6「後は知ったことではないんじゃね?」







「あいつの?」


 すでに優斗に関しての調査は終わっていると聞いていたのだが、なぜ今さらと首を傾げた夏樹に、都は補足するように続ける。


「と言っても、調査はほぼ終わっているんです」

「あ、そうなの?」

「はい。理由はわからないのですが、五日前に過去に三原優斗の調査に当たった霊能力者たちが彼とその場限りだったようですが肉体関係を持ってしまったと上に告白したそうです」

「なんでまた急に?」

「それはわかりません。三原優斗に手を出されていたのか、女性たちが彼に手を出したかまでは私にはわかりませんが、調査に不備があったことが認められました」


 どうやら優斗を調査するために近づいた女性たちは、優斗と一回限りではあったが肉体関係を持ってしまったそうだ。だが、まずいとわかっていたのだろう。なかったことにして、問題ないと院に報告した。

 しかし、なぜか五日前に突然、自白を始めたそうだ。

 罪の意識があったのか、他の理由があったのか。夏樹にしてみたら、不思議なこともあるものだ、と思うくらいだ。


「ていうか、本人たちはなんて言ってるの?」

「三原優斗が好みだったから手を出してみた……とのことです。それ以外はわかりませんし、もうわかりようがありません」

「どういうこと?」

「調査を担当した人間にはペナルティーが与えられました。霊力を破壊されたようです」

「それはまた、なんていうか」

「院は無駄にプライドが高いですから、調査員が三原優斗を舐めていた、軽んじていたのなら、まだよかったのですが……魅了された、されていないは不明としても。院の霊能力者としてふさわしくないと判断して即処分です。院は大きな組織ですが、他にも組織がないわけではないですので、外面を気にしたのでしょう」

「めんどくせ」


 本当です、と都は肩をすくめた。


「ここ数日で、もう一度調査員が調査をしたところ、女性に魅了を使っていることを確認できたそうです。力としては微弱ですが、力の重ね掛けができることと、肉体的に強い接触を……そのエッチ等をすると快感が大きいやら、三原優斗を魅力的に見せるなどあるようで」

「依存性が強いってこと?」

「こればかりはかかってみないとわかりませんが、自分から魅了にかかる人間はいませんので」

「だよね」

「ただ、一般人でも、霊能力者よりに近い……ざっくりですが、きっかけがあればこちらがわに足を突っ込むことができる潜在能力がある人間ほど彼の力を受けやすいと判断されています。ただし、霊能力的に抵抗ができれば大した力ではないようです」

「なんだろう、もやっとする。つまり、優斗と相性が良ければ魅了も良く効くし、相性が悪ければなーんも効かないしってこと?」

「それでいいと思います。そもそも力の制御をしていない人間の力なんてそんなものです。だからこそ、今まで危険視されていませんでしたし、少しくらい力があっても放置なんです。魅了も能力としてきちんと持っている人が本気で使えば、抵抗力のない人は殺人すら喜ぶでしょう。死ねと言われれば喜んで死にます。本来はそれほどなんです」

「つまり、優斗は雑魚でした、と」

「言い方は悪いですが、はい。ただ雑魚でも、被害者はいるでしょうから私が調べることになりました。もちろん、他の霊能力者と協力の上です」


 ただ、と彼女は続けた。


「被害者ってほどの被害者がいないんです。例えば、あのビ――いえ、松島さんは三原優斗に入れ込んでいますが、彼以外にも男子と関係があります。もともとそういう子だったとしか判断できません」

「だよねぇ」

「数人、やはり五日ほど前に体調を崩して休んでいる人もいますので、まだ全貌はわかっていませんが……ちょっと大変そうです」

「ケアとかはするの?」

「いえ、私たちはあくまで調査です。仮に力を使って無理やりや、証拠を残されていて脅されているのであれば、警察にいくように誘導します。私たちの存在は隠して、ですが」

「そっか。優斗に関しては?」

「すでに由良くんが三原優斗の封印をしちゃいましたよね? なら、もう放置です。今まで通りにしようとしてできなくておかしいと思えばそれでいいですし、気づかずに痛い目に遭うのも彼次第ですから」


 夏樹は賛成も反対もしない。

 優斗はもちろん、優斗が手を出した子たちにもさほど興味はないのだ。

 自分にさえ関わらなければ、それでいい。

 冷たいようだが、赤の他人のことをなんとかしようと思うほど善人ではない。


「現時点では、三原優斗と関係のある人はあまり良い素行の方ではないですね。遊び慣れた高校生、大学生、社会人。補導歴がある人もいます。三原優斗を良い遊び相手として扱っている人もいるそうです。女性たちにもわかるのでしょう。相手が遊びだとわかっているので、こっちも遊んでやろうと、一時的な快楽を求めて……嘆かわしいですが、珍しいことではないと思われます」

「優斗が逆に遊ばれているパターンもあるんだ」

「みたいですね。ここだけの話ですが、ひとつ上の先輩にサッカー部のマネージャーでとても人気だった方がいます」

「へぇ」

「……へぇって、その方は三年間連続でミスコン一位だったのですが……。実は、その方も体質的には、モテる方です。魅了の能力といいますか、魅了に近い体質を持った人ですね。でも、その方は悪いことはなにもしていません。院も、水無月家もノータッチです。彼女は幼い頃から相思相愛な彼氏と清い交際をしていますし、三原優斗にちょっかいを出されても無視していました。体質的に魅了に近い人はいるんです。しかし、悪さをする人間ばかりではないと言うことだけはわかってください」


 そうそう、と思い出したように都は付け加えた。


「由良くんも少し気をつけてくださいね」

「え? 俺?」

「三原優斗は由良くんを幼馴染みと公言していますし、綾川杏さんや、松島明日香さんもよく由良くんの名前を……決して良い意味ではありませんが口にしています。勘違いして、三原優斗の関係者だと思われる可能性がありますので」

「うん、わかった。なにかされそうになったら容赦なく――」

「違います! 一般人が突っかかってきても手加減してあげてほしいとお願いしたいのです!」

「えー」

「あの、本当に、土地神様を倒せるほどのお力で一般人に何かしたら、それこそ問題になってしまいますから」

「わかりましたー」

「由良くんも、三原優斗には関わりたくないでしょうから、今後はお任せください。調査し、必要なことはしておきますので、由良くんはいつも通りに生活していただければと。あくまでも、私が調査をすることをお伝えさせていただいただけですので」

「わかったよ。頑張ってね」

「ありがとうございます。では、教室に向かいましょう」


 今後、優斗はどうなるかわからないし、興味もないが、一登や家族に迷惑をかけないようにしてもらいたいと夏樹は思う。そして、脳裏から優斗のことを排除した。







 〜〜あとがき〜〜

 優斗くんいろいろやらかしていたので再調査。しかし、すでに夏樹くんが封印済みなので、被害者がいれば水無月家が。

 手を出されていた人の大半が、素行がよろしくない子でした。

 注意人物になったので、もう好き勝手はできないでしょう。

 優斗はこのくらいでとりあえず退場です。


 水無月都さん。姉妹仲を順調に修復中です。見守ってあげてください。




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