3-2
次の日、僕は仕事を終えて、急いで帰って行った。部屋に入ると、やっぱり彼女は居て、キッチンのテーブルにうっぷして、うたた寝していた。今日は、髪の毛を留めていないようで、サラサラの長い髪の毛が乱れていた。絵を描いていたのか、途中のままで、どうやら、修学旅行でいった厳島神社の光景を思い出しながら描いているみたいだった。
僕が傍に立っても気が付かない様子で、衝動的にその髪の毛に触れると、ビクッとして
「あっ ぁー 私 寝てしまった お帰りなさい」
「お帰りなさいじゃぁないよ 不用心だろー 独りで居る時は鍵ぐらい掛けときなさいネ」
「あっ そうか なんか 安心してしもたー でも ちゃんとね お風呂とお便所 掃除しておきましたよ 旦那様」
「あんなー ・・・ ななのちゃんは・・ まぁ いいやー」
「冷蔵庫に白菜のお漬物入れておいたの 家から持ってきたんだけど おいしいよ」
「おっ それは ありがたいけど ななのちゃん そんなこと気使うなよー」
「いいの いいの こんなものしか無かったんだけど シュウ君に食べて欲しいから なぁ ななが 来てたら迷惑やろかぁー?」
「いゃ そんなことはないよー 君が居ると楽しいよ ただ まわりからしたら 変に思われる」
「そんなもんなんだー ななは シュウ君に迷惑がかからないように 目立たないようにするから ここに、置いてよー」と、訴えるように・・
彼女は長いまつ毛の奥が潤んでくるような眼で見つめてきた。その時、僕は、衝動的な気持ちを抑えながら
「そんな悲しそうな眼をするなよー 追い出すようなことはしないよ 君は笑顔でいるほうが可愛いよ」と、言うと、途端に僕にとっては天使のような笑顔を見せてきた。だから、やっぱり突き放すようなことは出来ないし、彼女が来るのを心のどこかには期待している部分もあるなと思っていたのだ。
その後も、描いていた絵の説明をするななのちゃんの、時々、髪の毛を耳の後ろにかきあげるしぐさに、僕はどきどきしながら聞いていたのだ。辺りも暗くなってきたので
「もう 暗くなるから帰りなさいよ 送って行くよ」
「いいの 目立たないように帰ります ありがとうネ 明日は、公園にいくね」と、帰って行ったのだ。
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