第68話 2回目のダンジョンアタック8



「柊さん拘束を」


「わ、分かりました!! 『バインド』」


片方に重りをつけたトラロープをオークに向けて投げる。

適当に投げたようにしか見えないロープが意志を持ったようにオークの足元に絡み付く。


オークはバランスを崩し倒れ込んだ。


そのままロープは足元からどんどん上へ這い上る。


「フッグォオオ……」


「柊さんのスキルも効きますね。 今のうちに資料撮影を」


「残り2体はどうしますか?」


「あ、ちょっと待ってくださいね」


私にそう言うと、安藤さんは縛られたオークに手を掛けた。


「よっと……」


掛け声をし、オークを引きずる。

どうやら残り2体を排除するのに邪魔にならない場所へ移動するようだ。


オークの身長はおそらく2m超え。

持ち上がりはしないものの、それをさして苦にする様子もなく引きずっていく安藤さん。


それを見てつくづく職持ちは人間離れしていっているなと思った。



十分に離れた場所に移動し、


「茜さん後でこっちので試しますか? それともそっちので試しますか?」


「こっちの試していいの? こっちの2体貰うよ!!」


「……はい、お願いします」


戦いたくてウズウズしていた茜は安藤さんの質問に即答してハンマーを構えた。

「いっくよー!!」


「待って待って!! 解除解除!!」


駆け出していく茜を見て慌てて結界を解除した。


突然目の前の壁が無くなりバランスを崩すオーク。

少し前かがみになって、前に出ていた腕を足場に茜が駆け上がる。


オークが驚き顔を上げる。

その眼前にはすでにハンマーが迫っていた。


「てやっ!!!!」


当たった瞬間にミシリときしむ音が聞こえたと思ったら、何かが折れるような、壊れるような、鈍い音があたりに響いた。

茜の馬鹿力はオークにも通じたみたいでオークは光となって消えた。


光りになって消える間際に息絶えたと判断した茜は消えゆくオークを足場にし、もう一体のオークへと飛び移った。


呆気にとられるオークの眼前にはまたしてもハンマー。


それを見て、よくもまぁ頭から潰せるものだと感心する。


無事に2体目のオークも光になり消えると茜は地面へと軽やかに着地した。


「つまらぬものを叩いてしまった」


「もぐらたたきみたいに言わないの」


「ゴブリンよりは硬かったね」


「そうなの?」


オークの方がゴブリンの何倍も大きい。

その分頑丈だったんだろうなと思った。


「嬢ちゃん達、手が空いたらドロップアイテム拾ってくれな」


浦重さんの言葉で忘れていたドロップアイテムのことを思い出した。


了解ですと返事をし、落ちていたアイテムを拾う。


オークから落ちたアイテムは下級回復薬と魔石のような物。 オークの耳? と豚足っぽいものと豚タンっぽいものと肉。


肉、ブロック肉しかも豚バラ、豚ロース、豚ヒレみたいに出てくるお肉にも色々種類があるようだ。


「……このお肉めっちゃ霜振ってるね」


「見るからに高級そうなお肉だな」


「この赤身のお肉も美味しそう……」


「肉、肉」


あの見た目から想像もつかないような美しいお肉が出てきたではないか。


「桜井さん、オーク居たら教えて。 速攻で狩ってくる」


この肉のお陰でみんなのやる気が急上昇した。

が、安藤さんが戻って来てすぐ正気に戻った。


「このお肉も提出しなきゃならないですよ」


その一言でみんなのやる気は急降下し、食べられないお肉を狩るのも辛いと、早めに拠点へ戻る羽目になった。


拠点に戻ったら戻ったで正気に返ったけどね。

肉の為にダンジョン探索してるわけじゃないって。


お昼が近かくてお腹が減ってたこともあるのかな? いや、確かにお肉が出てからお腹の減りが早かった気がするよ? やっぱりお肉の魅力に取りつかれたというかなんというかなのかな。



午後からはメンバーを変え、再び9階へ。

今回私と葵と伊勢さんがお留守番になった。


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