79.イタチはやっぱり?
翌朝、暗いうちからオオカミにも手伝ってもらってタケノコ掘りをした。皮ごと新聞紙で包んでリュックにいくつも入れた。でかいから本当に入るのかとちょっと心配になったほどである。(しっかり入った)
「皮もいろいろ使えるから、竹って本当に万能だよね~」
中川さんは上機嫌だ。彼女の機嫌がいいと俺も嬉しい。ちなみに、タケノコはミコも食べる。笹の葉は食べないけど。
中川さんは動物の骨を加工したりして少し小さめの弓を作った。何度か試射していたが、命中率がすごいなと思った。やっぱ弓ってカッコイイ。
「スクリ、行ってくるね。次に帰ってくる時は、もしかしたら何人か連れてくるかも?」
『そなたたちの味方であれば何人連れてきてもかまわぬ。自分の身は自分で守ってほしいがのぅ』
「そうねー。そこがネックよね」
中川さんが一瞬遠い目をした。以前のことを思い出していたのかもしれない。
さて、今回は思ったより大所帯である。身体は小さいがミコも含めてイタチが七匹だ。ミコ以外のイタチはみな体毛が茶色っぽい。中川さんの側にいるイタチは中川さんのリュックから顔を出している。ミコは相変わらず俺の上着の内ポケットの中にするりと入った。それ以外のイタチたちは自分たちでオオカミにしがみついた。
『では参るぞ』
「はい、よろしくお願いします」
ヘビに見送られ、俺たちは風になった。
しっかしかなりがっしりオオカミの毛に掴まっている状態なのだが、オオカミは痛くないんだろうかとか考えてしまう。イタチたちは普通にしっかり掴まっていた。すごいスピードでびゅんびゅん森の中を駆けているのに、イタチたちはびくともしないようだった。やっぱ俺らなんかとは比べ物にならないほど強いんだなということがよくわかった。
暗くなる前にワニの縄張りに到着した。ワニは池からザバァッ! と出てきたが、すぐにのっそりと池に戻っていった。
「? ワニさん?」
『なんつーヤツらを連れてくるのだ貴様らはぁあっ!』
池の中から出てこないけど、怒っているようだった。
「んーと。イイズナちゃんたちのことかなー?」
中川さんがオオカミから下りて首を傾げた。
『イイズナちゃん!? これじゃから恐れ知らずの人間という生き物はああああ!!』
うん、ワニが怒り狂ってるけどどうしようかな。
「オオカミさん、どうしたらいいかな?」
『肉でも与えておけばよい』
「あー、そうだね」
昨日倒したイノシシもどきの肉を出すことにした。
「ワニさん、お土産あるんですけど」
『投げろ!』
池から出てくるつもりはないようだった。うん、確かにこれだけイタチがいたらテトンさんたちをここに連れてきてもバクリとはやられないだろう。検証ができて何よりである。
イノシシもどきを包んでいた新聞紙を外してから、池に向かって投げた。ワニは肉に向かって大口をパカッと開け、おいしそうに食べた。
『……ふん。悪くない。狩りはせぬのか?』
「ちょっと今回は時間がないんだ。また今度付き合うよ」
本当は魚も狩りたいんだが、それだと明日一日潰れてしまうだろう。残念だが、冬に向かう前にテトンさんたちを迎えに行きたかったのだ。まぁ、無理だったら春にお迎えに行くことになるけど。冬の寒さは洞窟の中で過ごせば耐えられるだろう。中はひんやりしているけど気温はあまり変わらないはずだ。問題は食料だけど、あの周りにはけっこう食べられる植物があるようなので今は必死で備蓄に励んでいると思う。
「あれ? そういえばもうすぐ冬なんだろうけど、森はどうなるんだ? 葉っぱが枯れたり色づいたりとかする?」
初めからこう聞けばよかったと思った。オオカミたちは非常に能力が高いからか、暑さ寒さはあまり感じないようなのだ。だが俺たちは人間だ。だいぶ身体も慣れてきたとは思うが、できれば冬支度ぐらいしたい。
『変化は特にないのぅ』
「ふうん」
常緑樹が多いんだろうか。それでは全く参考にならない。俺は首を捻った。全くもってどうしたらこの森に四季があるかどうか把握できるんだろうか。やはりテトンさんに聞くしかないかとため息をついた。
気を取り直して夕飯である。水筒を開けたらまたマヨネーズだった。ポテチにマヨネーズを添えてイタチたちに進呈した。焼いた肉にマヨネーズをかけるとじゅわじゅわと油が溶けていく。そこに醤油もかけて食べると絶品だった。日本人はやっぱりマヨ醤油とかバター醤油だよなー。あ、バターほしいかも。
中川さんも肉にマヨ醤油をつけてばたばたと暴れていた。
「おいしいいい~~~!!」
うんうん、ごはんがおいしいって幸せだ。今日はごはんも炊いたしな。ミコはスライスしたタケノコにもマヨネーズをつけて幸せそうな顔をしていた。かわいい。
そんな風にしてワニの縄張りで一晩過ごした。
イタチたちの毛がマヨネーズで汚れたので有無を言わさず洗浄魔法をかけた。その後は恒例の毛づくろい大会である。みんなで団子になって毛づくろいしていた。
翌朝、イタチたちが俺のビニールシートの上で寝ていたせいか、ワニの襲撃はなかった。朝起きたら巨大なワニの顔が目の前にあるとか、ホント心臓に悪かったから助かった。
朝食を食べ、ワニに挨拶をする。
「ありがとうございました。助かりました」
『……次はそやつらを連れてくるでないぞ!』
「保証はできかねます!」
即答して、またオオカミに乗りみんなで風になったのだった。
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