74.朝になったけどどうだろう?
「眩しい……」
翌朝は太陽の光で目覚めた。中川さんの方を見ると、ちゃっかりアイマスクを使っている。俺も帽子かなんかぶって寝ればよかったと思った。
それにしても結界魔法の万能っぷりがすごい。
そのおかげか、外で寝ていたのに全然虫に食われもしなかった。
「んんー……朝ぁ?」
中川さんが身を起こす。いつも薄着で寝ているから一緒に起きると目のやり場に困る。
「おはよう。ところで、まだ結界魔法効いてるみたいだけど、大丈夫?」
「えっ?」
彼女は少し考えるような顔をした。
「うーん……特になにも……」
中川さんは昨日船を見かけた辺りからほぼずっと結界魔法を使っていたけど、なんともないようだ。首を傾げて、
「なんとなくだけど、何日か使い続けても大丈夫な気がするわ」
「そうなんだ?」
俺たちの能力がそれだけ上がってるってことなんだろうな。魔法は便利だからそれなりに使うけど(俺は主にミコをキレイにする為に洗浄魔法を多用している)、疲れたりって全然しないもんな。
キュウ、と俺の上着の内ポケットから顔を覗かせたミコが鳴く。
「おはよう、ミコ。ごはんにしような」
キュキューッと目を細めて鳴いてくれるのがかわいい。
「じゃあ私、南の人たちを見てくるわね」
「あ、それは一緒に行くよ」
「そう?」
中川さんは服を着て、立ち上がった。俺が一緒に行くと言ったらそっけない返事をしたけど、その耳がほんのり赤くなっているのがわかった。うん、朝からありがとうございます。
その時ミコは俺の首に巻きついていたけど、いきなり伸び上がって俺の鼻先を甘噛みした。
「うおわあっ!?」
「? どうしたの? ミコちゃん、だめよー」
俺の悲鳴に中川さんが振り向き、ミコを窘めた。なんでいちいち噛むんだよー。心臓に悪いから止めてほしい。
土間ではもうケイナさんとユリンさんがお湯を沸かしていた。洞窟の中から汲んできたみたいだ。
「あ、水出しちゃいますね」
「ありがとう」
中川さんは桶に魔法で水を出した。
「これもよかったら使ってください」
水の入ったペットボトルを二本出す。2Lのと500mlのだ。
「ありがとうございます。この容器は取っておけばいいんですよね」
「はい、お願いします」
容器を回収してリュックにしまえばあら不思議! 水で満たされたペットボトルがまた出てくるのである。まぁとにかく俺のリュックが不思議でしかたない。
また出てくる物には法則性があるっぽいんだよな。冬の間に検証しようとしたけど、よくわからなかった。少なくとも狩った魔獣をしまって出しても増えないってことはわかった。(そんなことになったら魔獣食い放題かもなー)
ロンドさん(新米神様)がこの世界の力を借りて作った物らしいから、一応限界もあるんだろう。
それはともかく部屋を見に行く。
俺が部屋の布を避けて中を覗いた。
「……あ……」
三人共、布団の中で目を覚ましていたらしい。
「おはようございます」
と声をかけたら、昨日一番最初に起きた人が慌てたように身体を起こした。それを手で制する。
まだ本調子じゃないだろうから無理はしないでほしい。
「ごはんは食べられそうです?」
中川さんが聞いた途端、なんか音が鳴った。彼らの腹の虫みたいだった。
「あっ……」
「できたら持ってきますね」
中川さんが笑む。どうやら食欲があるらしいということがわかって、よかったと思った。
「あ、これ使ってください」
土間で弁当箱の中からおにぎりを二つ出した。これを煮れば早く粥ができるはずである。生米から煮るよりもずっと早く。
「わかりました。ヤマダ様も、ナカガワ様も優しいですね」
ケイナさんがふふ、と笑った。
「うーん?」
「優しいわけでは、ないですよ?」
俺と中川さんは首を傾げた。中川さんは土間に残り、俺は表に出た。洞窟からドラゴンがのっそりと出てきたのでヤクの肉の塊を出した。
『うむ』
ドラゴンは満足そうに頷くとバクリと肉を食べた。ダンボールを広げてその上に細切れにしたヤクの肉を出す。蛸の足も小間切れに切ったものを出した。ミコが先に一口食べ、それを合図にイタチたちはガツガツと食べ始める。俺は汚れないようにその場から離れた。
「朝はそれだけだからなー」
イタチたちは小さい身体をしているけどかなり食べる。燃費がとても悪いから、少し獲物を狩って来た方がいいんだろうか。
でもなぁ、あの人たちが落ち着くまでは離れるわけにもいかないよな。
やがて家の中からおいしそうな匂いがし始めて、
「ごはんですよー」
と声をかけられた。
とりあえず朝飯を食べることにした。
例の三人は除き、みなで集まって朝食をとる。笹の葉とヤマイモのスープが食欲をそそる。飯盒で炊いたごはんをみんなで分け、後はゴートの肉を食べやすい大きさに切ったステーキが出てきた。朝から豪勢だけど、野菜より肉の方が豊富なのだからしかたない。
俺はフルーツの缶詰を出した。
今までもたびたび出しているが、女性陣とチェインにはとても好評である。
「今日は桃缶?」
中川さんの声が弾んでいる。
「うん、どうぞ」
「朝から贅沢だわ~」
みんなに喜んでもらえるのが一番だ。ふと視線を感じてそちらを見れば、家の中からそっと三人の顔が覗いていたのだった。
次の更新は、16日(土)です。よろしくー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます