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 レオナールたちが畑で精を出している頃、アベルは領主館にいた。冬を前にやることが増えるのは、どこの領主も同じ。


 この時期は毎年、アベルは難しい顔をして執務室に籠もっていると、レオナールもアランも言っていた。


(でも頭を抱えているのは、この領地のことを考え過ぎというくらい考えているからなのよね)


 レオナールやアラン同様、レティシアにもそれがわかるようになった。


「レティさん、スープは出来ましたよ。パンはどうですか?」

「全員分用意できてるわ。あと、ソーセージも」


 アランは大鍋いっぱいにジャガイモと野菜たっぷりのスープを作り、レティシアは朝のうに焼いておいたパンの残りを人数分揃えた。その横に、焼いておいたソーセージもある。


 どれも湯気を昇らせていて、ほんのり香りを漂わせている。


「晩餐でもないのに肉がつくなんて、前は考えられませんでした。豪勢ですね」

「ほんの少しだけどね。忙しく働いているのだから、精をつけてもらわなきゃ。むしろ、これだけで足りるのかしら?」

「以前より余裕が出たとはいえ、毎日大盤振る舞いしていたらあっという間にスッカラカンになっちゃいますよ。身の丈にあった食事で十分なんです」


 そう言うと、アランは外で仕事をしている者たちの器を用意し始めた。その傍らには、既に二人分の用意ができている。


「僕は畑の皆さんに食事を持っていくので、レティさんはアベル様にお食事をお持ちしてくれませんか? レティさんも、そこでご一緒に」

「え、一人では大変でしょう? アベル様にお渡ししたら私も行くわ」

「大丈夫。それよりも、アベル様は食事の間も休憩しなさそうで心配なんです。片手で食事しながら片手で仕事をしそうで……ちゃんと休むように、見張っていて下さい」


 そう言うと、アランは鍋やら何やら一式をがさっと持って、厨房を後にした。こうと決めたら意外と身軽に動くのだ。


 後に残されたレティシアがやることは、一つしかない。


「見張りって……」


 なんだか人聞きの悪い言葉だが、アベルに関して言えば、確かに当たっているかもしれない。


 皿の載ったトレーを持ち、レティシアはアベルの執務室へと向かった。

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