44.調味料とか家の様子とか

 さて、お待ちかねの水筒確認ターイム。


「水筒確認するよー」


 中川さんに声をかけるとにこにこしながら近づいてきた。ミコも俺の首から頭を上げて見守っている。

 さーて、今日の調味料は何かな。

 蓋を開けて、水筒のコップに……さらさらとなんか白い粒が出てきた。


「うん? 砂糖か、塩? それか片栗粉?」


 味見してみたら塩だった。なんだ塩か、と思ってしまうのは贅沢だけどしかたない。


「塩だった」


 ミコはなーんだと言うようにまた俺の首にくるんと巻きついた。昨日はマヨネーズが出たじゃないか。そんなにミコが興味惹かれる調味料ばっかり出てくるものでもない。


「じゃあ塩はまとめるか……」

「ちょっと待って山田君」


 中川さんがまじまじと塩を見て待ったをかけた。


「味見させてもらっていい?」

「? どうぞ?」


 中川さんは手のひらに少しだけ水筒から出てきた塩を取り、ぺろりと舐めた。


「しょっぱっ!」


 だろうなぁ。ペットボトルの水を渡した。中川さんはごくごく飲んでから、一息ついた。


「多分、だけど……これって海水塩じゃない?」

「あー……」


 ここら辺にいっぱい結晶化している岩塩ではなく、海からの塩ってことか。


「やっぱ味わいって違う?」

「食べ比べてみればわかるんじゃないかしら?」


 ということで、岩塩と水筒から出てきた塩を舐め比べてみた。


「うーん?」


 なんとなく水筒から出てきた塩の方が味わい深い気がする。それともやっぱり俺の気のせいだろうか。言われてそういう気になった可能性も否定できない。


「多分、海水塩、かも?」

「微妙な違いだもんね。海水塩だったらいいな。岩塩だとどうしてもヨウ素が不足するから……」

「ああ、そういえば聞いたことがあるかも」


 岩塩にはヨウ素が含まれていないから、岩塩を主に食べている国だとヨウ素を添加したりしてるんだっけ?

 ヨウ素って栄養成分は確か甲状腺ホルモンに関係してるんだよな。日本人だと昆布やわかめ、ひじきなんかを食べてるから不足することってないみたいだし、海水塩を使ってるから不足は考えづらい。でも世界の三分の二はヨウ素が含まれていない岩塩を使っているからヨウ素を添加して販売しているものもあるって調べたような気がする。

 なんで調べたかまでは覚えてないけど。


「いろいろ調べたりするよね」


 中川さんがうんうんと頷く。


「? ここの塩と海の塩って何が違うんですか?」


 ケイナさんが首を傾げて聞いた。


「栄養素とか、あと味も違いますよ。でも食べ比べてみないともしかしたらわからないかも」

「そうなのね」


 塩は塩じゃない? って思うのはおかしなことではないと思う。砂糖はどこまでいっても砂糖だしな。(なんか違う)

 さて、水筒の中身もわかったし家もちょっとチェックしてみよう。

 俺たちが住んでいるのは長方形の長屋だ。それを木の板で三部屋に仕切っている。屋根は竹を互い違いに乗せているから、雨が降っても安心である。ただし軒下にいくとだばぁと水がかかったりするから注意が必要だ。

 三部屋に仕切ってある部分は床を作ってある。20cmぐらい高さがあるから、万が一雨が降っても床は水浸しにはならない。三部屋の手前は土間だ。竈があって、煮炊きとか、作業とかを主に行う。土間と部屋とは大きめの布で仕切っている。それだけなので隣の音とかは丸聞こえだ。

 プライバシーなんてあってないようなものだけど、壁と屋根があるだけで違うし、昔の生活ってこんなかんじだったんだろうなと思っている。

 さすがにテトンさんとケイナさんがむふふ……な時はいたたまれないんだけどさ。しょうがないよな、夫婦なんだし。


「ヤマダ様、どうですか?」

「よくできていると思います。ちょっとここ危ないから削りますね」


 木がささくれているところがあったので削り、やすりをかけた。やすりは中川さんのポーチから出てきた。かなり重宝している。

 ごみ処理ができるだけじゃなくて、ある程度物を捨てたら便利な物が出てくるとかチートだよな。助かってるからいいけど。


『狩りにはいかぬのか?』


 ドラゴンに聞かれてしまった。


「うーん、明日朝飯食ったら行こうか」

『明日か』

「ちょっとまだ確認することとかあるからさ。ごめん」

『……そなたが謝るようなことでもない』


 ドラゴンはそう言ってそっぽを向いた。

 ヤクの肉の在庫がどれぐらいあるかとか数えていたらミコが俺の首から顔を上げた。

 キュウ? と鳴いて首を傾げる。食べていいの? と聞いているみたいだ。

 いきなりかぶり付かないだけ、ミコはえらいと思う。きっとこれがカイだと問答無用でかぶり付いたりするのかもしれないな。

 いくらなんでも肉を広げたりはしてないんだが、いちいち出してるし。

 リュックの中で数えるっつーのが難しいんだよ。


「在庫を数えてるだけだからだめだよ」


 でも何もあげないってのもかわいそうだからと、小さめに切ったヤクの肉を少しあげた。そしたら他のイタチたちも集まってきてしまったので、少しおやつとしてヤクの肉をあげることになってしまったのだった。



次の更新は、8/3(土)です。よろしくー


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