第27話 黒の魔装騎兵と赤の魔装騎兵(11)
――仕方ない……ココは小汚い死体にボディタッチでもして、献身的なところをアピールしてみるか。
セレスティーノは、嫌々オッサンの手を取った。
――ええい……触ったついでだ……
これでも用心深いセレスティーノ(これもマジ!)。
オッサンの確実な死を目だけでなく手の感触でも確かめようと、ついに脈までみはじめたのだ。
――ヨシ! 脈はない!
このブサイクは死んだ! 死によったぁwww
あとは、こんなブサイクな死体でも愛していると叫んでおけば、周りの女たちのことだ、自分もきっと愛されているにちがいないと勘違いして、発情期の雌犬のように自らケツを振りだすことだろう。
そんなセレスティーノは女たちにワザとアピールするかのようにウソ泣きを始めたのだ。
「しくしく……死んじゃダメだよ……戻っておいで……僕の大切なハニー……」
しめしめ。ニヒヒ! これで、代わりの女! GETだぜ!
だが、突然、地面に転がるオッサンの顔がクルリと回った。
膨れ上がった目でジーっとセレスティーノの目を見つめ上げているではないか。
しかも、その頬には滴り落ちる血とは別に、まるで少女のように真っ赤な紅がさしていた。
――なに⁉ 生きていた?
驚くセレスティーノは声も出ない。
――そんなバカな‼ 奴は確実に死んでいたはず……
先ほどまでのウソ泣きで流していた涙はピタリと止まり、額からはいやな脂汗が流れ出していた。
もしかして、このピンクのオッサン、ゾンビのように人魔にでもなったのだろうか?
いや、その見上げる瞳は緑色ではなく黒い色のままだった。
しかも、大きく腫れた顔にひときわキラキラと輝いているではないか。
ということは、いまだに人間……のままのようなのだ……
「ハイ、戻ってきまじだ❤」
ピンクのオッサンは嬉しそうにニコりと微笑んだ。
どうやらセレスティーノが感じたあの一抹の不安は、このピンクのオッサンのゴキブリ並みの強い生存本能だったのだ。
おら! おら! おら!
地獄の底で鬼どもと激しいバトルを繰り広げていたピンクのオッサン。
「俺を地下闘技場チャンピオンのゴンカレエ=バーモンド=カラクチニコフと知っての狼藉か! 殺すぞ! コラ!」
ひたすら土下座をする鬼の頭を足で踏みつけていたオッサンの耳元にセレスティーノの愛のささやきが届いたのである。
戻っておいで……僕の大切なハニー……
ドキューン❤
瞬間、目がハートになった。
それは、片思いと思っていた恋。
決して叶わないと思っていた恋。
近づきたいけど届かない……だって……重い女と思われたくなかったの……
だから……そんなアナタをそっと見つめるだけでいいと思っていたわ……
だけど! だけど! その恋は今! 明らかに相思相愛の花を咲かせたの❤
「ゼレズディーノさま! 今ずぐ、カレエーナ=アマ子があなたの元に参りまず!」
そう、愛の力は無限大!
足蹴にする半殺しの鬼どもを全殺しにすることもなくそのままに、三途の川にドボンと飛び込むとジャブジャブとバタフライで泳いで戻ってきたのだ。
今頃、ビビったエンマ大王も半泣きなりながら閻魔帳を書き直していることだろう。
この男、逃亡犯につきトリプル・ルッツルツルの刑に処す!
――やはり、将来の不安は絶っておくべきか?
セレスティーノは考えた。
しかし、とどめとばかりに殴りつけるには、周りの女たちの目が多すぎる。
さすがにそれではただの殺人鬼。
イケメンポイントがマイナスにまで落ち込んでしまいかねない。
――ダメだ……それはダメだ……
というか、魔装装甲をまといし全力の拳でもつぶれんこのオッサンを、いまの学生服のセレスティーノの拳で砕けるとは到底思えない。
――なんやねん! このピンクのオッサン! 魔物以上にタフすぎるやないか!
そんな絶望するセレスティーノの背後では、アホな騒ぎに鶏蜘蛛が苛立って振り返ろうとしていた。
だがしかし、鶏蜘蛛の首は、徐々に徐々にと滑り落ちていく。
そして遂に、魔血が噴水のごとく噴き出す体から離れて地面の上へとポトリと落ちて転がってしまった。
……って、これだけ?
うん! これだけ!
どんだけぇ~♪
IKK〇さ~ん!
慌てない♪ 慌てない♪ 一休み! ひとやすみ!
ということでCMはいります!
ピンクのオッサンとセレスティーノのなれそめ話を1万字の短編で公開しております!
ピンクのオッサンの悲痛なる心の叫びを聞くがいい!
「地下拳闘士の華麗なる転身~我が名はゴンカレエ=バーモンド=カラクチニコフ!よっ❤」
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