第7話 フェアリーの驚愕《きょうがく》の生態とフィリオーネのだっこ


「宝箱があるぞ、どうする?」とウィリアム係長が、話が終わるのを待って聞いてくる。

「罠の解除とかカギ開けとかって事ですか? ぼくはやった事ないです」

「やった事ないわ」とお母様。

「やった事ないなー」とお父様もやった事がないようだ。

「あたし金庫と宝箱いじった事ある、ときどき毒針が飛んできたり爆発したりミミックになって襲いかかってくるけど開けれるよ!」とフィリオーネが自慢げに言った。

「じゃあフィリオーネ、開けてもらっていいかな?」ぼくが聞くと。

「は~い」と言ってフィリオーネが、光り輝く魔力でカギを作りだしカギ穴に突っ込む。

「毒針が仕掛けてあったみたいね」とフィリオーネ。

「解除は成功した?」

「あたしの腕に刺さっているわ」と言ってフィリオーネが右腕を持ち上げると、ぶっとい針がフェアリーの細い右腕に刺さっていた。

「わああ!フィリオーネ大丈夫?お母様毒の治療を!」

「私、毒は受けた事ないから」とお母様が言って目を伏せる。

「ああ……フィリオーネが死んじゃう……」

「あたし毒の治療できるよ」とフィリオーネが勢いよく毒針を引き抜き身体を光らせると、右腕のきずは消えていなかった。

「それで毒の治療出来てるの?」

「できてるわよ、少し待てば傷も消えるわ」とフィリオーネが傷を見ながら言う。

「傷消さなくて好いの?」

「これから治癒魔法を使うこと考えたら、自然治癒で傷の治るイメージを覚えておかなくっちゃ」と言って、ぼくにニッコリほほ笑むフィリオーネ。

「え? 自然治癒で治せた傷しか、治癒魔法として習得できないの? フィリオーネはじめて毒を受けた時は自然治癒で治したの?」

「あたしがまだ花の蜜を吸ってた頃毒のある花の蜜を大量に吸ってね、だれにも見つからず3日3晩倒れてたわ……」とフィリオーネがしみじみと言った。

「さっき言ってたフェアリーの死亡原因の例って、フィリオーネが自分でやらかして生き残った例なんじゃ……」

「そうよ……」と言いながらフィリオーネが宝箱を開ける。

 宝箱をのぞくと、迷宮銅貨が3枚(約30円)入っていた。

「銅貨1枚、何マナぐらいですか?」ぼくが聞くとルークお父様が「200分の1マナぐらいだな、普通ダンジョンの序盤は倒したモンスターのマナチップの合計ぐらいの迷宮硬貨が入っているもん何だがな」

「つまり2じゅうぞこかもしれないと」

「それかよく開けられる宝箱で、ダンジョンの神がたくさん宝物を入れられなかったとか」とソフィアお母様が可能性を1つあげる。

 そうしている間にフィリオーネが宝箱の中に入って底を調べ「なんか空洞があるみたい」と言う。

「ちょっと貸してみなさい」と言ってウィリアム係長が、宝箱をひっくり返したり中をごそごそしたりすると中ブタが外れた。

「迷宮銀貨3枚分(約3000円)か、大した金額でもないしそのフェアリーの取り分と言う事で良いですか?」ウィリアム係長が言うと「「「いいですよ」」」とぼくとお父様お母様が言った。

 フィリオーネは「わ~い」と言いながら身体を光らせて迷宮硬貨をしまった。

「切りもいい所で、帰りましょうか」ぼくが言うと。

「いやいや、来たばかりじゃないか!」とルークお父様が怒ると言うよりも、驚くと言った感じで言ってくる。

「電気技なしで戦って思ったんですけど、複数のゴブリンを相手に戦った場合ぼくは死にかねません。今回は運よく相手が刃物を持っていませんでしたが、刃物を持っていた場合どうなっていたか。ゴブリンと互角に戦えると言うのは、もう少し筋肉がついた年齢の常識だと思います」

「地下1階では、モンスターは刃物を持って出てこないんだよ?」とお父様がぼくをなだめるように言う。

「電気技なしで戦ったら、モンスターを残虐な感じで追いかけまわして殴り殺す。電気技ありで戦ったら相手は即死。電気技を使うときは苦戦する時になると思いますので、電気技が効かないきかない相手に出会った時こそぼくは死ぬ時かもしれません。以上の事から今はダンジョンに潜るよりも、魔力の層を多くする事が大事だと思います」

「まあそうか……じゃあ帰るか!」とルークお父様が元気を無くしたかと思うと、急に元気を取り戻して宣言した。


 ダンジョンから出る時もゴブリンと戦ったが、ゴブリンのひざをおってはって逃げようとする所に電気技で殺すと言うパターン化した戦いになったので省略する。


 ダンジョンの外に出るとフィリオーネが「あたしもアルヴィンだっこしたい」と言いだした。

「腕のけが、自然治癒で治ってからにしたら?」

「もう治ったよ?」と言ってフィリオーネが、腕を見せてくれる。

「回復魔法使ったの?」

「回復魔法使ってないよ、フェアリーは腕がちぎれても10日で腕が生えてくるんだよ!」

「そんなに自然治癒が速いなら、逆に何でかすり傷しか治せない回復魔法覚えたの?」

「痛いのいやだから……」

「まあ、そりゃそうか。なら、はいどうぞ!」だっこしてくれているソフィアお母様の腕の中から、両手を伸ばしてフィリオーネがだっこしやすいようにする。

「ちがう!ちがう! まず、地面に降りて!」フィリオーネの言う事を聞いて、ソフィアお母様がぼくを地面にトンと置く。

「よつんばいになって!」

「はい、よつんばいになったよ」ぼくがフィリオーネの言う通りにすると、フィリオーネがぼくの背中側の服を引っ張ってぼくを空中に釣り上げる。

「どう? あたしのだっこ!」フィリオーネが得意げに言う。

「これってだっこかな~」

「このまま家まで、はこんであげる!」フィリオーネの楽しそうな声が聞こえる。

「うん、ありがと……」

 フィリオーネに運ばれて飛んでいると近くで「キャー!」と悲鳴が上がった。

「なに? どうしたの?」悲鳴の上がった方を見ると、「フェアリーが、赤ちゃんをさらっていきます! だれか助けてあげてください!」と言ってこちらを指差している中年女性がいた。

「いやちがいますよ! 運んでもらっているだけです!」とぼくが言うと、ソフィアお母様が前に出て「あの赤ちゃんは、ケサランパサラン魔法王国軍暁騎士団所属ルーク少佐とケサランパサラン魔法王国軍近衛騎士団所属ソフィア中佐の昨日生まれた息子アルヴィン! 異世界からの転生者です! あれはフェアリーが、赤ちゃんをさらっているのではありません! 息子のアルヴィンが、フェアリーを使役して運ばせているのです! みなさん心配はいりません!」と言いだした。

「あれ……どうしよう」とぼくがつぶやくと。フィリオーネが「たのし~!」と言って、みんなを先導するように飛びだした。

 まあ空を飛んでいると言っても、地面から3メートルの所を飛んで信号待ちをして車みたいなものや人力車や馬車が通り過ぎるのを待ってからまた進むと言う飛び方だが。

 ちなみに横断歩道も信号機もぼくが前世で知っていたのと同じものを使っているようだが、背の高い一族のためなのか電線は見当たらない。

 ときどき悲鳴が上がると、ソフィアお母様が前に出て「あの赤ちゃんは、ケサランパサラン魔法王国軍暁騎士団所属ルーク少佐とケサランパサラン魔法王国軍近衛騎士団所属ソフィア中佐の昨日生まれた息子アルヴィン! 異世界からの転生者です! あれはフェアリーが、赤ちゃんをさらっているのではありません! 息子のアルヴィンが、フェアリーを使役して運ばせているのです! みなさん心配はいりません!」と言うのを家まで繰り返しながら進んだ。

 ちなみにフィリオーネは家の周りを2周してから、家に入った。


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