第6話 俺の番 ※クロウ視点

 俺はカナタを抱きかかえると、第二騎士団にある団長室に向かった。


 あの部屋なら俺以外のは入って来ないし、フェロモンに当てられてもどうにか止めることができる。


 俺を掴むカナタは必死な顔で何かを訴えようとしていた。


「夢を守ってくれ」


「……」


「お願いだ」


「ああ」


 俺の胸の鼓動はどんどん早まるばかりだ。


 目の前の男は自分の心配よりも妹のことをずっと気にかけている。


――Ωの発情期ヒート


 Ωという存在が少ない中、αばかり集まっているこの城にいることがどれだけ危ないのかわかっていない。


 しかも、番がいないというだけで危険なのだ。


「団長そんなに急い……ん、なんの匂いだ?」


 廊下にいる部下は急いで跪いて道を開ける。


 ただ、フェロモンが溢れ出ているのだろう。


 部下も異変に気づき始めていた。


「今から団長室には誰も入れるな」


「くっ……わかりました」


 ふらふらしながらも部下は、他の騎士団員がいる訓練場に向かった。


 フェロモンで意識を失くすほどあいつらは弱くないからな。


 それにしても早くしないと俺も止められそうにない。


 生まれて初めて運命の番を目の前にすると、こんなに欲が抑えられないとは思わなかった。


 襲いたいを通り越して、食べて自分のものにしたいという衝動が襲ってくるのだ。


――バン!


「団長?」


「今すぐこの部屋から出て行け!」


「えっ……この方は……くっ、Ωですか!」


 部屋には副騎士団長のラニオンがいた。


 ラニオンはすぐに気づいたのか、鼻を布で押さえてベッドのある寝室の扉を開けた。


「抑制剤はありますか?」


「いや……しかもこの者は魔力を全く持っていない――」


「そんなことがあるんですか!? 私は念のために抑制剤を探してきます」


 ラニオンは急いで部屋から出て行った。


 αであるラニオンも理性を保つのも必死だろう。


 だが、こいつは俺の"運命の番"だ。


 誰にもその役目を渡すわけにはいかない。


 この世界にいる者は基本的に魔力を持っている。


 Ωは抑制剤を服用することで、魔力が反応して発情期を抑えることができる。


 でも目の前にいるカナタはその魔力を持ち合わせていない。


 だから抑制剤を摂取しても魔力が反応せずに、発情期を抑制できないだろう。


 それは昨日の反応を見て理解はしている。


「クロウさん……苦しいよ」


 ベッドの上に寝ているカナタは、自身のズボンと下着をゆっくりと下ろす。


「くっ……」


 ただでさえ必死に抑えていた感情はすでに限界に近い。


 俺の男根に熱が集まってきている。


「カナタすまない」


 気づいた時には俺は理性を失っていた。


 ただあるのは目の前にいる愛らしい男を俺のものにしたい。


 ただそれだけの感情だった。





 俺はわずかな意識の中で大事にカナタを抱きしめながら腰を振っていた。


「はぁ……」


 もうこれで何回果てただろうか。


――ガチャ!


「団長それ以上は――」


「うるさい! こいつは俺の……」


 ラニオンに止められると俺は我に帰った。


 あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。


 気づいた時にはベッドの上で、服が切り裂かれたカナタがぐったりとしている。


「俺はなんてことを……」


「発情期だからαの私達には仕方ないことです。それでどうやって発情期を止めたんですか?」


 俺は自分の男根を抜き取ると、カナタの蕾からは大量に俺の体液が溢れ出てきた。


 魔力がないカナタが魔力を直接得る方法。


 それは体液を直接体に注ぐことだった。


 俺が駆けつけたタイミングではカナタの首からは出血し、聖女の力で止血した後だった。


 その後に発情期が来たってことは、カナタに魔力がないことと聖女の治療が関係しているのだろう。


「前に魔力を含ませた唾液を与えたら治ったんだ」


 だがこの姿じゃ理性は保てないようだ。


 俺は獣の姿に戻るとカナタの体を舐めた。


「とりあえず掃除をしましょうか」


 ラニオンはそう告げると、獣の姿になった。


「グルルルル!」


 つい俺は部下に威嚇をしてしまった。


 獣の姿になったということはカナタを舐める気なんだろう。


 俺の番には触れさせない。


「大丈夫ですよ。この姿ならまた発情してもさっきよりは動けますからね。では、拭くも物を持ってきます」


 ラニオンは部屋から出て行った。


「カナタすまないな」


 俺は汚れたカナタを必死に舐める。


 うん……どこか癖になりそうだ。

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