第109話 気を取り直して

「ところで、生徒会へは何のご用で?」


「ああ、それか? トーナメントの打ち合わせだよ。風紀委員会とバッティングしないように、日付を調整してもらったんだ。俺だけじゃない。部活動の大会や他の委員会も、できるだけかぶらないように日付を調整してもらっている」


 なるほど、生徒会執行部も、年に一度のイベントで忙しいという話だな。


「風紀委員としては、お祭り騒ぎに浮かれて、問題を起こす生徒がいないように、自治するのが役目さ。もっとも、あまりお役に立ててはいないが……」


 職務怠慢しょくむたいまんを指摘された手前、ツバメ先輩が気まずそうに笑った。


「だから、本当に楽しみにしているよ」


「?」


「青虎、おまえとの勝負だ。ヒサヒトに勝ったというだけでも、おもしろいやつだと思っていたが、こうして話をして確信が持てた。おまえとはぜひ、手合わせをしたい」


「光栄です。こちらこそ。胸を借りるつもりで挑ませてもらいます」


「そう硬くなるなよ……硬いのはアスカの石頭だけで十分だ」


「はあ!? なんだってー!? 今、私を侮辱したね!? ツバメくん!?」


「ふんっ、こんなふうにな」


 ツバメ先輩が鼻で笑って、委員会の席に座った。

 立ち話は終わりだという意思表示だろう。

 積もる仕事があるに違いない。


 これ以上、お邪魔しないように、俺たちは怒るアスカ先輩を連れて、退散した。

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