第4話 日曜日の朝
ブログを始めて半年ほど経った。毎日一つ短い文章でもいいからアップしようと四苦八苦している。日曜の朝喫茶店で思いついた言葉を手帳にメモして、そこから物語を連想ゲームのように搾り出す。
上手い言い方が見つからずに黙り込む。席に腰掛け、モーニングを頼んだ後ノートを開いてこの作業を始めると、我が相棒は、新聞や雑誌を取りに行く。必ず車の本と旅行の本をひと抱え小脇に挟んで戻ってくる。
時間が経ちコーヒーが冷める。夫は「もう飲まないの」と世話を焼いてくるが私は、冷めた珈琲も好きなんだ。とちょっと睨んで、飲まれてしまわないように牽制する。
そうしないと夫に飲まれてしまう。夫は食べるのが早くて、目の前にあるものをどんどん口に運んで綺麗にたいらげてしまう。当然人の分まで気にかかる。そのままにしておけない夫はすぐに皿を空にする。
どっちでも良いものは放っておけば無くなるので片付いて良いが、食べられたくないものを自分のペースで置いておくのは至難の業だ。
食べることより寛ぎを優先させたい。こうして訪れたせっかくの日曜日、雰囲気の良い喫茶店を探して走ってきたのに、あっという間に終わってしまうこの時間が惜しくてたまらない。
時間を大切に使いたいのに皿がカラッポになってしまったらお店に居られない気分になる。
スタッフのお嬢さんも空になった途端片付けにくるので油断できない。私の思惑と夫の思いは全然違ってチームワークが悪い。
そういう環境の中で文章を考える。刺激があって考えられるものも有るし、まったく不可能なものも有る。空想を呼び起こすアイテムは雑誌でも、コーヒーカップの絵柄でも、店内のディスプレイでも何でも良い。なんでもないものに想いが留まり物語が動き出す。
そんななんでない夫との時間が好きである。あれこれと駆け引きを考えながら一緒に居られることを楽しんでいる。
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