【書籍発売中】準備万端異世界トリップ～森にいたイタチと一緒に旅しよう！～

６５．あれもこれもおいしそう

　森もそうだけど、この辺り（山の上）も木々の成長がとても早い。

　岩塩が固まっているところはさすがになにも生えてないんだけど、種を植えたら翌日にはにょきにょき生えていたりする。竹かよって慄いた。

　竹と言えばけっこうムカデがいるから怖い。ミコたちは見つけるともしゃもしゃ食べている。イタチってけっこうなんでも食うんだなと思った。（この世界だからかもしれない。そこらへんの知識は足りない）

　薪を割っていると、香ばしい匂いがしてきた。なんとも食欲をそそる匂いだ。

「今日のごはんなーに！？」

　チェインがさっそく突撃してユリンさんに叱られていた。

　テトンさんとムコウさんがゴートを担いで戻ってきた。一頭は担ぎ、それ以上はソリに載せて引いてきた。魔獣の肉のおかげでとても力が付いたから軽々と持つことができると喜んでいた。狩ったはいいけど運べないじゃ困るもんな。

「ごはんですよー」

　ちょうどよく女性陣に声をかけられて斧を置いた。午後はまた薪割りをしよう。

　洗浄魔法で全員をキレイにしてから、俺はまずミコたちにごはんを用意した。ヤクとクイドリのブロックを出す。マグロもどきは夜に出すことにした。例によってミコが先に一口食べてから他のイタチたちも食べ始めた。

　ドラゴンとオオカミにはヤクを一頭ずつ出してある。少し離れたところで彼らはヤクを貪り食っていた。解体した肉も好きだけど、そのままでもかまわないらしい。

「お待たせ」

　俺の席である木の切り株に腰掛けると、「遅いよー！　よだれが止まらないよ！」とチェインに怒られた。

「ごめんごめん。いただこう」

　確かに、目の前に出された肉からはとてもうまそうな匂いがしていた。調味料でなんとなく黄色っぽくなっている。

「これがおいしいんですよ！」

　ユリンさんがにこにこしながら言う。

　一口食べてみたら、衝撃だった。クミンを使うとこんなに香ばしく、おいしくなるのかと目から鱗だった。

「……俺の水筒から出たってことは、元の世界でもあるんだよな、きっと……」

「そうね。これは確かに肉料理に最適だわ……」

　中川さんと頷きあった。クミン、覚えておこう。

　その後はみな手が止まらず、すごいスピードで食べ終えてしまった。肉自体もおいしいんだけど、クミン、恐るべしである。

　昼飯の後で水筒の中身を確認することにした。

「水筒、確認するぞー」

　と声をかけたらミコがすごい速さで戻ってきた。どんだけ調味料に興味があるんだよ。みんなじっと見てるし。

　ミコたちイタチには洗浄魔法をかけてから水筒を開けた。

「今日はなんだろうなー」

　傾けたけどなかなか出てこない。これは蓋を開けるようかと思った時、白っぽいどろりとしたものが出てきた。

「なんだろ？」

　マヨネーズにしては白すぎるし、マヨネーズよりもゆるいかんじだ。味見をしてみたが、マヨネーズっぽいようななんだかわからない味だった。

　首を傾げる。

　中川さんに味見をしてもらったら、

「うーん？　なんかシーザーサラダのドレッシングみたいな味ね？」

　と言う。

「シーザーサラダ？」

「野菜のサラダよ。マヨネーズっていうよりチーズっぽい味だわ」

　ドレッシングらしい。ということで笹と湯がいたタケノコにかけて食べてみた。

「うん、まぁいける、かな？」

「何にかけてもいいと思うわ」

「確かに」

　みんなに味見してもらった。ミコが気になったみたいなので指先につけて舐めてもらうと、なんだろう？　というように首を傾げた。嫌ではないけど好きかどうかもわからないというかんじだった。野菜を食べる時にかければいいんじゃないかなとみなで頷いて、竹筒に移した。

　その後はマグロもどきを解体した。骨とか内臓は脇に避けたらミコがかぶりついた。

「え？　骨危なくね？」

　バリバリとすごい音を立てて食べるのを聞いて、こわっと思った。骨も食べるらしい。クイドリとかヤクの骨は食べなかったのにマグロもどきの骨は食べるみたいだ。もしかして食べやすいのかな。

「でかい魚ですね……」

「どうやって食べるのですか？」

　ムコウさんとユリンさんが当惑したような顔をしていた。

「生でもいいですし、もちろん焼いて食べてもおいしいですよ」

「生？」

「生って？」

　魚を生で食べるという習慣はないらしい。

「これって生で食べられるかしらね？　洗浄魔法じゃ殺菌まではされないのかな……」

　中川さんが首を傾げていた。

「鑑定魔法で生で食べられるかどうか見られないかな？」

「試してみる！」

　中川さんが張り切ってマグロもどきに鑑定魔法を使うと、みななんともいえない顔をした。そんなことに鑑定魔法を使うなんてと思ったのかもしれない。でも俺たち魔力はかなりあるみたいだから、全然問題ない。

　積極的に使ったらそのものの詳細とか見られるようにならないのだろうか。今のところ食材に関しては正常か毒が含まれているかどうかとかはわかるみたいだけど。

「うーん……生で食べられるかどうかは出てこないわー」

「そっか」

　さすがに大事をとって夜はマグロもどきのステーキを食べることにした。おなか壊したら困るし。

次の更新は、16日（水）です。よろしくー