第73話速攻

「素晴らしい戦果だな、クニカズ准将!!」

 俺がヴォルフスブルク軍南方方面軍司令部に戻ると、グリツァー少将が出迎えてくれた。


「ありがとうございます、少将」


「アルフレッド中将から連絡があった。クニカズ准将の策を採用して、主力部隊が壊滅したザルツ公国に侵攻するようにとな。下手に時間をかければ、グレア帝国などの介入を招く可能性がある。時は金なりだそうだ」


 そうか、アルフレッドが承認してくれたか。すでに、訓練は終えている。南方方面軍はザルツ公国撃破のために、常日頃から訓練を積んできた。


 だからこそ、この戦略も採用可能だ。


「少将。作戦計画を具申します。この作戦はそうですね。"電撃戦"と呼称します」


 俺は地図を開く。クリスタに目配せをした。補給経路の確保を進めるようにアイコンタクトを送る。彼は頷いて、事務作業に入った。


「少将。制空権はこちらの手の中にあります。まずは、敵の通信網や指揮系統を叩きます。これは私の部隊の半数で行います」


「なるほど。さきほどの攻撃をより広範囲におこなうのだな」


「はい。ですが、敵はすでに主力を失っております。こちらの優先目標の防衛は不可能に近いでしょう。航空攻撃で敵の指揮系統を奪ったら、第一旅団の機動部隊が先攻してなだれこみます」


「機動部隊?」


「はい。騎兵と航空魔導士です。騎兵の航空支援を魔導士が行い、騎兵隊はこの場所を目的地として前進します。後方から南方方面軍の部隊が追いかけてください」


「すさまじい一点突破だな。だが、先行し過ぎた機動部隊が孤立する危険性はないのかね」


「その対策として、こちらが敵の指揮系統を奪っております。機動力を生かすことができれば、敵の最後の戦力である守備兵力もせん滅可能です。機動部隊には必要以上の前進は戒めております」


「なるほど。機動部隊が敵の後方を脅かせば、守備兵は動揺し完全に崩壊する」


「そして、この地点の川と山岳を利用すれば、少数の機動部隊でも撤退してくる守備兵の足止めは可能です」


 クニカズの構想を聞くと少将は驚きつつも納得した。


「機動部隊の最初の目的地をここに設定したのは、敵を包囲殲滅しやすい場所だからか」


「はい。敵の主力部隊と最後の残存戦力である守備隊を失えば、ザルツ公国を守る戦力はなくなる。勝利は確定します」


「だが、あまりに早い機動部隊の動きでは、補給が追い付かなくなる危険も」


「それは大丈夫です。女王陛下とアルフレッドに依頼して、北方方面軍や東方方面軍の騎兵隊を補給部隊に転化して、補助してくれることになっています」


 少将はあまりの手際の良さに苦笑いしながら頷いた。


 ※


―ザルツ公国防衛隊司令部―


 さきほど、巨大な爆発が発生し、すべてが吹き飛ばされた。幕僚たちは、気を失っているのか動かない者たちも多い。地面には血だまりができていた。


「将軍、お怪我はありませんか」


「私は大丈夫だ。被害は?」


「壊滅的です。おそらく主力部隊を攻撃したヴォルフスブルクの航空魔導士隊ですね」


「ヴォルフスブルクのブラウンウルフか」


「閣下。もう、あれは狼なんて生やさしいものではないかと。死神です」


「くそ、前線はどうなっている?」


「ダメです。魔力通信網がずたずたにされていて前線と連絡できません」


「なるほど。司令部への攻撃はこのためか。どうにかして、連絡を取れ」


「閣下、大変です。生き残っていた前線の通信網から連絡が入りました。すでに、敵軍の騎兵部隊が前線を突破した模様です」


「なんだと!?」


「航空魔導士隊の空襲と合わせて、防衛線が弱体化したようです。すでに、突破した騎兵隊がこちらの後方部を脅かしつつあります」


 まずい。この情報が伝われば、部隊は恐慌状態に陥る。集団パニックになれば、戦闘どころではなくなる。


「前線はゆっくりと後退しろ。こちらの遊軍と司令部の残存戦力を用いて、騎兵を叩く。そうすれば、騎兵隊は前線で孤立し、殲滅が可能なはずだ」


 ※


 だが、それが完全に敵の狙い通りだとはザルツ公国は思わなかった。

 このあと、世界はクニカズの本当の恐ろしさを知る。




――――――

(登場人物紹介)


グリツァー少将

知略:73

戦闘:77

魔力:71

政治:72

スキル:人格者・鼓舞・大器・堅実


大ヴォルフスブルク帝国の将軍。以前は、グール騎士団領に所属していた。

大ヴォルフスブルク帝国が成立したことで、所属が変わり、南方方面軍司令へと就任。

人格者であり、元の騎士団領の派閥の中心人物で、他公国出身者からの信頼も厚い。

ゲームにおいては、バランス型の典型例。


騎士団領プレイでは切り札のような存在で、他国でも彼を配下に加えると重宝される。

君主の補佐役。

内政官。

部隊の指揮官。

方面軍の司令官。

あらゆる役職に就くことができる存在で、器用貧乏になりやすいが、ひとりいるだけで安定感は増す。

特にスキル:大器・人格者のおかげで、方面軍司令官にすると部下の忠誠度が上がる上に、スキル:堅実があるおかげで暴走することもなく、安心して委任できる。

その他、首都において内政官にしておき、突発的に戦線とは逆の国から戦争を挑まれた時の遊軍としておくことも有効。


堅実な性格で基本に中心だが、クニカズから提案される戦略にも理論を聞くことで理解し順応していく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る