村をモンスターの群れに襲われ、妹と二人、命からがら逃げだした少年クロムは、街でものすごい搾取にあう。
　だが、それは同時に、彼に強い力を与えることになる切っ掛けとなるのであった。


　異世界物の世界観をベースに繰り広げられるダークファンタジーという印象です。
　設定自体は軽く、異世界物特有の突っ込みどころは満載なのですが、物語自体がハードなダークファンタですので、かえってバランスがいい印象があります。

　主人公クロムの原動力が、妹に対する愛情であることも物語に強い中心軸を与えていますし、世界に対する復讐も爽快です。
　展開はかなりダークですが、そこも魅力のひとつ。
　読みだすとやめられない、なにか魔力のようなものを感じる物語です。

主人公は最初にそれまで持っていたほとんどの物を失ってしまいます。妹だけはなんとか守ることができるのですが、次々にやってくる苦難が彼をさらに追い詰め、妹を危険にさらす。いつ残された妹と自身の命を失ってもおかしくない。
そんな緊張感をずっと感じ続け、それでもと立ち向かう主人公に胸を熱くします。

辛さのリアリティが繊細に描かれていて、読み進めるのが怖いと思う時もありながら、文章の読みやすさと展開のハラハラ感が次々に物語を読ませてしまう。そんな小説です。

第一章はハラハラドキドキの連続です。

後のイレイザーと呼ばれる男の、その始まりが描かれています。
彼がまだ敵と真っ向から戦う術を知らなかった、ただの村人であった頃。
そこで出会う悲劇と、苦難。

窮地を乗り越えたと思えば、その先にまたあるのも……。
そんな困難の連続の中で、足掻き、奮起し、戦い抜く主人公がカッコいい！

そしてその先に立ちふさがる美しき、そして恐るべき敵との戦い！
圧倒的苦境を、主人公が守るべきもののために乗り越えていくというシチュが大好きな方に、とってもおすすめです！

いや、別に非難するわけじゃないんですが。
ただ、話は序盤からメチャクチャハードです。下手なダークファンタジーよりよっぽどキツいです。
序盤からほぼ全てを失い、何もかもに失望したった一つ残った者だけを守る。少年とは思えない壮大な覚悟と運命を背負って生きる主人公。
プロローグにあるイレイザーへとこれからどうやって至るのか、非常に楽しみです。期待大ですね