第105話 またおまえか

「またおまえか、とは、レディに向かってごあいさつね、ツバメくん」


「たわけ、俺はおまえを淑女レディだと思っていない。そう思っているのは、おまえ自身と、あの物好きな生徒会長ヒサヒトだけだ……」


 勝手知ったる、という表現が適切だろうか。

 堂々しているアスカ先輩に対して、風紀委員長は気だるそうにため息をついた。


「た、ため息をつかれたー! 屈辱だわ! ぷんすかぷーん!」


「子どもかおまえは。そんなだからヒサヒトに見向きされないんだろうが」


「っ~!! 言ってはならないことを! 乙女のハートにいばらのトゲを突き刺して笑うなんて! ツバメくんこそ、そんなだから万年彼女がいないのよ!」


 アスカ先輩がぷんすかぷんとキレた。「かわゆうございます」とレイジが褒めた。

 しかし、弱点を知っているというわりには、手のひらで転がされている気がする。


「おふたりは知り合いなんですか?」


「“これ”とヒサヒトは、俺と同じ学区の小学校で、幼馴染だ。それだけの関係だ」


「冷たいやーつー! あっかんべー!」


「ところで、鳳凰院アスカ、おまえはなにをしに委員会に来たんだ……?」


「宣戦布告よ! 第二回戦の相手は、知っているはずね!」


 そこで本題を思い出したように、アスカ先輩がキリッとする。


「わが将棋同好会の星、夜神青虎やがみあおとらくんが、あなたを倒すのよ!」


 俺を内輪の喧嘩ネタに使うのはやめてくれと、心底、思った。


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