更に寒くなってきて

 もう一回北の国の王都へは行ってきた。

 必要な防寒具は全部手に入れてきた。

 でもまだオオカミさんが戻ってこない。


「さすがに寒いよなぁ……」


 ここがドラゴンの住んでいる山の上だってこともある。(正確には高い山の中腹より下ぐらい?)

 テトンさんたちも言わないけど、かなり寒いんだと思う。

 それに中川さんも。

 女性は特に身体を冷やしちゃいけないっていうよな。

 オオカミが来る前に移動してもいいが、それで行き違いになっても困る。


「うーん……」


 少し考えて思い出した。


「中川さん」

「ん? 何?」


 中川さんは首にイタチを巻いて、その上からヤクの毛で作ってもらったネックウォーマーをしている。もこもこしてて暖かそうだけど、それだけじゃ寒さはしのげないだろう。


「そろそろ森に移動した方がいいよな」

「そうね……森は気候が安定してるっていうし、そろそろ移動したいわね」

「でもオオカミさんがなぁ……」

『……呼べばよかろうて』

「え?」


 ドラゴンにため息交じりに言われて、俺は顔を出したミコを撫でながらドラゴンを見た。


『そなたの声なら届くじゃろう。さすがにまだ森にいるのならば聞こえぬかもしれぬがな』

「あ……」


 そういえばまだ遠くにいたドラゴンにも俺の声はのだった。

 どういう原理なのかは未だ知らないが、試してみる価値はあるだろう。

 ってことで、一応テトンさん夫妻やムコウさん家族に聞いてみたら、「すぐにでも呼んでほしい」と頼まれた。

 やっぱここの寒さはかなり堪えてたんだな。

 反省した。

 で、森の方を向いて、


「オオカミさーん! そろそろ戻ってきてくださーーーーい!!」


 と声を張り上げた。

 さーい、さーい、さーいと山彦が戻ってきた。前の山に反射したのかもしれない。


「…………」


 十分待ったが、オオカミが駆けてくる気配はない。

 聞こえたとしても十分ではこられない位置にいるのか、やはり聞こえなかったのだろうか。

 ちょっと恥ずかしくなって頭を掻いた。


「……聞こえなかったみたいですね」

『そんなことはない』


 ドラゴンが否定した。


「えっ?」

『遅くとも明日には着くだろう』

「えええ?」


 オオカミが駆けて一日もかかる距離まで、俺の声が届くとはとても思えなかった。

 話半分ぐらいで聞いておこう。

 ミコがまたマフラーの間から出てきて俺の鼻を軽くかじった。


「おわぁあっ!? な、なんだよー……」

「ミコちゃん、ごめんね。山田君の声だったらオオカミさんに届くかと思ったの。うるさかった?」


 キュウとミコが中川さんに同意するように鳴いた。

 やっぱこっちが言ってること、ミコはしっかりわかってるよな。

 しかし、甘噛みだとしても心臓に悪いから止めてほしい。


「明日来なかったら、ドラゴンさんに頼んで飛んでもらうか……」

『足の遅い連中は困るものよのぅ』


 そんなこと言ってるけど、本当は頼られて喜んでいることぐらいわかっている。

 ミコが俺の首元から再び顔を出し、ぴょーんと飛んでドラゴンの鼻先を齧った。


『ぎゃああああ!? イイズナ何をするーーー!?』

「ミコ、ドラゴンさんはツンデレなんだよー……」


 俺の時と違ってミコは容赦なく噛んだみたいで、ドラゴンはその後長い尾を足の間に挟んでふてていた。本当に申し訳ない。

 そんなやりとりがあった翌朝、機嫌悪そうなオオカミが山の上に到着したのはまた別の話である。



ーーーーーー

別の連載の話をこちらに載せてしまい、申し訳ありませんでしたorz

即興ですが続きを書かせていただきました。

こちらも3月から連載を再開します。更新頻度は週二回ぐらいになる予定です。

どうぞよろしくお願いします。


そして。


「準備万端異世界トリップ」書籍化が決まりましたー!


詳細等の続報はそのうち。。。

これからもよろしくお願いします!

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