第5話 運動できない? あなたは悪くない!
運動しましょう。
運動は大切。
テレビでも、本でも、さんざんそう言われていますね。運動の大切を強調する言説に会わない日はない。そう言ってもいいぐらいですね。
曰く、運動することで心もスッキリする。
曰く、運動することで脳も活性化する。
曰く、運動することで骨から若さを保つメッセージ物質が放出され、老化を抑えるetc.etc.
そんなことはわかってる。もう耳にできたタコでタコ焼きを作れるぐらい聞いている。運動しなくちゃいけないってわかってる!
でも、できない。
そうですよね。
運動すべきだ。
運動しなくちゃいけない。
でも、できない。
今日も今日とて、運動の大切さを延々と説くテレビを見ながらゴロゴロ寝そべり、お菓子をつまむ。
そんな毎日ですよね。
えっ?
自分はちがう?
ちゃんと毎日、運動している?
だめですよお、そんな見栄張ったって。
見えてますからねえ。
すっかり緩んだ体の線を隠すためにあえてダブダブの服を着て、寝転がってはお菓子を食べてるその姿。すっかり張りついた下っ腹の贅肉をつまみつつ『運動も続けられない、間食もやめられない。自分はなんて意志の弱い、駄目な人間なんだ』と、そう落ち込んでストレスでよけいに食べてしまう悪循環。しかし!
あえて言おう! あなたは悪くない!
そう。
運動が続かないのも、間食をやめられないのも、あなたの意志が弱いせいでは決してありません。すべては習慣、習慣の力なのです。
あなたが運動を続けられないのは意志が弱いせいではありません。
『運動しない習慣』が身についているからです。
間食をやめられないのも意志が弱いせいではありません。
『間食する習慣』が身についているからです。
習慣こそは人間の行動を支配する最強の力。
それは、意思の力でどうこうできるものではないのです。ですから、運動できない、間食をやめられないからと言って自分を責めることはしないでください。そんなことしたって百害あって一利なしです。必要なのは悪しき習慣を打ち破ること。新しい習慣を身につけ、上書きすること。その一択です。
では、どうすれば新しい習慣を身につけ、悪しき習慣に上書きすることができるのか。
間食に関してはまた後で述べるとして、まずは運動の習慣化から話していきましょう。
運動する習慣を身につける方法。
それはずばり!
毎日やる!
これです。
『それができないから苦労してるんだろ!』
はい、全世界一二八カ国ぐらいからそんな贅肉の叫びがあがりましたね。
あなたもそうですよね。
下っ腹の贅肉をプルプル言わせながら叫びましたよね。
叫んでないとは言わせませんよ(笑圧)。
しかし!
そう叫んだ時点であなたはすでにひとつの大きなまちがいを犯しているのです。
そのまちがいとは『毎日やる』の意味を誤解していると言うことです。
毎日やる。
そう聞いてあなたはどう思いました?
ノルマを毎日きっちりこなすこと。
そう思いましたよね?
例えば、一日に腕立て二〇回、腹筋二〇回、スクワット二〇回やる。
そう決めたなら、その回数を毎日きちんとこなす。
それが『毎日やる』と言うことだ。
そう思いましたよね。
それがちがうんです。
回数なんか忘れてください。
やりたくなかったらやらなくていいんです。
予定は破るためにある。
これが合い言葉です。
では『毎日やる』とはどういうことか。
一回でいいからやる。
そういうことなんです。
腕立て二〇回をノルマとしているならたった一回、やればいい。
毎日二キロのウォーキングをノルマとしているなら靴を履いて家から一歩、出ればいい。
『そんなんでいいのか⁉』
またしても全世界一二八カ国から歓喜と懐疑の叫びがあがりましたね。
いいんです。
たった一回でも運動は運動。脳にはちゃんと『今日も運動した』という記憶が刻み込まれます。その積み重ねこそが運動する習慣につながるのです。
やりたくないならやらなくていい。
ノルマを全部こなすのはやる気になったときだけでいい。
ただし、どんなに気分が乗らなくても『たった一回』だけは必ずやる。
それを守ってください。
私もそうして『運動する習慣』を身につけてきました。
おかげで、もう何年も運動を続けていますが、『今日はもういいや』とすぐに放り出すことなんていまでもしょっちゅうです。それでも、94のウエストサイズが76まで落ちたんです。リバウンドだってしていないんです。だから、それでいいんです。
それに何より、簡単に放り出してしまうときもある一方『今日は気分が乗らないから適当でいいや』なんて思っていたのにいざ運動をはじめると結局、きっちりやっていた、なんていうことも同じぐらいよくあります。
習慣化とはそういうことです。
一度、習慣になってしまえば体がやらずにはいられない。
無意識のうちにやっている。
それが習慣化。
無意識のうちにゴロゴロしているように、
無意識のうちにお菓子に手を伸ばしているように、
無意識についつい運動してしまう。
『運動する習慣が身につく』とはそういうことなんです。
そして、習慣化の方法はいま言ったとおり。
一回でいいから毎日やる。
これです。
特に最初のうちは面倒くさくて、おっくうで、とてもやる気にならないでしょう。やったとしても本当に一回限り、せいぜい二、三回。そんな日がつづくでしょう。
でも、それでいいんです。
だって、たった一回だってたしかに運動したんですから。
いままで一回だってやっていなかったのにですよ?
すごい進歩じゃないですか。
しかも、毎日まいにち運動するなんてすごいことです。
そのことを認めましょう。そして、とにかく続けましょう。
回数なんていいんです。
続けること。
毎日やること。
それ自体が目的です。
ノルマの達成なんて成果を出すために金をもらっているプロのやること。私たち一般人の目的は最後まで人生を生ききること。そのために必要なのはノルマの達成ではなく『続ける』ことなんですから。回数とか、ノルマとかどうでもいい。とにかく、続けることだけを考えましょう。
そうして、続けるうちに身も心も慣れてきて段々と回数を増やせるようになるのです。
ぜんぜん頑張らなくても運動できるようになるのです。
私もそうやって運動を続けてきたんです。
つづいて運動を続ける第二のコツを紹介しましょう。
それは『休日を設ける』と言うことです。
先ほどの『毎日やる』とは矛盾していますが、それでもやっぱり休日というのは大切です。
人間、毎日まいにち気を張ってはいられません。
そんな風にはできていないのです。
休みは絶対に必要です。
それに、人間というのは不思議なもので『明日は休める!』と思うとなぜかやる気になるものです。私も何度もそう思いながら運動を続けてきました。
私の場合は木曜と日曜を休日に当てています。なぜ、はなれて休むのかと言うと、五日続けて運動するのはやはりしんどい、運動する習慣のついた身では二日つづけて休むと体がうずいて逆に辛い、と言うふたつの理由からです。
どんな形で休みを入れるかはあなたの好みと都合で決めればいいことですが、とにかく休むときはきっちり休んでください。やるときと休むときのメリハリはきっちりつけましょう。
まあ、そうは言っても『運動しない習慣』が身についている最初のうちは一回、休むとそのままダラダラと休み続けてしまうかも知れません。ですから、最初のうちは『たった一回』を毎日続けるのもいいでしょう。でも、ある程度、習慣化されて、運動になれてきたら完休にしましょう。
気を張り続けてはいけません。
緩めるときはゆるめる。
それでこそ一生、続けることができるのです。
さて、三つ目は、どんな運動をすればいいかですが、これはもうそれぞれの好みで決めればいいことです。体操やトレーニングを解説した本はいくらでもあるのですから、それを見て自分に合いそうなものを選べばいい。
とは言え、目的は生涯にわたって健康を維持することなのですからやはり、筋トレよりも全身運動の方がいいでしょう。私は気功法(気功砲ではない。念のため)と自重トレーニング(器具を使わない筋トレ)を中心にこなしています。時間にして三〇分から一時間というところでしょうか。真夏のダラダラ汗をかく時期や、体の冷える真冬はそうそうやっていられないので時間は結構かわります。前述の通り『今日はもういいや』とものの一~二分で放り出すことだってしょっちゅうです。
でも、それでいいんです。
だって、一分だろうが、一秒だろうが、たしかに運動したんですから。
それで、ウエストサイズが94から76まで落ちて、いまだにリバウンドだってしていないんですから。
頑張らない。
回数なんて気にしない。
習慣化。
それが、運動を続けるコツです。
さて、と言うわけで運動についてはこんなところです。
次回はいよいよ最重要課題、食事について語りましょう。
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