8「かなり良い案なんじゃね?」
ブチ切れた都が虚空から霊刀を抜こうとしたのを察し、彼女の手に魔力をぶつけて阻んだ。そのまま彼女の背後に回って、「失礼します」と一言かけてから羽交い締めにする。
「どうどうどうどう、ステイステイステイステイ!」
「離してください! この不届き者を斬り捨てて、烏の餌にしてやります!」
「お姉さんのこと急に好きになりすぎぃ!」
「私は元からお姉ちゃんが大好きだったんです!」
感情が昂ったら我を忘れるのは相変わらずなようで、夏樹が止めていなければ、殺しこそしなくても都は明日香に飛び掛かっていただろう。
当の明日香は、自分が危機的状況に陥っていることなどつゆ知らず、ケラケラ笑っている。
「斬り捨てるとか、なにそれおもしろいんですけど。水無月さんって時代劇好きなの?」
「こ、殺す、この女殺す! 由良くん、雲海様を雲海様をお呼びください! 雲海様なら、お姉ちゃんがディスられたとわかれば、快感が激痛になるような呪いを施してくださるはずです!」
「うわー。なに、時代劇好きで、霊感あります系な人なんだ。引くわー」
「ちょ、お前も余計なことを言わないで、男子たちとのお楽しみ会にさっさといけよ!」
火に油を注ぐ明日香に、夏樹はもう勘弁してくれと思った。
「はーい。じゃあ、夏樹も絶対来てよね? もしかして、そこの変な女と関係があっても、私は気にしないから!」
明日香はにこやかに返事をして手を振ると、気分良さげに教室から去っていく。
これだけブチギレている都を前に、動揺も困惑もせず笑っていられる精神がすごいと素直に思ってしまった。
都は、近くにあった机を蹴り倒してから、ようやく冷静さを取り戻す。
ふー、ふー、と呼吸を繰り返し、息を整えている彼女をそっと離す。
「あのなにを言っても聞いてない感が疲れる。優斗や杏よりも面倒くさい。どうすれば対処できるんだ」
もう関わることさえ嫌だ、と疲れた顔をした夏樹に、
「簡単です」
呼吸を整えた都が提案をした。
「呪うのとかは駄目だよ。いや、別にいいんだけど、都さんの立場的によくないでしょ」
「申し訳ございませんでした。しかし、冷静さを取り戻した私はそんなことはしません。する必要もありません。あのような女など、もっと確実に対処する方法があります」
ごくり、と夏樹は唾を飲んだ。
「そ、それは?」
「先生にチクります」
「ええー?」
「男子といやらしいことをしている最中に先生が突撃すれば、言い逃れができないでしょう。ペナルティーも下るでしょうし、親にだって連絡がいきます。普通の親なら激怒するでしょう」
「それだあああああああああああああああああああああああああああ!」
夏樹は感心した。
都の言う通り、教師に密告すれば一発でアウトだ。
バスケ部男子たちとなにをするかなど、明日香の言動からよくわかった。ならば、教師にその場を発見させればいい。
学校の外のことならあまり口を出さない教師たちでも、学校の中で不純異性交遊をしていれば注意しなければならないだろう。
都が考えているように、大事にならずとも親に連絡はいくこと間違いない。
これはいける、と夏樹は頷いた。
「松島さん、あなたが悪いんですよ。地上に降臨した天使よりも天使なお姉ちゃんをディスったことを後悔すればいいんです。くけけけけけけけけけけけっ!」
「都さん、都さん。笑い方が邪悪。とても邪悪」
「くけけけけけけっ……おっと、失礼しました」
「今の都さんなら、いい友達になれそうだよ」
にやり、と悪い笑みを浮かべた夏樹と都はがっちり握手を交わしたのだった。
〜〜あとがき〜〜
明日香さん、終了のお知らせ。
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