第42話 『悪女』の葛藤

「ねえ、瑠美夏。……君にとって僕はなんなの?」

 私があんたをどう思ってるかですって?

 決まってるじゃない。あんたはペ───

 ペットと……そう心の中で思おうとした私の考えが急にストップした。


 は本当に、私にとって家事をこなしてくれるだけのペットなのか。


 なんで? なんで今さらそんなことを思うの?

 こいつの言動がずっとウザいと思っていた。

 勝手に彼氏面して、周りにこいつが彼氏だと思われるのが嫌で、学校ではほとんど接触を避け、吹聴するのも固く禁じた。

 それでもこいつは嫌な顔一つせずに私の言葉を、約束なんかじゃなく、一方的な命令を聞き入れた。底なしのお人好し。

 彼氏面されるのは本当に我慢できなかった。でも、それ以外は……?

 こいつは私をいつも笑顔にしようと、その日の出来事やネットで調べたネタなんかを話してくれた。

 こいつは私が宿題をやっていないことを話すと、嫌な顔一つせずに代わりにやってくれた。しかも筆跡を私に似せて。

 こいつは私が体調を崩した時も、普段家にいない母さんの代わりに付きっきりで看病してくれた。

 でも、いつからか、こいつの話がだんだんとイラつくようになった。

 初めはそれだけだった。でも、次第に言動と、イラつく要素が大きくなっていった。

 こいつが私を『彼女』なんて言うから……私の隣にいつもいるこいつが我慢出来なくなり、次第に私から話しかけることはしなくなった。

 話しかけられても適当に相槌を返すだけで、まともにこいつの話を聞こうとも思わなくなった。

 そしてあの日……私はあの計画を実行した。

 そりゃあ、ちょっとはやり過ぎたかなって、後々になって思わなくもなかったけど、もうこれで彼氏面されることもなくなると思って、深く考えないでいた。

 そしたら、次の日からこいつは家に帰らなくなった。

 おかげで私の家は散らかり放題よ。

 そうよ。私にはこいつが必要。それは間違いないから……認めるわ。

 私の身の回りの家事をしてくれるから……だからこいつが必要なんだ!

 そうよ! 私が望んでるのは彼氏彼女の関係じゃない。

 !!

 私はニヤリと笑った。自分に


「あんたは、私にとってただ身の回りの家事をしてくれる、都合のいい……存在。私の言葉を全肯定して、ただ私の命令に従ってくれる……小間使い、雑用係。ただ、それだけよ」


『ペット』と言おうとしたら、何故か口がそれを拒絶した。

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