3.山のもっと上の方へ狩りに行く
ドラゴンの背に乗る際、ロープを使って俺と中川さんの身体を括り付けたりはしている。
さすがに落ちたらただでは済まないし。
ドラゴンの背にうつぶせるようにして乗り、できるだけ風の抵抗を受けないようにするのも必須だ。
ドラゴンライダーとかに憧れて身体を起こして乗ったりしたら、風の抵抗を受けて吹っ飛んでしまう。いくらドラゴンが風魔法で調整しながら飛ぶのだとしても、その調整は俺たちの為にしてくれるわけではないしな。
ってことで今日もドラゴンは飛んでくれた。
助走をつけて飛ぶってのが現実的だよなーと思いながら旋回するドラゴンにしがみつく。そうしてドラゴンは山の、もっと高いところまで飛んだ。着地をしてからもドドドドドーッと走って止まる。目の前にいたヤクがドラゴンに弾き飛ばされた。なんだかちょっと気の毒だった。
『狩るがいい』
「はい」
「ありがとうございます!」
ドラゴンの背から飛び降りて少し離れたところにいるヤクに狙いを定めた。醤油をつけた石を、補助魔法を使って投げればヤクが俺に近づく前に倒すことが可能だ。ホント、オオカミから補助魔法を継承してもらってよかったよ。
中川さんもそのでかい弓を使って正確にヤクを撃っていく。その凛とした立ち姿はいつ見てもキレイだと思う。
オオカミが到着し、狩りに参戦した。久しぶりにヤクを狩ったせいなのか、なんだかオオカミがはしゃいでいるように見えた。
都合、全員でヤクを十頭も狩ってしまった。相変わらずオーバーキルだなと思う。(意味が違う
「……あははー……」
中川さんが困ったように笑んだ。
当然ヤクだけでなくでっかいネズミもどきも狩っている。この肉は魔力が上がるから食べた方がいい。子どもには少しずつでないとだめだけど。
「これ全部解体しないとなのよね……」
「がんばろう」
調子に乗りすぎた自覚はある。
リュックは背負ってきてるから、比較的安全な場所まで獲物を運び、そこでざっと解体した。ミコと黄色いイタチが興味津々で顔を出したが、寒さのせいかすぐに首にくるんと戻った。かわいい。
「毛を毟る作業が困るわよね」
「そうだなぁ」
ペットボトルから水を鍋に移すのが何気に面倒だ。お湯自体はドラゴンが火魔法で作ってくれるからいいんだけど。俺たちも火魔法は教えてもらったから自分たちでもできるが、ドラゴンがやってくれるというのでやってもらっている。
熱湯をかけて、急いで毛を毟る。
ヤクは毛皮も使うので、オオカミに括り付けて家のところまで運んでもらった。今解体しているのはでっかいネズミもどきだ。
こちらも十頭も狩ってしまったから、もう当分はいらないだろう。
「疲れた……」
ため息をついて肉をリュックに全てしまい、ドラゴンの洞窟がある場所まで飛んでもらった。
「あ、山田様、中川様」
テトンもすでに戻ってきていたらしい。地面は獲物でいっぱいになっていた。ゴートもそれなりに狩れたみたいだ。
「随分狩ってきましたね~」
ケイナさんとユリンさんが苦笑している。ムコウさんは首を振っていた。
「俺はもう驚かない。驚かないんだ……」
とかぶつぶつ言っていた。調子に乗ってすみません。
「兄ちゃん、ねーちゃん、ロン様、ラン様もすっげー! こんなに狩ってきたのかよー」
ムコウさん夫妻の子のチェインはテンションが上がっている。それにドラゴンは嬉しそうに尾をびったんびったんと動かした。顔はそっぽを向いているけど、その尾はいつも正直だ。
『た、大したことではない』
とりあえず手分けして獲物の解体をした。毛皮の剥ぎ取りについて、俺たちはやっぱりあんまりうまくないからテトンさんたちに頼むことになってしまう。もう少し練習しないとなー。
「……狩るのはいいけど、解体がたいへんよね」
中川さんがため息をつく。
「だな。でもだいぶ楽になったよ。洗浄魔法もあるし」
「そうね」
夕飯時、これからテトンさん夫妻、ムコウさん家族にもヤクの肉を少しずつ食べてもらうということで話がついた。
「ヤクの肉をいただけるとは……なんと恐れ多い」
テトンさんたちは恐縮していたけど、森に移り住むとなったらもっと力をつけてもらわないといけないということを説明して納得してもらった。
「……そういえば、山田様と中川様から最初にいただいた肉はとても美味でした。ゴートを食べた時よりも身体に力が漲るのを感じましたから、やはり森の奥の方にいる獣は強いのでしょうね」
テトンさんが納得したように頷く。
その力が漲るって感覚がイマイチわからないんだよなぁ。中川さんと顔を見合わせた。
それって亜人やオオカミ、ドラゴンとかの感覚なのか。それともこの世界の人であればみな体得しているものなのかもわからない。そもそもまだ南の国へ行ってないから、俺らと同じ容姿の人って存在に会ってないんだよな。(テトンさんたちは角が髪に隠れて見えない位置にある)
とにかく少しずつ食べてもらうことにし、それで身体の感覚を掴んでもらった。
いきなり強くなると、不幸に見舞われてしまうこともあるっていうし。
ミコや他のイタチたちは最初から森の獲物の肉を食べているせいか、ゴートの肉はあまり食べない。(食べることは食べる)ヤクの肉をがつがつと食べている姿はグレ〇リンかな? と思ってしまったりする。見た目かわいいけど怖いよー。
そんな風に過ごしながら、移動の日を迎えたのだった。
次の更新は13日(水)です。よろしくー
やっぱこの話書くの楽しいです(笑)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます