パンツ予知が広まっている!?

 寿さんの誤解を解き、連絡先を交換し合った翌日。俺はいつも通り登校する。


昨日あんなに話したのは、パンツ予知があったからだ。

あの件が終わった以上、前みたいにお互い関わらないはず…。


そう思っていたんだが、朝の教室に着いて早々…。


「あ、速見君。ちょっと良いかな?」

離れたところにいる寿さんがそう言いながら、手招きしている。


彼女の隣には、女子が1人。…名前、何だっけ?

それはいいや。急いで向かおう。


俺は自分の席にカバンを置いた後、寿さんのそばに向かう。



 「寿さん? 何の用?」

俺は用件を訊く。


「はやみん…、パンツを見ると予知できるってホント?」

寿さんの隣にいる女子が、俺の耳のそばで囁く。


俺の名前は速見早太はやみそうただから、名字をいじって『はやみん』か。


ってそれよりも、何でこの人にバレてるの?

俺は寿さんを見る。


「昨日のこと、恵美に話しちゃった。秘密って言われてないし良いよね?」


マジかよ…。確かにとは言ってないが、他の人に話すとは。

内容が内容だけに、広まってほしくない…。


俺はさっき囁いた彼女を見る。


「はやみん。心配しなくても、あたしは秘密にするよ♪」


…話が分かる人で助かった。


「寿さん。なるべくあの事は話さないでほしい」

ここはしっかり言っておこう。


「…わかった。もう言わない」


よし、これで広がる心配はない。

あと気になるのは、寿さんとと呼ばれた女子の関係だ。


訊くなら今しかないな。



 「あのさ…。言いづらいんだが、君の名前なんだっけ?」

俺はと呼ばれた女子に尋ねる。


「はやみん。このクラスになって結構経つよね? 名前、覚えてなかったんだ…」

落ち込む彼女。


俺が寿さんのことを覚えているのは、隣の席になったからだ。

それより前は、見た事はあっても名前は覚えていなかった…。


人の名前って、意識しないとすぐ忘れるだろ?

…俺だけなのか?


「速見君。彼女は両角もろずみ恵美えみ。私の幼馴染なの」

寿さんが説明してくれた。


「はやみん。ちゃんと覚えてね!」

両角さんにクギを刺される俺。


俺が悪いから、反論はできない…。


「わかったよ。両角さん」

これからは呼ぶ機会がなくても、名前はちゃんと覚えよう。


いつ今回みたいなことが起こるかわからないし…。



 「…寿さん。結局俺の呼んだ理由は何?」

両角さんの件で、話が脱線したからな…。


「実はね、恵美も君に予知して欲しいんだって」


「はやみん。おねが~い♪」

甘えた声を出す両角さん。


「俺の予知は、俺自身もわかっていないことが多いんだ…」

これを両角さんが知っているかどうか?


「知ってるよ。明日香から聞いたし」


知っててパンツ予知してほしいのか…。


「はやみんの予知を、実際に体験してみたいんだよ。ねぇ、良いでしょ?」


2人は周りに言いふらさないし、別に良いか…。


「いいよ。やろうか」


「ありがと~。…ここでやっちゃう?」

両角さんがスカートのすそを持つ。


「ちょっと恵美。場所を考えて!」

制止させる寿さん。


俺達は今教室にいる。クラスメートが大勢いるこの場でやることではない…。


「仕方ないね。場所変えよっか」

そう言って、教室を出る両角さん。


どこでやる気なんだろう? 俺と寿さんは、両角さんについていく…。



 両角さんが入ったのは、女子更衣室だ。


「さすがにマズくないか? 男の俺が女子更衣室に入るのは…」

隣にいる寿さんに訊く。


「着替えてる人がいなければ、ただの部屋じゃん。何が問題なの?」

寿さんが理解できない様子を見せる。


そうだけどさ…。俺が意識しすぎている?


「この時間なら、絶対人は来ないよ。心配しなくて良いでしょ」


逆の立場だったら、寿さんは躊躇なく男子更衣室に入れるのか?

訊いてみたいが、時間が惜しい。気にしないでおこう。


女子更衣室に入る俺と寿さん。入って早々、両角さんはスカートをまくり上げた。


ヴィジョンが見える。


(数学の田中先生に当てられて、困っている両角さんだ)


「何が見えた?」

興味津々な様子で訊いてくる両角さん。


「今日の数学、両角さん当たるよ」


「…それだけ? あたしに危機は迫ってないの?」

納得できないか…。


「あのトラックの予知が異例だったんだ。今まで見た予知は、こんなのだよ」


妹の早苗が転んだり怪我するのを阻止する程度だからな…。


「良かったじゃない。危機なんて迫ってないほうが良いって」

寿さんが納得してない両角さんを説得する。


「そっか…。明日香の言う通りだね。…ついでに明日香も見てもらう?」


「そうしよっかな。速見君、お願い」

そう言って、スカートをまくる寿さん。


この2人、躊躇なく俺にパンツを見せてくるな。

どういう事なんだろう? 2人にとっては、あいさつ代わりなのかな?


…ヴィジョンが見える。


(バレーボールで突き指をして痛がっている寿さんだ…)


「どう?」

結果を訊く寿さん。


「バレーボールで突き指してたよ。気を付けた方が良さそう」


「なるほど…。わかったわ」



 その後、SHRショートホームルームの始まりを知らせるチャイムが鳴ったので、俺達は女子更衣室を出た。


俺のパンツ予知が、役に立っていることを実感できる。とても嬉しいことだ。


2人が望むなら、パンツ予知を続けよう。そう思う俺であった。

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