第15話 訓練②
「次は俺だ!」
やはりというか、黄色髪の男のクラスメイトが出て来る。
やる気に満ちているというか、彼の姿を見て、周りのクラスメイト達が「やれやれ」と言うのが面白い。
「ああ。俺は構わない」
「ふん。さくら~! 残念だったな!」
「さくらって呼ぶな! 雑魚!」
「なんだと! 負けたくせによ!」
「お前に負けてねぇ! お兄様に負けたんだよ!」
「ふん。そのお兄様を俺がボコボコにすれば、俺の勝ちだろう!」
「その前に私がボコボコにしてやるよ!」
「ま、待て! お前は負けたんだから、俺が先だろう!」
「お前って呼ぶな! 雑魚!」
…………。
目の前で繰り広げられるコントに、そうか…………これが青春というモノか。いつ終わるのか、ただただ待っているけど一向に終わる気配がないな。
「こほん。俺は構わない。さくらちゃんは一旦休むといいさ」
「……あぃ~」
みんなが眺めている場所に戻ると、妹が真っ先に「どうよ! うちのにぃ強いでしょう! かっこいいでしょう!」と、さくらちゃんに言い寄っていた。
それに反応するかのように嬉しい表情を浮かべていて、恐らくそれが目的だったのかと思えて苦笑いがこぼれた。
「さて、まだみんなの名前を聞かされていなくて、名前を教えてもらえるか?」
「いいぜ! お兄様よ! 俺は
「よろしく。いつでも掛かって来ていいぞ」
「その自信…………へし折ってやるよ!!」
彼の周囲に目に見える程にバチバチと音を立てる細い雷が見えた。
天能の色が濃くなれば濃くなる程に髪色が変わる場合がある。
一番の条件として、その天能が――――自然系天能である場合だ。
そもそも天能には大きく分けて、五つの種類に分かれている。
一つ目の『自然系天能』は、天能の中でも最強種と呼ばれており、火や水、雷などを発生させられる天能を指す。それに伴って、その自然を
二つ目の『能力系天能』は、俺の天能や清野の天能のように、不思議な力を得る天能を指す。例えば清野の『魔導ノ極』の場合、魔法に関する全ての能力が最上級の能力となり、魔法では誰よりも強くなれたり、俺の場合、全ての被害を無効化する能力だったりする。
三つ目は『変化系天能』は、妹のように何かしらの力を変える天能である。例えば、妹は『
四つ目は『制作系天能』は、戦闘には向いていないが、天能によって魔物の素材で何かを作る事ができる。作る種類も天能次第で幅が広く、戦闘で使う武器や防具から、便利な機械への応用ができる天能もあるそうで、制作系天能はある意味世界で最も重宝される天能でもある。国よりも企業が多額の報酬を払って囲うため、国に所属する制作系天能持ちはあまりいない。
五つ目は『特殊系天能』は、天能の中でも最も珍しい天能で、その力が特殊すぎるモノが多い。文献に残っている特殊系天能持ちには、自分だけ瞬間移動――――転移ができる人がいたそうだ。ただ、それ以来生まれたという事はなく、転移は非常に難しい天能だったらしく、彼はあまり力を使いたがらなかったとされている。
そういう感じで分かれている五つの種類の天能。
彼の髪の色と目に見える力で、雷を発生させる天能だと簡単に分かる。
そういえば、さくらちゃんには負けたと聞いているが、自然系天能はこと戦闘に限っては最強の天能なのに、どうして負けたのだろうか。
まぁ、いくら潜在能力が最強天能だとしても、まだ開花してまもなく、全てを使える訳ではないので、それで負けているのかも知れないな。
少なくとも自然系天能というだけで、この中では一番の成長株なんだろうな。
そういや、もう一人青い髪の男子がいたな。彼もまた一番の成長株になれそうだな。
「お兄様ああああ! 行くぜえええええ!」
両手で何かを掴むと、拳から雷が現れる。
眩しいけど、見つめられない程ではないが、雷を目の前で見られるって中々珍しいことだ。
彼が投げる仕草から、雷がこちらに飛んでくる。
もちろん、避ける事はできなかった。
それ程雷は速かったのだが、まさかの無痛に驚いた。
それからいくつかの雷を投げつけてくるが、全て当たってもダメージ一つない。
そもそも俺の天能はダメージを受けないので、いくら攻撃されても俺が負ける事はないだろう。
でも問題はそこじゃなくて、全く持って痛みがないのだ。
雷と言えば、ものすごい高い電圧で触れただけで致命傷になるイメージがあるのだが、彼が放つ雷は寧ろかゆい?
電気を使ったマッサージがあるくらいで、ダメージというより、身体のコリをほぐしてくれる感覚?
「ち、ちくしょ!」
「…………」
「こうなったら……超必殺技でいく!」
両手を合わせて、ぐぬぬぬぬと声を漏らしながら雷を両手に集める。
そうする事、三十秒。
「喰らえ! 必殺! ライトニングスピアあああああ!」
放たれた雷が俺の全身を襲う。
「…………ありがとう。とても気持ち良いマッサージだったよ」
ライくんがその場で崩れ落ちた。
それを見つめるさくらちゃんの冷たい視線が、手加減して負けたとかの類ではない事を示していた。
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