第22話 バーに行けないもどかしさとヤッホーブルーイングのクラフトビール

“リカー男子に恋をして第二回”


 新しいウィスキーのリカー男子を紹介していきながら、“バー・バッカス”のマスターにインタビューしたバーの楽しみ方や知っておくといいかもしれない事を展開し、以前何気なく入ったスタンドバー、そこでメーカーズマークのリカー男子コラボを行っている事、そして、記事を見たという方にはもれなくメーカーズマークのドリンクが200円引きで提供される事を告知している。さらに、同じくおススメのお酒をリカー男子として宣伝タイアップしてくれるお店の募集をかけてみた。


ところ……


「秋田、メール問い合わせが凄い事になってるぞ! オイ!」


 ファミリー居酒屋から、本格バーまで参加したいという申し出が大量にくる結果となった。コロナウィルスによる逆風でようやくお酒の提供が出来るようになった現在で起爆剤になると思ったお店も多いのだろう。それら一つ一つと唯は、会議アプリで連絡を取り合い、話を聞く事になり大忙し、さすがに酎ハイやサワーを推しているお店などは今回は遠慮いただく事にした。しかしファミリー居酒屋などので最近はやりのサントリー翠に関しては力を入れている店も多く、リナ先生に報告。リナ先生が苦手なお酒だけに、渋い顔をされたが、肯定的な意見から日本男子風のリカー男子を描いてくれた。


 仕事はアポ取りと面談、そして報告業務。残業の毎日の為、“バー・バッカス”に中々通えないなと思い夕食を作る気力もなかったので、コンビニで軽食や総菜を買って帰る時、何か飲みたいなとお酒コーナーを見て回る。アサヒ、キリン、サッポロと有名なメーカーのビールが並ぶ中、ヤッホーブルーイングのクラフトビールが目に入った。


「そういえば、クラフトビールのリカー男子も面白いってリナ先生言ってたっけ? ちょっと試してみようかな」


 購入したのは山の上ニューイ、インドの青鬼、僕ビール君ビールの三種類。このメーカーのビールの名前の付け方は独特だなと思いながら、家路につく。


「あー。マスターのお酒が飲みたーい!」


 あの店内で、マスターの声と笑顔に癒されながらおススメのお酒を飲む空間がとても恋しくなる。そんな事を言ってもお店に行って翌日仕事の為に我慢。この繁忙期のような忙しさがずっと続くわけじゃない。

 という事で今日はお惣菜をオツマミにクラフトビールを楽しんでみようと、


「なんか悲しい……ん? リナ先生からLINEだ」


“シャンパンうめーっす!”


 という事で本日はシャンパンを飲んでいるらしい、連絡こそないけど、横に美優の姿も確認できる。そして、意外とこのハブられているような気持ちになってなんとも言えない。切干大根の煮物をぱくりと食べながら、まずはインドの青鬼を飲んでみる事にした。


「これっ……美優さんは苦手そうだなぁ、随分苦い」


 香もわりとあってホップ感が強烈なので、苦手な人は苦手だろうなと思いながら唯は飲み進める。調べてみるとスパイスの聞いた辛い料理と相性がいいとの事なので、レトルトの辛口カレーを温めてスープのように合わせてみた。


「あっ、美味しい。私はインドの青鬼好きかな」


 とか言ってみても、相槌を打ってくれるマスターもいないし、なんか空しい。でもインドの青鬼もカレーも美味しいので次のビールを開けてみようと思う。次は……山の上ニューい。マスターに倣ってお酒を変える際はグラスも変えてみる事にした唯。


 何故なら……容赦なく、“バー・バッカス”での楽しそうな画像が次々に送られてくるのだ。律くんも合流したらしくマスターがシェイカーを使っている姿が動画で送られてきた。いつ見てもマスターは美人だ。立ち姿も表情も一点の曇りもない。そんなマスターを見ているとやや表情が緩んでいる自分がいて苦笑してしまう。

 次の山の上ニューイは先ほどと同じ琥珀色のビールなんだが、風味が全然違う。口にしてみると、爽やか。甘みという程甘みはないのだが、インドの青鬼と比べると苦みは殆どないと言っていいかもしれない。これはわりとどんなおつまみにでも合いそうなので、冷ややっこで食べてみる。


「んまい! これは美優さんでもいけそうね」


 あとはオニギリくらいしか食べる物がないのだが、オニギリでビールってどうなんだろうという美優の好奇心が、最後のクラフトビール。僕ビール君ビールと組み合わせる事にしてみた。


「一応シーチキンマヨにしてみたけど……」


 一番名前的にやばそうな感じがしたけど、僕ビール君ビール、プルトップを開けた瞬間、凄いいい香りが広がる。飲んでみて味がどうかだなとグラスを用意して一口。ホップは山の上ニューイより強くて当然、インドの青鬼より弱い。二つのビールの丁度間くらいだなと、シーチキンマヨを齧ってみる。


「合う! 結構おいしい! うふふ、たのしい!」


 一人でそうやって飲んでいると、唯はなんか空しくなってきたので、コンビニに行き、同じビールを数本購入すると、タクシーを拾った。


「郊外の高架下までお願いできますか? バーがあるんですよ」


 結局我慢できなくて、“バー・バッカス”へと同じ感動を味わう事にした。

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