第23話 14組

 私の中学はひとつの学年が、14組もあった。


 マンモス校である。


 3年生になったとき、私は、その14組になった。


 14組の教室は、校舎の一階のいちばんはしっこで、環境がひどかった。


 テニスコートに近いのが、なんだった。


 テニスコートには、金網が張り巡らせてある。


 テニスの授業で金網にボールが当たるたびに、バッシャーン! バッシャーン!  と大きな音がして、14組の授業を妨げた。


 動物飼育舎、に近いこともなんだった。


 動物飼育舎には、ヤギと、ニワトリと、ウサギと、オカメインコ、が飼われていた。 


 教室の窓を開けると、けものの臭いが漂ってくる。


 ニワトリは、体内時計が狂っているのか、何時なんどきでも、コクェコッコ―――ッ! と大声で鳴いた。


 ヤギも大きい声で、バアァァァ! と鳴いた。バアァァァカ! に聞こえた。


 オカメインコの夫婦は、思春期の中学生の前で、情熱的に愛を交わした。


 飼育係がカギをかけ忘れた時は、けものたちは14組の教室に侵入した。


 ヤギはノートをかじり、ニワトリとウサギは跳ねまわり、オカメインコは空中からフンを落とした。

 

 14組は授業そっちのけで、捕獲に走り回らねばならなかった。


 受験をする3年生で、これはキツイ、と全員が、学校と自分のうんを恨んだ。


 ところが、14組の受験合格率は、良かった。


 色んな妨害の入らないうちに勉強してしまおう、と集中力が上がったからかもしれない。


 結果オーライで、14組は卒業式を迎えた。


 テニスコートの金網前で、ヤギと記念写真をとった14組は、クセモノ! であった。

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