第7話 記事の作戦会議とテキーラ・サンライズ
「秋田ちゃん、リカー男子に恋をして(仮)の予告コラム。結構反響あるみたいよ」
と上司の高橋キャップがそれぞれ楽しみにしている旨のコメントを唯に見せてくれる。大半はやはり乙女げーやその他もろもろで人気のリナ先生のイラストにつられた方が多いようだ。コラムよりもイラストを楽しみにしている旨、ただ気になった文言があった。
“酒呑様のLIVE動画から知りました。楽しみにしています”
「さけのみ様? なにこれ?」
スマホで検索してみると……群雄割拠のVtuber達の中で、その独特なエロボイスで人気を博している俺様系Vtuber酒呑(しゅてん)。凄い再生数にコメント数だ。唯はなんでこんな人が……と思うと、動いている3Dモデル、どこか見覚えが、登録アイコンを見てみると、よく知るイラストタッチ。
「リナ先生のイラストだ。それ繋がりで? えぇ! すごくない」
と小躍りするように唯は読み切りのコラム記事にとりかかる。これらの期待度に対して、そこまで人気がなければこれで終わり、唯は最初の第一階で、四大スピリッツを紹介する記事を書き、リナ先生にはそれぞれのリカー男子を描いてもらう事になっている。わかりやすくかつ興味をもってもらえるような記事。
ラムは唯が、ジンはリナ先生が、そして今晩ずっとお預けになっているテキーラを飲むわけだが、同時に四大スピリッツ最後のウォッカもマスターに教えてもらおうと思っていた。今の期待値のまま出来る限り早くコラムを上げたい。そして、連載を貰うのだ。唯にとっての大一番、それも後ろ盾も強い。心音の高鳴りが凄い。
ゆくゆくは女性に人気の日本酒などもと思っているが、タラレバの考えは今は捨てる。リナ先生に納品してもらっているリカー男子のイラストラフはラムとジン、あと二人。今日のテキーラを試しに行き、ウォッカも飲めれば本日で全員揃う。
とにかくテキパキと本日の業務を終わらせて18時に事務所を出る、直帰という形で“バー・バッカス”でお酒を飲ませてもらう。リナ先生と待ち合わせは19時。今回も早く開けてくれる事をマスターは快く受けてくれた。
先輩達は唯のはじめての企画成功に応援してくれる。このコラムが終わったら残業をしていない分、全力でヘルプに入ろうと思っていた。待ち合わせまでに軽く軽食を取ってお腹に食べ物を入れておく。お酒を飲むごとにチェイサーで口の中をすっくりさせてあげる事でお酒の味を毎回お酒の味を楽しめてかつお酒が回りがゆるやかになる。調べてばすぐに分かるような事でも全然知らなかった唯。マスターは気取るわけでもなく、聞かれた事に対して的確に教えてくれて、気遣いでアドバイスをしてくれる。
記事の内容を考えているとスマホが鳴る。リナ先生からだ。
「もしもし秋田です。もうバーですか? 行きます!」
19時前に店に到着したが既にマスターが店を開けていたので、入れてもらったという。タクシーを使い高架下のバーへ唯も向かうと店内にはマスター、リナ先生、端のテーブルで一人の男性がウィスキーらしい何かを飲んでいる。
「こんばんわ!」
「いらっしゃいませ唯さん、おかけください」
はーい! とリナ先生の隣に座る。マスターは唯が前回持ってきたテキーラ・クルエボ1800を開封すると、カクテルのロンググラスを二つ用意して氷を落とす。それにテキーラとオレンジジュースを入れて軽くステア。バースプーンでグレナデンシロップを落とすと……
「テキーラ・サンライズでございます。度数は10度〜14度程でしょうか?」
名前の通り日のでような美しいカクテルが二人の前に置かれる。唯とリナ先生は軽くグラスを合わせると「「乾杯」」ぐっと飲んでみると、甘くてテキーラの香りがすっと鼻を通る。
「美味しい! テキーラってサボテンのお酒なんですよね?」
「正確にはサボテンではないんですが、アガベという植物を使います。テキーラというのもこの植物の正式名称から取られているんですよ。アガベ・テキラナ・ウェベル・バリエダ・アスルです」
えっ? なんて? 唯はゆっくり教えてもらいメモをとる。このアガベが100%使われている物をプレミアムテキーラといい。唯が持ってきたクルエボ1800はまさにプレミアムテキーラだった。とても良いお酒を貰ったことになる。
「まず、度数の低い物から順番にという意味もあったんですが、テキーラは先程お話ししたアガベを使っているので人によっては少し苦手なクセがあります。一度ショットでテキーラを飲んで苦手だと思われた方にも最初はテキーラ・サンライズなら美味しく飲める事が多いですよ!」
オレンジジュースが朝焼け、グレナデンシロップが日の出を表しているらしく、ジントニックと並ぶバーでは鉄板のカクテルだとマスターは教えてくれる。
ロンググラス1杯のテキーラ・サンライズを楽しんだ二人の前に少しだけ意味深な表情を浮かべたマスターが、ジンジャエールを用意してこう言った。
「では、次はテキーラ・ショットガンをお楽しみいただこうと思います!」
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