64.山の上での日常
寝る前にミコがカリカリとリュックを引っかく。
「ん?」
もしかしてと思い、水筒を引っ張り出した。そういえば今日はなんだかんだ忙しくて中身を確認していなかった気がする。
「ミコ、教えてくれてありがとな」
今までに見たことがないような調味料が入ってるといいなとわくわくしながら出す。それを中川さんとカイも近くでじっと見ていた。
水筒を水筒のコップに傾けると、サラサラとした黄土色の粉のような物が出てきた。なんだかちょっと香ばしい。
「なんだろう、これ……」
指先にとって舐めてみる。ちょっとピリピリするかんじだ。カレーっぽいけどちょっと違う?
「うーん、わかんないな……」
ってことで中川さんにも味見してもらった。ミコとカイにとっては興味がない調味料だったらしく、寝床に入ってしまった。態度悪いな~。
「カレー粉? とはなんか違うかんじよね」
やっぱりわからないのでケイナさんとユリンさんを呼んで味見してもらった。
「おそらく、ですけど……これはクミンではないですか?」
ケイナさんが難しい顔をしている横で、ユリンさんが迷うような表情をして言った。
「クミン?」
中川さんを見ると、知らないというように首を振られた。
「肉料理をする時に使うととても香ばしくなっておいしくなるんですよ。明日クイドリを解体したら試してみませんか? 臭み消しにもなりますし」
「「是非!」」
ユリンさんにそう提案されて、俺たちは食いついた。
肉料理に合う調味料は正義である。(と俺は思う)
クミン(?)を竹筒に移してユリンさんたちに預け、明日のごはんを想像しながら寝た。
翌朝、おいしそうな匂いで目が覚めた。
俺が目を覚ますと、同じく布団に入っていたミコが顔を出す。
「あー……ごはん出さないとな」
起こさないで待っててくれたのが嬉しい。ミコってホント、かわいいよな。ミコの頭を撫でて、身体を起こした。
寝汗を掻いていたから洗浄魔法を使う。うん、さっぱりした。でもやっぱ風呂に入りたいかな。やることやったら温泉に行きたい。ドラゴンの洞窟の先にある場所へ。
「おはようございます」
「山田君、おはよう」
「ヤマダ様、おはようございます」
女性陣が朝飯を作ってくれていた。
「ミコたちにごはん出しますね」
「お願いします」
俺はリュックを持っているからイタチたちのごはん係だ。家の外へ出て日の光を浴びながらダンボールを出す。その上にヤクやゴートの肉を出した。イタチたちがそれに気づいて集まってきた。ミコが俺の身体から降りて一口食べたらごはんの合図である。
イタチたちから離れて、テトンさんたちのいる方へ向かった。
朝飯を食べ終えてからクイドリを解体した。
そしてそわそわと待っていたドラゴン、オオカミと共に更に上で狩りをする。ドラゴンもオオカミもとても楽しそうに獲物を狩っていた。
「普段からこんなに狩ってたら、魔獣がいなくなっちゃいそう」
中川さんがヤクを引きずって運びながら言う。
『……我らであればせいぜい一、二頭狩るぐらいじゃが』
ドラゴンが首を傾げた。
「じゃあなんで私たちと一緒の時はこんなに狩るんですかー? 確かに山田君のリュックは便利だけど、こんなにいらないでしょう?」
『……まぁ、その、な』
『たまにはめいっぱい食いたい時もあるじゃろうて』
「たまに?」
中川さんはじーっとドラゴンとオオカミを睨んだ。
『そうじゃ! 大量に食いたい時もあるじゃろう!』
ドラゴンが開き直った。
「……全然たまにじゃないですよね? いつもすごい量食べてるじゃないですか。ここの魔獣がいなくならないならいいですけど!」
『……いなくなりはせんじゃろう』
『いなくなるものなのか?』
食べすぎて絶滅させてしまうという考えはないみたいだ。まぁそんなこと考えるのは人間ぐらいかな。俺は苦笑した。
「中川さん、まだまだたくさんいるから大丈夫じゃないかな。俺たちがいなければ自分たちが食べる分しか獲らないだろうし」
「いいように使われてるだけだと思うんだけど?」
「俺たちも助けてもらってるじゃん。毎日は嫌だけど、四、五日に一回ぐらいはいいんじゃないかな?」
「まぁ、それぐらいならね」
『四、五日に一回とな……』
『まぁよかろうて……』
ドラゴンとオオカミが残念そうな顔をしたが、俺は見なかったフリをした。最終的に俺は中川さんには逆らえないし。(逆らう気もない)
ヤクを六頭に、でっかいネズミもどきを七匹狩った。でっかいネズミもどぎは食べると魔力が上がるから心持ち多めに狩るようにしている。
登る時はドラゴンさんに乗せてもらったが、家に戻る時は自分たちで駆けていくことにした。中川さんがオオカミさんとひゃっほーいというかんじで坂を落ちていく。うん、あれって絶対落ちてるよな? 俺はリュックをしょっているからあまり無茶はしない。
中川さんが楽しんでいる姿を見ると嬉しくなる。中川さんももう十分強いんだけど、何かあれば絶対に俺が守るって思うのだ。
だから中川さんは自由に過ごしてほしい。
「オオカミさんにはかなわないかー」
『我と勝負していたのかお主は!?』
ぜえはあと荒い息を吐いている中川さんに水の入ったペットボトルを渡した。下りだから落ちなくてもそれほど戻ってくるのに時間はかからなかった。
「ありがとう」
中川さんの笑顔が眩しい。
少し休んだら薪割りだ。中川さんたち女性陣は昼食の支度である。
チェインはイタチたちと追いかけっこをして遊んでいる。平和だなと思ったのだった。
次の更新は、12日(土)の予定です。よろしくー
誤字脱字に関しては、近況ノートをご確認ください(後日読み返して修正はしています)。
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