第91話 第一駐屯地(6)

 どシーン!

 無様に尻もちをつくジャック。

「いてぇぇぇぇぇえぇ!」

 それを見た奴隷兵たちは、反射的に噴き出してしまった。

 プププ……

「てめえら! 今、笑いやがったか!」

 起き上がろうとするジャック。

 だが、そんなジャックが、またもやひっくり返った!

 どシーン!

 今度はどうやら後頭部をしたたかに打ち付けてしまったようである。

 もう、その姿に笑いをこらえきれない奴隷兵たちは、そろいもそろって大笑い!

 わはははははは!


 というのもジャックの足元には大量のカマキガルの魔血が流れ出して水たまりを作っていたのである。

 しかも、その魔血に混じって臓物までも転がっている。

 そんな水たまりに、ジャックはスキップを踏みながら突っ込んだのだ。

 そりゃ、簡単にすべって転びますわ……

 しかも、それに気づかずに勢いよく立ち上がったものだから、さらにツルんと!

 もう……バカですねぇ……


 どうやら、その大量の魔血は、すぐそばにそびえる大人ほどの小高い山の裾から流れ出しているようだった。

 って、こんなところに山なんてあったっけ?

 そう、それはカマキガルのむくろが積み上がった山なのだ。

 えっ? カマキガルの肉片って、広範囲に飛び散って回収不能じゃなかったの?


 ということで、少しだけ時間を戻そう!

 ドラえ○も~ん! たすけてぇ~

 仕方ないなぁ~ タイムぴロシキ~♪

 ピコピコピコ太郎!


 ということで……ちょっと、時間を戻しすぎたけど、まぁいいかぁ!


「じゃぁ~、頼んだよぉ~」

 ジャックはそう言い残すと、軽やかなステップで離れていった。

 ――さぁて、お仕置きは何にするべかなぁ~ 根性やき? 目玉の串刺し? 


 それを確認したビン子は、すぐさまタカトに耳打ちする。

「タカト! 集めるって言っても、どうするのよ! コレ! 絶対に無理だよ……」

 すでにビン子の声は涙声。


 だが、タカトは高らかに笑う。

「心配するな! ビン子! 俺を誰だと思っている!」

「アホのタカト……」

「ちがわい!」

「じゃぁ……エロエロ大王のタカト?」

「そう! 俺はアフォ! A.F.Oオール フォー ワン! この世の究極悪にしてエロエロ大王になる男やぁぁぁぁぁ! って、違わぁァァァァイ!」

「じゃあ、何なのよ!」

「ふっ! 俺か! 俺はこの国一くにいちの融合加工職人を目指す天才様よ!」

「はぁぁ?」

 と、言うとタカトは自分のカバンの中から、ウチワといろいろな道具を取り出して、その場にあぐらをかいて座り込んでしまった。


 その様子を肩越しに覗き込むビン子。

「それって……スカートまくりま扇じゃない……どうするの?」

「実はこれには、裏モードが有ってだな……」

「裏モード?」

「あぁ、これだけは使いたくなかったのだが……この際、仕方ない……」

「一体、どんなモードなのよ?」

「ジンベイザメモードと言ってな……干してある無数の洗濯物の中から、若い女性のパンツだけを吸い取り回収するという、超危険なモードなんだ」

 ビシっ!

 と、タカトが言い終わる前に、ビン子のハリセンがタカトの後頭部にめり込んでいた。

「バカなの! それは泥棒! もう犯罪よ! 犯罪!」

「だ・か・ら! 俺は使いたくなかったんだよ!」

 頭をこすりながら、タカトは邪魔するなよとビン子を睨み付ける。


「だいたい、この門外のフィールドに女の人のパンツがどこに転がっているんだよ! 言ってみろ!」

 ビン子は咄嗟に自分のスカートを押さえつけた。

「……ビン子……お前のパンツなんて見飽きたわ! 大体いつも、俺のベッドの上で太ももむき出しで寝ているだろうが! このバカチンが!」

「だれがチンよ! このバカ! バカ! バカ! バカタカトぉぉぉ!」

 ビシっ! ビシっ! ビシっ!

 顔を真っ赤にしたビン子が、これでもかとタカトの頭を叩きまくっていた。

 ほどなくして顔面をブツブツのおはぎのように膨らませたタカトがボソリ……

「気はすんだか……俺は、これから、このスカートまくりま扇を改造せにゃならん……邪魔するなよ……」

 と、言い残すと地面の上に置いたスカートまくりま扇をいじくりだした。


 5分後……


「できたぁぁぁぁ!」

 タカトの嬉しそうな声が乾いた空に響いた。

「意外と早かったのね」

 せっせとカマキガルの亡骸を集めているビン子は既に汗びっしょり。

「バカだなぁ~ビン子、そんなに汗まみれになってwww」

 腰に手を当てて偉そうに笑うタカトは、ウチワを天にかざす。

「聞いて驚け! これこそスカートまくりま扇ジンベイザメモードRXだぁぁぁぁ!」

 RXってなんやねん! 仮面ライダーブラックか! それとも マツダの車かよ!

 いやいや勘違いしてもらっては困る!

 これは、R指定の意味なのだ!

 R15指定?

 まぁ、本来の用途であれば確実にR18指定は確実なのだが、すでに魔改造してしまった今では対象年齢が不明となってしまった。

 ということで、対象年齢不明「X」と言うわけである!

 当然、ビン子はそんなくだらない説明を聞く気もなかった。

 ――どうせ……また、くだらないモノでしょう……

 ならば、今は自分ができるだけ多くのカマキガルの残骸を集めなければ。

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