示し合わせていたのか……」

「それは私の――」

「独断じゃないよね。先生も僕に教えてくれなかった」

「……」

「別にみんなを責めているわけじゃないんだ。なんとなく理由も分かるから。記憶の改竄も同じ手法だよね?」

「左様です。然れど一度改竄した記憶は、二度と元に戻りません」

「……」


 冷たい沈黙が室内を覆い隠す。


「私を恨みますか?」

「まさか。おゆらさんの立場を考えれば、仕方のない事だと思う。御家を守る為に、憎まれ役を引き受けたわけだ……」


 秀麗な面差しに悲嘆を滲ませ、己を納得させるように呟いた。

 物憂げな表情を貼りつけたおゆらは、主君の心理状態を推察する。


 あらあら。

 激情に身を任せるかと思いきや、悲嘆に暮れる道を選びますか。あまり奏様の脳に負担を掛けたくありません。

 他の楔も抜いておきましょう。


 おゆらは『毒蛾繚乱どくがりょうらん』の危険性を承知したうえで、奏の精神に二つ以上の楔を打ち込んでいた。


 一、自分から隷蟻山に近づかない。

 一、自分から難民に興味を示さない。

 一、自分から蛇孕村の百姓に近づかない。

 一、本家屋敷と蛇孕神社を行き来しても、寄り道をしようと考えない。

 一、蛇孕村の通貨について関心を示さない。

 一、蛇孕村の供給能力の高さに疑念を抱かない。

 一、薙原家に高転びの危惧を抱かない。

 一、『三好経世論』に関する事柄を思い出さない。


 他にも複数の楔を打ち込み、奏の思考や行動を縛りつけていたのだ。加えて精神操作が解除されないように、細心の注意を払いながら、奏の行動を監視してきた。

 それも今日で終わりだ。

 朧を薙原家に迎え入れた事で、不確定要素が一気に増えた。他人の口から聞き出し、再び疑念を持たれるより、この場で楔を外した方がよかろう。

 『毒蛾繚乱どくがりょうらん』で操られた者は、他人から認識の齟齬を指摘されない限り、自動的に精神操作が解除した事すら気づかない。

 即ち朧の言動を抑制すれば、今後も奏の思考を誘導できる。


「私の役目は、奏様の御心に安寧を取り戻す事。加えて奏様の誤解を解く事です」


 落ち込む奏を気遣い、おゆらが話を進めてくる。


「二年前の政変は、自分に責任があるのではないか。奏様を守る為に、无巫女アンラみこ様が謀叛を起こしたのではないか。左様な心得違いは、正さなくてはなりません」

「心得違い?」

帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマス様は、薙原家の諜報を統括する田中家の前当主。己に都合の良い事実を突きつけ、奏様を思い通りに誘導するなど容易い事。帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマス様の思惑に乗らないでください。二年前の政変は、起こるべくして起きたのです。誰にも防ぎようがありませんでした」

「でも年寄衆が謀叛を起こしたのは、御先代が僕を内府様に差し出そうとしたからだ。その所為で御先代も中老衆も……人質の女中衆まで殺された」

「仰る通りです。然し政変を起こした年寄衆が、予言の成就という大義名分を求めていたのも事実です」

「?」


 奏は首を傾げた。


帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマス様は話しておりませんでしたか? 年寄衆が政変を望んだ理由は、御先代の専横に対する不満です。然し年寄衆が決起する為には、相応の大義名分が必要となります。アンラの予言を成就させるという大義。无巫女アンラみこ様の許婚を守るという大義。薙原家の政を在るべき姿に復すという大義。全ては奏様の与り知らぬ処で、年寄衆が奏様の名を利用していたのです」

「マリア姉は?」

「……」

「マリア姉が、年寄衆に利用されるわけがない。僕を蛇孕村の外に出さない為に、年寄衆や若い娘達を利用したんじゃないの? 謀叛の首謀者は、マリア姉じゃないの? 僕を守る為に、おゆらさんは下克上を起こしたんじゃないの?」

「奏様……残念な事ですが、乱世は続いております」


 おゆらは沈痛な面持ちで、奏の詰問を遮った。


「秀吉公が惣無事令そうぶじれいを発布しても、関ヶ原合戦が始まれば、諸大名は領土拡張に乗り出しました。天下静謐など二の次。乱世を生き抜く為には、止むを得ない事なのです」

「それでも子供が親を殺めるなんて――」

法性院信玄ほうしょういんしんげんは、己が意に背く嫡男を謀殺しました」

「……」

「内府も家臣団の分裂を防ぐ為、正室と嫡男を処断しております。誰も彼もが争い続ける乱世に於いて、御家を守り抜く為には、家族を処断するほどの覚悟が必要なのです。ましてや人喰いの妖怪を束ねる為には、牧伯ぼくはくを超える器量を示さなければなりません。无巫女アンラみこ様が立ち上がらなければ、今でも薙原家は内訌を続けていたでしょう」

「……」

「無論、私如きが无巫女アンラみこ様の御心を推し量る事などできません。私達からすれば、无巫女アンラみこ様の御言葉が奇異に聞こえるのも事実です。然し家中一同、无巫女アンラみこ様の武威に屈服したわけではありません。本家の当主に相応しい御方と確信したからこそ、我々も下克上に賛同したのです」

「……」

「統治者とは、誰よりも己を律する者です。己の感情すら律し得ない者に、民を率いる事などできません」

「おゆらさん……」

「私を疑うのは構いません。然し无巫女アンラみこ様を疑わないでください。无巫女アンラみこ様の心根は、奏様が一番御存知の筈。どうか无巫女アンラみこ様を信じてあげてください。无巫女アンラみこ様と奏様が疑心暗鬼に陥るなど、新たな御家騒動の火種となるだけです」

「……」


 奏は返す言葉が見当たらなかった。

 己を取り巻く環境に翻弄され、マリアの気持ちを考えようとしなかった。

 マリアは薙原家の内訌を沈める為に、親殺しという禁忌を犯したのだ。おそらく『ラブコメハーレム』や『十八禁のエロゲー』と呟いていたのも、奏に心配を掛けないように誤魔化していたのだろう。

 マリア姉が一番心を痛めていた筈なのに……許婚の僕が、マリア姉を信じなくてどうするんだ。

 己の不甲斐なさを恥じ入り、奏は目頭が熱くなった。


「どうか御身を責めないでください。奏様に落ち度はありません。私の浅慮が招いた事なのです」


 今にも泣き出しそうな奏に、おゆらは慈母の如く微笑みかけた。


「奏様には、平穏な暮らしを続けてほしかった。薙原家の秘密など知らず。我々が人喰いの妖怪など気づかず。无巫女アンラみこ様と安穏の道を歩まれる。斯様に願いながら、奏様の精神に楔を打ち込んできたのです」


 自らの罪を告白するように、おゆらは頭を垂れた。


「何度も言うけど、おゆらさんの所業を責めるつもりはない。だけど、これまで通りの生活もできない。僕は真実を知った。薙原家が隠してきた事実を知ったんだ。おゆらさんの気持ちも嬉しいけど、僕は薙原本家の血を引く者だ。マリア姉に迷惑を掛けない為にも、相応の覚悟が必要だと思う」


 奏は涙を堪えて言う。


「奏様……」


 おゆらは顔を上げて瞠目した。


「ありがとう。おゆらさんのお陰で色々と吹っ切れたよ」

「此方こそ奏様の成長に感服した次第です」


 おゆらは柔和な笑みを浮かべながら、


 この程度の詭弁で騙される奏様も可愛い……


 と邪淫に満ちた喜悦を感じていた。

 マリアが薙原家の行く末など、真面目に考える筈がない。二年前の謀叛も、母親の殺害も気に留めていないだろう。

 奏も平静を取り戻していれば、おゆらの虚言に気づいた筈だ。然し彼女の言動に惑わされ、魔女の囁きを受け入れてしまう。

 こうして一度破綻した疑似家族は、おゆらの手練手管で容易く修復される。


「ええと、質問を続けるね。僕の父親が秀吉公というのも事実なの?」

「それは……『おそらく』としか申せません」

「確証ないの!?」


 奏の声が裏返る。


「十年も前の出来事ですよ。私も本家の御屋敷で女中奉公を始めたばかり。ヒトデ婆は、薙原家の政に興味なし。他の分家衆も詳しくは知らないと思います。御先代の命を受けた伽耶様が、単身で大坂城に乗り込み、行方知れずとなられて……数年後に奏様を連れて帰郷された事しか聞かされておりません」

「そんな曖昧な……」

「我々も裏取りは行いました。義元左文字と秀吉公の朱印状は本物です。ゆえに奏様を豊臣家の御血筋と考えてもよいのではないかと……」


 天下を覆すほどの事実をさらりと言う。

 やはり現在の薙原家は、外界の権力争いに興味がないのだろう。先代当主が望んだ政と反対の道を進んでいる。


「御先代は、母上の消息を調べなかったの?」

「私の口からは申しあげにくいのですが――」

「事実上の追放。寧ろ間接的に自害を命じた」

「これ以上の追求は御容赦ください。私の立場上、お答えできません」

「約束したからね。無理強いはしないよ」


 奏は簡単に引き下がった。

 本家の直系の血を引く者。

 おそらくマリアでなければ、答えられない質問なのだろう。


アンラの予言がなければ、誰も僕を同胞はらからだと認めてくれなかっただろうね。でも予言の内容を鵜呑みにする事はできないよ」

「理由をお伺いしても?」

「有り体に言えば、アンラの予言に信憑性を感じない。確かに僕とマリア姉が生まれた時は、薙原家に衝撃を与えたと思う。初代の无巫女アンラみこの予言通り、アンラの女神と師府シフの王が生まれたと、信心深い年寄衆なら思い込むだろう。でも僕とマリア姉が結ばれたら、蛇の王国が建国されるとか。真のさま取り戻すとか。抽象的な話が続くだけで、何を伝えたいのか分からない。アンラの女神と師府シフの王が結ばれたら、天変地異でも起きるの? 外界の生類しょうるいは死に絶えて、蛇孕村の住民だけ助かるとか? 荒唐無稽な与太話だよ」

「……」

「それに使徒の真のさまが、予言の中で明言されていない。妖怪と人の間に、人が生まれる保障もない。永劫のさかえというも曖昧だ。薙原家が望む繁栄って何? いくらでも自由に解釈できると思うけど」

「やはり奏様もお気づきになりましたか。アンラの予言は、不確かな点が多いのです」


 奏の言葉を聞いたおゆらが、我が意を得たりと笑みを浮かべた。


「何しろ八百年前に書かれた古文書が頼り。我々の祖先が意図的に……或いは、恣意的に解釈する事もありました。特に『外界の生類しょうるいは死に絶え、蛇の王国建国さる』という文言は、年寄衆の間でも解釈は様々。然れど現在の薙原家は、人を産む事を予言の成就と心得ております。それこそが、永遠の弥栄に繋がると信じているからです」

「どうして?」

帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマス様は、若い娘達の話をしましたか?」

「……」


 質問に質問で返されて、奏は一瞬言葉に詰まった。


「薙原家の将来に絶望していたって。だから使徒が人を産んで、薙原家の呪縛から解放される事を望んだと」

「それが答えです。若い娘に限らず、頭の堅い年寄衆も薄々気づいていたのです。いつまでも人を喰らう妖怪が、外界と交わらずに生きていく事などできないと。一時隆盛を極めた武芸座は、日ノ本の妖怪を絶滅寸前まで追い込みました。本当は年寄衆も人を恐れていたのです」

「……」

「我々は无巫女アンラみこ様と奏様の間に、人が産まれる事を期待しております。奏様こそ薙原家の救い手。薙原家の利権を守る御方なのです」

「薙原家の利権?」

「左様です。年寄衆も中老衆も若い娘達も関係ありません。人喰いの妖怪であれば、是が非でも欲しがるものです。奏様なら答えを導き出せると思います」


 奏は難しい顔で黙考する。


「金銀? 所領? 餌贄えにえ? いや……違う。安全だ」

「御見事です。流石は奏様。正解は守護と安堵です」


 おゆらは両手を叩いて、奏を褒め称えた。


「薙原家の望みは、所領の防衛と利権の確保。外界には、我々に恨みを持つ者が数多おります。それでも薙原家の守護は、无巫女アンラみこ様の武威で担保できます。然して利権の確保は、極めて難しい……所詮、我々は人を喰らう妖怪。いずれ合戦いくさの世が終わり、日ノ本の治安が良くなれば、人喰いの妖怪と取引する者も少なくなりましょう。ゆえに年寄衆は、アンラの予言の成就に活路を見出しました。逆に中老衆は、際限なき利益の拡大を求めたのです」

「気位の高い年寄衆が、人に戻る事を望んだ……?」

「正確には、子孫が人に戻る事を承認した――ですね。その頃には、年寄衆も天寿を全うしております。无巫女アンラみこ様が頂点に立ち、旧来の秩序を取り戻す。利益が平等に分配され、分家衆の格差が解消されます。即ち年寄衆の家禄が増えます。加えて无巫女アンラみこ様が外敵から薙原家を守り、御家の権益を子孫に残せれば……と考えたのでしょう」

「そんな事の為に、娘や孫を殺したのか……」


 奏は沈痛な面持ちで呟く。


「当時は行儀見習いという名目で、本家の御屋敷に人質を集めておりました。年寄衆も中老衆も、己の立場は弁えていた筈です。当然、若い娘達も行儀見習いに出された時から、命を捨てる覚悟はしていたでしょう」

「だから蛇神の生贄に捧げると?」

「左様な事は……何故、斯様な疑いを持たれるのですか?」

「予言を成就させる為に、大勢の生贄が必要なんでしょ? 帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマスさんから聞いたよ。八年に及ぶ内部抗争で、二十名の同胞はらからが犠牲になったって。それでも蛇神に捧げる生贄が足りなかった。御先代と中老衆と当時の女中衆……一網打尽にすれば、生贄の数は三十六を超える。それが二年前の謀叛の真相なんじゃないの?」

无巫女アンラみこ様が、左様な仕打ちを望むと思いますか?」

「それは――」

「奏様の許婚は、生贄が増えたと喜ぶ御方ですか?」

「……」


 おゆらの悲痛な問い掛けに、奏は返答を窮した。

 奏の知る許婚は、犠牲者が増えて喜ぶような人物ではない。抑もマリアは、アンラの予言に興味もないだろう。


无巫女アンラみこ様は、外界から手練を集めておりました。現在の薙原本家の女中衆です。その中の一人が、无巫女アンラみこ様の御命に背き、御屋敷に火を放ちました。瞬く間に火は広がり、御先代も中老衆も人質の女中衆も帰らぬ人となりました」

「……」

「勿論、无巫女アンラみこ様の御命に背いた慮外者は、我々が責任を以て処断しました。无巫女アンラみこ様の意に沿わぬ者は、直ちに始末しなければなりません」


 おゆらは決然と言うが、奏は別の事を考えていた。

 蜥蜴の尻尾切り。

 おそらくマリアの集めた実働部隊が、勝手に焼き働きを行う可能性も考慮していたのだろう。謀叛の首謀者は、謀叛を起こす半年も前から、外界より改築用の木材や庭石を買い集めていた。

 首謀者の予想通り、本家屋敷に火を放つ者が現れたので、見懲みこらしを兼ねて蜥蜴の尻尾を処分。事態を沈静化させた後、粛々と本家屋敷を改修する。

 謀叛の首謀者は、絵に描いたような梟雄だ。


「……恐ろしいね」


 奏は恐怖を覚えて、ぽつりと呟いた。


「痛ましい不幸が続き、哀しい家中争いが起こり、多くの同胞はらからを失いました。然し我々には、奏様という希望があります。恐ろしくはありません」


 おゆらが決然と言う。


「――」


 この場でおゆらを問い詰めても、虚言で言い逃れるだけだろう。決定的な証拠を押さえなければ、彼女を掣肘せいちゅうする術がない。


「確かに誰が僕の父親だろうと、今の薙原家には関係ないね」

「たとえ奏様が秀吉公の御落胤でも、我々は身命を賭して御守りします。奏様も危うきに近寄らず、己の身を第一にお考えください。それが――」

「御家の為なんだよね」

无巫女アンラみこ様と奏様の為です」

「……その話は、また今度にしよう」


 堂々巡りになりそうなので、奏も強引に話を打ち切った。

 彼女の危うさに気づきながらも、奏はおゆらを重用していた。おゆらには、利己的な野心がないからだ。マリアや奏に忠義を尽くし、薙原家を第一に考えている。

 本家の女中頭に選ばれても、奢侈しゃしに溺れる事もない。豪華な着物や調度を買い集めようとせず、本家屋敷の部屋住みで質素な暮らしを続けている。

 おゆらの言動に恐怖を感じる事もあるが、彼女の忠義に偽りはない。それにおゆらがいなくなると、薙原家の財政と所務が行き詰まる。

 危険だからという理由で、薙原家の政道から遠ざける事もできない。本当に煮ても焼いても食えない女だ。

 奏は黙考した後、現状の確認に話を戻す。


「先ず作州の牢人衆の事から考えよう。此方から手出し無用。暫く接触を避ける」

「すでに牢人衆の所在は突き止めております。此方から仕掛ければ、容易に殲滅できましょう。それでも手出し無用と?」

「そうだ。僕の首級が目当てなら、一度に全員で攻めてくる事はない。僕の首は一つしかないからね。仲間同士で手柄の奪い合いになる。おそらく小勢に分かれて、何度も蛇孕村に攻め込んでくるだろう。馬喰峠に手練の女中衆を揃えれば、十分に対処できる」


 奏は神妙な面持ちで、今後の方針を語る。


「時が経てば、他の仕官先を探すなり、小商いを始めるなり……別の生き方を選ぶ者も出てくる筈だ。当分は様子見だね」

「岩倉の如く、問答無用で太刀を抜く者は如何しましょう? 生け捕りに拘ると、此方の被害も甚大となります」

「可能な限り、穏便に済ませてほしい。身の危険を感じた場合に限り、牢人衆の殺傷を許可する。後は本多佐渡守だけど……」

「徳川家に関しては、私にお任せください。外界の対応は心得ております」

「念の為に訊くけど、これまでどういうふうに対応してきたの?」


 奏が恐る恐る尋ねると、おゆらは「うふふっ」と笑った。


「剣呑な事はしておりません。蛇孕村に伊賀者を送り込んでくるので、こそりと捕まえて情報を聞き出し、記憶を書き換えて江戸に戻すだけです。外界の権力者と事を構えても、我々に利益がありません」

関東御領かんとうごりょうに、人喰いの妖怪が独立集落を形成し、豊臣家の庶子まで保護してるんだ。薙原家の意志に関係なく、相手は手段を選ばないと思う」

「御懸念には及びません。関ヶ原合戦で東方についた見返りに、内府と不入の約定を交わしております」

「――」

「尤も奏様の存在は、内府も我々も公にできません。それゆえ、内府より言質を頂いております。内府曰く――徳川家及び譜代衆は、雅東がとう流三代目宗家の武勇に敬意を表し、豊臣奏殿に一切関与しない。どうか太刀を収めてほしい」

「マリア姉、内府様脅してるじゃん」


 一体、どこの祟り神の話をしているのか。

 おゆらの説明が、胡散臭い与太話に聞こえてきた。


「私の言に信を置くかどうかは、奏様の判断に委ねます。然れど徳川家が大軍を率いて、蛇孕村に攻めてくる事はありません。伊賀者を送り込むだけで精一杯。縦しんば、徳川家が総力戦を仕掛けてきても、无巫女アンラみこ様に敵いません」

「……幼い頃から強い強いと聞いてきたけど。マリア姉はどれくらい強いの? 実際にマリア姉が戦う処を見た事がないんだよね」


 おゆらは唇に指を当て、んーっと考え込む。


「そうですねえ。蛇孕村に籠もるのであれば、二十万の軍勢に囲まれても退けられます。江戸城をとすだけなら、瞬きをする前に終わるかと」

「へえ……凄いんだね」


 奏は乾いた声で感想を漏らす。

 おゆらはマリアに忠誠を誓う狂信者だ。

 マリアの武力を過剰に捉えているのだろう。

 然りとてマリアの強さを確認する為に、近隣の武士団と戦わせるなど論外だ。基本的にマリアは、現有戦力と考えるべきではない。超越者チートという武名も含めて、合戦を回避する抑止力と捉えるべきか。


伊達いだて少将みたいに、約定を反故にされる恐れはないの?」

「当家の顧客には、徳川家の武将も数多おります」

「……徳川家の家臣団は、薙原家から借りた銭で雁字搦め。挙句の果てに、譜代衆が表沙汰にできない醜聞も掴んでいると」

「左様に」


 薙原家らしい卑劣さというか、おゆらの用心深さがよく分かる。

 一旦、奏は思考を整理する。

 軍事的衝突は避けたいが、なんとか奏と薙原家を排除したい。

 それが本多正信の魂胆だ。

 黒田長政と手を結び、何も知らない作州の牢人衆を焚きつけ、奏の暗殺を謀る。没落した渡辺家の御家騒動に見せかけ、奏の首級を挙げれば僥倖。仮に失敗した処で、正信も長政も無関係を貫き通す。

 実に恐るべき策略である。

 然し裏を返せば、徳川家中に信頼できる者がいないのだ。

 おそらく譜代衆の中でも、薙原家に弱みを握られた者を把握できていないのだろう。それゆえ、外様の大名に協力を仰ぐ他なかった。


「僕(豊臣秀吉の庶子)の存在を知る者は多いのかな?」

「正確な人数は、私も把握しておりません。徳川家では、内府と佐渡守……他数名の重臣に限られている筈です。おそらく豊臣家の方が、奏様の存在を知る者は多いかと。然れど関ヶ原合戦で、豊臣家の中枢を担う奉行衆は、殆どが粛清されました。武断派諸将が知らされていたとは思えず……」


 おゆらが考え込んで言い淀む。


「そうなると、穏便に義元左文字を返還するのは……」

「難しい事になります。誰に渡しても、騒乱の火種となります」

「はあ……」


 項垂れた奏は、大きな溜息をついた。

 西軍で生き延びた大名家に渡せば、家康が謀叛の疑いを掛けて、その家を取り潰すだろう。最悪の場合、奏の存在を天下に広めかねない。

 武断派は問題外。

 豊臣政権の裁決を覆す為に、石田三成を襲撃した過激派である。義元左文字を与えた途端、何をしでかすか分からない。

 淀殿も同様。

 抑も奏の存在を知らない可能性がある。我が子が持つ義元左文字が偽物だと考えもしないだろう。無論、此方から淀殿に指摘する理由もない。


高台院こうだいいん様でもダメかな?」


 豊臣秀吉の正室――高台院は、秀吉の死後に政治を動かした事がない。

 淀殿と対立して家康に加担したとか、子飼いの武断派諸将を焚きつけたとか。悪い噂が絶えないが、根拠の乏しい誹謗中傷ばかりだ。


太閤御所たいこうごしょに伝手がありません。縦しんば、高台院に渡せたとしても、如水に奪われるだけかと」

「そうなの?」

「太閤御所は、合戦に備えた城ではありません。防御設備も警備体制も、京の寺院と変わりませんよ」

「もう内府様に渡してしまえば……余計に混乱を招くだけか」

「ですね」


 奏が諦観を込めて言うと、おゆらも軽く追従した。

 家康に義元左文字を渡した場合、徳川家は二者択一を迫られる。

 一つは奏を暗殺したうえで、義元左文字を外交の道具に使う。

 もう一つは超越者チートと秀吉の庶子を利用する。

 家康と正信は前者を選びたいのだろう。

 然し家中の大半は、関ヶ原合戦の再現を望んでいる。

 特に徳川別働隊三万八千は、関ヶ原合戦に遅参した。

 髀肉ひにくたんから復し、戦場で華々しい戦果を挙げ、汚名返上と所領拡大を目指す。武士ならば、当然の欲求である。

 彼らが奏の存在を知ればどうなるか?

 先ず超越者チートは、九州征伐の先鋒に立たされるだろう。

 関ヶ原合戦から一年近く経つが、未だに島津家は降伏していない。超越者チートが島津家に勝利すれば、薙原家は薩摩国に移封されよう。徳川家に服従しない勢力を討ち滅ぼし、関東の独立勢力を遠方に追いやる。

 次に徳川家が、奏を豊臣政権の後継者に推す。

 豊臣家の家督争いを激化させて、天下分け目の合戦に持ち込む。

 これで関ヶ原合戦の再現。

 血気に逸る徳川家臣団の願いも叶う。

 徳川家が勝てば、奏は関白に叙任される。

 そして数年後に謎の病死を遂げるのだ。

 世間知らずの奏でも思い浮かぶ事だ。


「他に安全な場所があれば、義元左文字を預けるんだけどなあ……」

「薙原家が義元左文字を手放しても、秀吉公の朱印状が残ります。此方は左文字と違い、偽物を作る事も容易です。仮に焼き捨てたとしても、如水は気にも留めないでしょう」

「はう……」

「私が義元左文字や秀吉公の朱印状を知り得たのは、薙原家で政変が起きた直後。すでに前田利家が遠行しており、天下の政道は混迷を極め、私如きの力ではどうする事もできず……奏様の安全を確保する為にも、当家で保管すべきと判断した次第です」

「暫く薙原家うちで預かるしかないか……」


 行き場のない刀と人生に活路を見出せない少年。


 僕の人生、これからどうなるんだ……


 一年半後に許婚と祝言を挙げ、二人の間に子供を作る。薙原本家の血筋を残した後、マリアと蛇孕村で平穏に暮らす。

 己の過去や二年前の謀叛を知らされても、奏は自分の考えを曲げるつもりはない。権力者の都合で振り回されるなど御免だ。


「義元左文字も重要ですが、それより大きな懸念があります」

「黒田如水……」


 前回の騒動の黒幕。

 当代随一の軍師であり、天下の覇権を狙う野心家。


「如水に関してはどうにもならない。これも保留だね」

「『薙原衆』を福岡に送る事もできますが?」

「それは絶対にダメ。情に流されてるわけじゃないよ。如水は帑亞翅碼璃万崇ドアシマリマスさんから薙原家の情報を得た筈だ。それでも僕を拐かそうとしたんだよ。余程の自信があるんだろうね。薙原家の報復を全く恐れていない。わざわざ虎穴に飛び込む必要はないよ」

「空城の計かもしれません」

「そこまで追い詰められてるのかなあ……」


 奏は両腕を組んで考え込む。


「悩めば悩むほど、如水の掌で踊らされているような気がする。やっぱりダメ」

「……理に適いませんが、奏様の御決断は良い方に当たります。喜んで御下知に従いましょう」

「そこまで持ち上げられても困るんだけど……まあ、僕に関しては、こんな処かな。後は臨機応変に対応しよう」


 燭台の炎が揺らめき、奏の相貌に陰影を作る。


「次は薙原家について知りたい」




 肯綮に中る剴切……物事の急所を巧く突く事。要点を巧みに探り当てる事。


 高転び……経済的な理由による自滅。債務不履行の事ではない。


 法性院信玄……武田信玄


 内府……内大臣。徳川家康。


 牧伯……大名諸侯


 守護……安全保障


 安堵……権利保障


 本多佐渡守……本多正信


 所務……所領の管理を行う事


 関東御料……徳川家の直轄領


 不入(不入の権)……治外法権。警察権・司法権・徴税権など、統治者の介入を拒否する権利。


 伊達少将……伊達政宗


 太閤御所……豊臣秀吉が生前に建てた館。現在は高台院の住居。


 髀肉の嘆……実力を発揮する機会を得られずに嘆く事

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