14「任されたんじゃね?」





「しかし、兄として放っておくわけには」

「兄だからこそしゃしゃりでてくるんじゃねえ! ほっとけぼけぇ!」

「その様子を見る限り私の心配は杞憂だったようですね。――しかし、由良夏樹くんは、宇宙一美人な小梅ちゃんと一緒に生活しているのに手を出さないんですね。……男の子としてそれでいいのかな?」

「いえ、あの、それはですね」

「ええぃ! 大きなお世話じゃ! つーか、知り合って数日でどうこうなるわけないじゃろう! 今はマブダチじゃ! それでええんじゃ!」


 ルシフェルは、あくまでも友情と言い張る小梅と、もじもじしてしまう夏樹から、手を出していない関係のようで安心したようだ。

 夏樹にとって小梅は美人すぎるのに、同性の友人のように接することができる気さくな存在だ。「え? なんすか、このお楽しみデート? 私の仕事中に? いーなー!」とちょっと拗ねている銀子も含めて、女性経験のない思春期の中学生が手を出そうと言うのなら、登山したことがない人がいきなり富士山を通り越してオリンポス山に挑むレベルだ。

 今は、友人で家族のような関係が心地よかった。

 それに、小梅も言ったがまだ出会って一週間も経っていない。慌てて急ぐ関係ではないだろう。


「まあいいでしょう。せっかくできた友人を数分後に手にかけずによかった」

「……物騒なことを考えていたなぁ、この人!」


 ルシフェルは妹に近づく男はすべて排除する気のようだった。

 夏樹はセーフのようだが、ルシフェルと万が一戦う可能性があると思うと、背筋に嫌な汗が伝う。


「夏樹くん、顔……笑っているっすよ」

「クソ兄貴と戦いたいって顔しておるぞ」

「……十四歳でしたよね? 私が大人気ないのはもちろんですが、こんな好戦的な中学生と初めて出会いました。基本的に、それなりに力がある人間なら私が目の前に立っただけでも怯えるのですが」


 銀子、小梅、そしてシスコン堕天使も、興味津々な笑顔を浮かべている夏樹にちょっと引き気味だった。

 夏樹は自分の顔を触ると、唇が吊り上がっていることに気づき慌てて隠す。


「……失礼しました。魔族の幹部がどのくらい強いのかちょっと気になりまして。敵意はありませんよ!」

「敵意がないことはわかっていますが……。ふむ。不躾ですが、夏樹くん。少しだけ『視て』もいいですか?」

「え? あ、どうぞ」

「では失礼しますね。どれどれ」


 夏樹がルシフェルに興味を持ったように、彼も夏樹に興味を持ったようだ。

 ルシフェルの左目に魔法陣が浮かんだ。

 しばらくルシフェルが「ふむ、おや」と夏樹を視ていると、次第に「あれ? えぇ?」と困惑する声を出し始めた。


「やべーっすよ。これ、絶対、夏樹くんのとんでもスペックにルシフェルさんがびっくりする未来しか見えねーっす!」

「やべーじゃろ! クソ兄貴に目をつけられたら、魔族にスカウトじゃぞ!」


 これからの展開に不安を抱いている銀子と小梅がどうしたものかと悩んでいると、ルシフェルの目から魔法陣が消えた。

 そして、汗を流し、青い顔をした彼は、引き攣った顔をしていた。


「すべてを観ることはできませんでしたが……単純な魔力だけなら、魔族の幹部連中にも匹敵します。あの、最近の中学生ってみんなこれほど規格外なんですか?」

「んなわけないじゃろう! 夏樹が規格外なだけじゃ!」

「で、ですよね。よかった。それにしても、これだから人間は怖い。ときどき、いるんです。こうやって私でも驚くような力を持つ人間が」


 ルシフェルは驚いたように、しかし、どこか楽しそうな顔をしていた。


「夏樹くん」

「はい?」

「君になら、小梅を託していいのかもしれません。これからも小梅をよろしくお願いします」







 〜〜あとがき〜〜

 嫁に、というわけじゃなりません(笑)

 さて、次回、ビッグネームの登場です!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る