第108話 風紀委員にならないか?

「青虎、おまえ、風紀委員にならないか?」


 やぶからぼうに、ツバメ先輩がそんなことを言った。


 意図が分からず、俺が反応に困っていると、ツバメ先輩は続けて言う。


「おまえの言う通り、この学園の風紀は最悪でな。俺たち風紀委員も、生徒会も……言っていいのか迷うが、学園長も、悩みの種をどうにかしたいと常々思っているんだ」


「だろうと思います」


「青虎、おまえのようにある程度の力があって、学園の派閥に属さない者はめずらしい。できればおまえにも、風紀委員の仕事を手伝ってほしいと思う」


 風紀委員、夜神青虎やがみあおとら爆誕ばくたんの予感である。

 しかし俺の友人たち、とりわけレイジとアスカ先輩がいい顔をしてくれない。


「刀持って不良をしばく風紀委員って、いつの時代の警官隊だよ……明治か」


「でもちょっとカッコイイですよね、大昔のロマンです」


「いやあ……俺は陽花ちゃんの良識をうたがうぜ……」


「ダメだよ! ダメダメ! 青虎くんは将棋同好会の次期会長だからね!」


「同好会の活動と委員会は両立できると思うが……ふっ、まあ、いいさ」


 アスカ先輩に文句を言われたツバメ先輩が、困った表情で苦く笑った。

 ところで、俺はいつの間に、同好会の次期会長になったんだ? わからん。


「気が向いたころに、考えてみてくれ」


 よろこんで、と、俺はツバメ先輩に受け答えた。


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