第13話 妹の友人
臥竜岡さんの訪問や木山先生との話し合いで、すっかりお昼の時間となったので、そのまま食堂に向かう。
特別クラスの棟には専用食堂があるので、昼食もタダで食べれたりと優遇されている。
食堂には何人かの生徒が食事を取っていて、俺達が入った途端、全員の視線が俺達に向く。
何か物珍しい事でもあるのか?
と、その時、奥からこちらに向かって全力ダッシュしてくる女子が一人。
「ななみ~ん~!!」
妹に向かって飛び込むと、慣れたように妹が避けて彼女の身体に手を当てると、一瞬で彼女は身体が驚く程の速さで前進して壁に激突した。
「ぐ、はっ…………こ、これも……ななみんの…………愛……」
「愛じゃないよ! にぃ、あっちに行こう」
あはは……あのまま放置していいのかな?
妹に手を引かれて食堂のカウンターに向かう。
すぐに「にぃはこれとこれとこれ」と食べるモノを指定される。
家でもそうだけど、料理は妹担当で食べるモノは全て妹の許可を取らないといけないので、妹に選んでもらうのは仕方のない事だ。
何だかこういうのも久しぶりで笑みがこぼれてしまう。
妹から渡された配膳にはバランスの良く並んでいて、いつも食事の健康に気を使う妹らしい配膳内容だった。
テーブルに座っていると後ろから凄まじい気配の視線がこちらに向く。
「七海。友達なのか?」
「ま、まぁ一応?」
まだ入学して三日目で既に友人がいるのは良い事だ。
特別クラスは人数も少ないので、仲良くなる時間も早かったりする。
清野達とも仲良くなるまでそう掛からなかったからな…………試練ノ塔での出来事はあるにせよ。
そんな暗い事は悩まず、今は食事を食べに行こう。
と、その時、隣から禍々しい気配を帯びて、椅子の隣からこちらを見つめる妹の友人が見えた。
うわっ、めちゃくちゃ怖い。
「ななみ~んのお兄様ですか?」
「あはは……妹と仲良くしてくれてありがとう」
「うおおおお! お兄様!」
「近寄るなっ~!」
身体を乗り出して友人さんを押しやる。
妹がここまで仲良くする友人がいるのはとても嬉しい事だ。
俺達兄妹はあまり他の人と関わりを持ってこなかったからな。
「お兄様! 私、
「二階堂さんね」
「さくらちゃんって気楽に読んでください! お兄様!」
妹が全力で引きはがしにかかっているけど、意外にタフで全く動じない。
天真爛漫な笑顔。そういう印象があった。
しかし、次の瞬間、笑顔の
「お兄様って――――――最強天能をお持ちでしたよね?」
彼女だけではない。
後方から感じる視線は、狩人のようなものを感じる。
少なくとも、ここが特別クラスである所以だろう。
「ああ。6人のうち1人さ」
「へぇ~。いいなぁ――――――私も一年早く生まれたら良かったな~」
なるほど。
彼女の、いや、ここにいる全員が思っている事がやっと分かった気がする。
それだけ彼女達はエリートである事にプライドを持っているはずだ。
その中でも俺達6人が持つ最強天能は、Sランク天能よりも
全員がSランクではないにせよ、ここにいるエリート達がその理不尽さに不満を持たないはずもない。
「確かにそういう考えもあるな。ただ一つだけ言っておくと――――試練ノ塔はそう甘くない」
「へぇ~」
「まぁ、俺も
「えっ!? お兄様って同じクラスなんですか?」
「ああ。一年間授業を受けていないからね。留年という形にはなるが、1年生から過ごす事になったよ」
「それはよかった! 午後から楽しみにしてますね~お兄様!」
いくら妹が引っ張っても全く
ひとまず、息が上がっている妹の頭を優しく撫でて落ち着かせて、昼食を食べ進めた。
昼食が終わり、チャイムと共に教室に向かう。
やはり俺達が使用していた教室は、妹達が使っているようだ。
「君が水落蒼空くんだね?」
廊下の後方から声が聞こえて、振り向くと、スーツ姿で胸元が開いたシャツを着ている女性だ。
「はい」
「初めまして。今日から君の担任になる
「よろしくお願いします」
「ではこれから自己紹介とかして貰うわよ。それと、ななみん」
「あ、あい?」
冷酷非情な視線が妹に刺しこむ。
「時間よ?」
指で教室を指すと、さすがの妹も慌てて教室に入っていった。
「はぁ、君たち兄妹の事は聞いているわ。でも学園内ではほどほどにね」
「あはは……気を付けます」
「ななみんの性格を考えれば難しいだろうけど、頑張ってちょうだい」
先生…………よくご存じで……。
先生に連れられ、教室の中に入る。
意外と中は静かに待っていた。
天能の発現によって、強い天能、特にSランク天能を授かった者は髪の色すら変わる場合がある。
中には黄色い髪と青い髪の生徒が目立っているが、他にも7人の生徒と妹がいて、全員で10人だ。
「こちらは新入生となるわ。本来なら君たちより一つ上なんだけど、色々事情があって1年生からやり直す事になったわ。落ちこぼれとかではないので気を付けるように――――多分ここにいる誰よりも
先生の煽り文句に、妹を除いた全員の視線から挑発的なモノを感じる。
今の俺の強さはどんなモノか分からないけど、試練ノ塔で確実に強くなっているはずだ。
せっかくの妹の前だ。あまり、舐められないようにだけしたい。
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