第69話 2回目のダンジョンアタック9
9階へ降りていく人達を見送り、私たちは拠点の焚き火でのんびりと過ごす。
「私ももう一回下りたかったな」
「霜降り豚肉……」
「食べれないんじゃ辛いだけだって」
オーク肉に未練の有る葵。
それを宥める私。
「よく食べようと思えるね……」
私たちの食欲に伊勢さんが苦笑しながらそう言った。
「美味しそうじゃないですか」
「トンカツ、豚丼、生姜焼き、かつ丼」
食べ物の名前を羅列しながら首を上下に動かし同意を示す葵。
「美味しそうではあったよ? でも衛生面に難ありじゃないかな?」
「地面に直接ついてないですよね」
何故かお肉だけは地面に接しない。
だから余計な菌は付いていないと思うのだけども伊勢さんはそう思わないようだ。
「検査はしてないよね?」
「……そうですね」
「通常の食肉は幾重もの検査がなされているけど、あのオーク肉はそれが無い。 だから僕は食べたいと思わないな」
安全性に疑問を抱いているようだ。
そう言われるとそうかもしれないなと納得する。
私は理性じゃなく、感情で食べたいと思うだけだからそこまで考えてなかった。
「オーク肉を鑑定してもらって、さらに安全性を検査してもらって合格がもらえたら食べてみたいとは思うけどね」
「そこまでですか」
「そこまでですよ。 だから僕はこの下級回復薬も検査結果が出るまで口にはしたくないかな」
そう言って伊勢さんは支給された下級回復薬を手に持った。
「これも鑑定で下級回復薬と名前が分かった。 効果も分かった。 ただ食品としての安全性はまだ検査されていないだろ?」
「これ鑑定されてるんですね……そっか。 下級回復薬って名前分かってますもんね」
私は優奈の鑑定で下級回復薬が名前だと知っている。
けれどこれがドロップした時は名前はおろか触れて大丈夫かどうかも分からなかったね。
「うん、アイテムの鑑定で下級回復薬って出たらしいよ」
「アイテムの鑑定も出来るの? スカウトして回ってる人?」
そこで葵が会話に参加してきた。
「そう、その人。 アイテムの鑑定も出来るらしい。 だけど、人材にドロップアイテム。 鑑定しなきゃいけない物が大量にあり過ぎて追いついていないらしいよ」
「……あ、ここだけじゃないのか」
「……そう言う事。 鑑定できる子1人しか見つかっていないらしいからね」
「……1人で人もアイテムも全部鑑定ですか……大変ですね」
優奈を紹介したら優奈は一生鑑定漬けの生活かもしれない。
というかさせられるだろうな。
優奈が望まないのであればこれは不用意に話をしてはいけないなと、改めて自らを律することにした。
伊勢さんや葵とそんな話をしながら拠点の護衛時間を潰した。
「そろそろ戻ってくるかな?」
時刻は16時過ぎたところ。
「お湯沸かしますね」
「水補充してくる」
レトルトを温める用のお湯を沸かす。
葵は余った魔力でウォータータンクの水を補充しに行った。
「僕はそっちのゴブリン退治してくるね」
鈴が鳴る。
どうやら魔物が来たみたいだね。
「了解です」
物資を置いているテントから人数分のレトルト食品を取ってくる。
ごはんにカレーだ。
インスタントのお味噌汁も準備する。
箸は使い捨て。
ちなみに広場の拠点の近くに穴を掘り、上の階で捕まえてきたスライムを入れている。
そこに生活してて出たごみ、燃えるゴミも生ごみも、使い捨てトイレのゴミなんかも入れる。
スライムは何でも溶かしてくれて分解してくれるので助かるな。
一家に一匹欲しいかもしれない。
そんな便利さがあった。
ゴブリンの処理を終えた伊勢さんは戻ってきた人たちのドロップアイテムの仕分けをしやすいように物資保管のテントを開けて整理し準備し始めた。
「あー疲れた」
「おかえりなさい。 レトルト温まってるよ」
「お腹減ったー」
準備が終わると探索に出ていた人たちが帰還してきた。
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